第百五十五話「結婚まであと三ヶ月」
カーカラシカ帝国の訓練施設で、マリアが大型モニターの前に座っていた。自由主義連盟系列のニュース番組を見ている。
「アスカが幸せそう。ウケる」
画面には、豪華なドレスを着たアスカが映っていた。デストロイヤーに肩車されて、カメラに向かってピースサインをしている。
「いえーい!」
アスカがヤケクソな笑顔で叫ぶ。
「うわははははは! 俺の妻は最高だ!」
デストロイヤーが爆笑している。
テロップが流れる。『結婚式まであと3ヶ月』
「この番組、意外と好き」
マリアが呟いた。別の映像が流れる。デストロイヤーが子供たちと一緒にダンスしている場面だ。
「楽しいぞ! みんな一緒に踊ろう!」
軽快なステップで、様々な星の子供たちと踊るデストロイヤー。
次は健康食品のCMだった。
「これで俺も最強だ!」
巨大なプロテインを一気飲みしている。
インタビュー映像に切り替わった。
「結婚式はどのような予定ですか?」
「宇宙一豪華なケーキを作る!」
デストロイヤーが両手を広げた。
「そして花火だ! 花嫁のために星を一つ粉砕する!」
記者たちがざわめいた。
「星を?」
「そうだ! 無人の小惑星の核を破壊する! 星の崩壊はいつ見ても気持ちがいい! うわははははは!」
訓練室のドアが開き、竹彦が入ってきた。
「マリア、何見てるの?」
振り返ると、そこには188センチの巨漢が立っていた。11ヶ月前の小柄な姿はもうない。
「アスカの結婚準備」
「結婚……」
竹彦がテレビを見つめた。画面のアスカは笑顔だが、目が死んでいる。
「アスカさんには申し訳ないけど……」
竹彦が拳に力を込めた。
「必ずデストロイヤーを倒す!」
マリアが悪乗りした。
「アスカもきっと悲しむ。これは必要な犠牲」
ラムザが訓練室に入ってきた。
「メル、冗談がうまくなったな」
「え?」
竹彦が不思議そうな顔をした。
「冗談じゃないですよ。本気で助けます」
「いや、その……」
ラムザが苦笑した。この甥は、時々天然なのか本気なのか分からない。
ニーナも様子を見に来た。息子の真剣な顔を見て、小さくため息をついた。
(こんな感じで、この子結婚できるのかしら……)
母親としての別の心配が頭をよぎる。
テレビでは、デストロイヤーがさらに爆弾発言をしていた。
「アスカとの子供は100人は欲しい!」
「100人!?」
記者たちが驚く。
「そうだ! 強い戦士の軍団を作る!」
アスカの顔が青ざめているのが、カメラに映った。
サヤカが作業場から顔を出した。
「新型アーティカルアーム、あと3ヶ月で完成予定」
「3ヶ月……」
竹彦が深呼吸した。
「結婚式の日がタイムリミットか」
マリアが端末を操作した。
「統計的に、結婚式は最も警備が手薄になる」
「みんな酔っ払うからな」
ラムザが付け加えた。
竹彦は改めてテレビを見た。アスカがまたピースサインをしている。明らかにヤケクソだ。
「アスカさん、もう少しだけ待っていてください」
その頃、メジャイ評議会本部では、アスカが豪華な部屋で頭を抱えていた。
「100人て……冗談やんな?」
窓の外では、結婚式の準備が着々と進んでいる。巨大な会場が建設され、銀河中から祝賀の品が届いている。
「どうやって逃げよう……」
しかし、部屋の外には相変わらず屈強な警備兵。窓の外は超高層。
テレビをつけると、またデストロイヤーのCMが流れていた。
『家族が増えるって、素晴らしい!』
子供用品のCMだった。デストロイヤーが赤ちゃんのおもちゃを持って微笑んでいる。
「もう嫌や……」
アスカは枕に顔を埋めた。
カーカラシカでは、竹彦が激しい訓練を再開していた。188センチの体から、以前とは比べ物にならない力が溢れ出る。
「炎の法力も、かなり変化してきた」
竹彦の手に、赤い炎ではなく黒いゆらめきが宿る。不気味だが、圧倒的な破壊力を秘めている。
「色が変わった……」
ニーナが心配そうに見つめる。
「あと3ヶ月」
竹彦は決意を新たにした。
「今度こそ、必ず勝つ」
マリアが突然、妙なことを言い出した。
「当日、花嫁泥棒らしいいい感じの衣装にする」
「え?」
竹彦が困惑した。
「白いタキシードとか。マントも必要」
サヤカも悪乗りした。
「アーティカルアームの色も変えましょう! 黒と金でかっこいい意匠にしてみようかしら!」
「なんで急にそんな……」
「演出は大事」
マリアが真顔で言った。
「銀河中継される。格好良く決めないと」
サヤカも頷いた。
「花嫁を奪う悪役みたいでいいじゃない」
竹彦の顔が引きつった。
「悪役じゃなくて、助けに行くんですけど……」




