第百五十四話「自由の戦士の日常」
デストロイヤーがアスカを豪華な部屋に連れ戻した後、巨大な手で彼女の頭を撫でた。
「俺は仕事に行く。部屋から出るな」
「仕事?」
「会議とか、インタビューとか。面倒だが必要だ」
デストロイヤーが真剣な表情になった。
「俺を狙う奴は多い。お前も拐われたら大変だから、大人しくしていろ」
アスカが苦笑した。
(拐われてるのはうちやねんけど……)
「分かった、気をつけるわ」
デストロイヤーが部屋を出ると、廊下に屈強な戦士たちが配置された。どう見ても脱出は不可能だった。
「はあ……」
アスカはやけくそになって、テーブルの果物を手に取った。
「まあ、殺し屋時代よりマシか」
ベッドに寝転がり、リモコンでテレビをつける。
『自由の戦士デストロイヤー! 銀河に自由をもたらす男!』
壮大なテーマソングと共に、デストロイヤーのCMが流れていた。筋肉を誇示しながら、背景で爆発が起きている。
「なんやこれ……」
チャンネルを変えても、どこもデストロイヤー関連だった。
『速報:デストロイヤー、パニッシャーを撃退!』
画面にデストロイヤーのインタビューが映る。
「うわははははは! 俺は自由の戦士だ!」
記者たちに囲まれながら、上機嫌で答えている。
「自由を邪魔する奴は、俺が許さない!」
「パニッシャーについてどう思いますか?」
「雑魚だ! 逃げ回るウジ虫だ! うわははははは!」
アスカが眉をひそめた。
(竹彦、大丈夫かな……)
CMが続く。今度は、様々な星の子供たちを抱き上げるデストロイヤーの姿だった。
『デストロイヤーと一緒に、明るい未来を!』
タコ型の子供を肩車し、昆虫型の子供と握手し、満面の笑みを浮かべている。
「めっちゃええ人みたいやん……」
次は健康食品のCMだった。
『俺も毎日飲んでる! 超パワープロテイン!』
デストロイヤーが巨大なプロテインシェイカーを振っている。
「筋肉の秘密はこれだ! 君も強くなろう!」
ウインクまでしている。
「お茶目すぎるやろ……」
さらに保険のCMも流れた。
『自由貿易機構は、あなたの生活を応援しています』
デストロイヤーが優しい声で語りかける。
「家族を守るのは、男の務めだ」
アスカは複雑な表情でテレビを見続けた。
ニュースが再開された。
『自由主義連盟、さらに500星系が参加』
『貿易構想、順調に拡大中』
そして、衝撃的なニュースが流れた。
『祝! デストロイヤー様、ご婚約! 一年後に結婚式の予定』
画面にアスカの写真が映った。豪華なドレス姿の、作り笑いの写真。
「一年後!?」
アスカは慌ててテレビを消した。
「あかん、マジでヤバい……」
ベッドに倒れ込む。
しばらくすると、ドアがノックされた。
「誰?」
入ってきたのは、トロン星の鳥頭だった。
「ほう、パニッシャーの手下か」
鳥頭がアスカを見下ろした。
「猿が、よくもデストロイヤー様に取り入ったな」
「猿ちゃうわ!」
「何か企んでいるんだろう? パニッシャーの指示か?」
鳥頭が詰め寄る。
「正直に吐け。楽にしてやる」
「知らんがな!」
その時、ドアが勢いよく開いた。
「お前、何をしているんだあ?」
デストロイヤーが立っていた。その顔は怒りに満ちている。
「あ、いえ、これは……」
鳥頭が慌てて言い訳しようとしたが、デストロイヤーは鳥の首を掴んだ。
「俺の女に手を出すな」
窓を開け、そのまま鳥頭を外に放り投げた。
「ぎゃああああ!」
叫び声が遠ざかっていく。遥か下のビルに、赤いシミができた。
デストロイヤーは何事もなかったように振り返った。
「服を買ってきたぞ!」
ニコニコ顔に戻っている。
ドアから、いかつい見た目の宇宙人たちが入ってきた。全員、可愛いリボン付きのプレゼントボックスを持っている。
「デストロイヤー様が選んだ服です!」
「最高級品ばかりです!」
部屋がプレゼントで埋まっていく。
アスカはげっそりしながらも、愛想笑いを浮かべた。
「あ、ありがとう……」
「今すぐ着ろ!」
デストロイヤーが興奮気味に言った。
「え、今?」
「そうだ! 早く!」
アスカは仕方なく、箱の一つを開けた。派手なドレスが入っている。
着替えて出てくると、デストロイヤーが爆笑した。
「うわははははは! かわいいぞ! 最高だ!」
超上機嫌で手を叩いている。
「似合う! 完璧だ!」
アスカはげっそりした顔で愛想笑いを浮かべた。
(い、いかん、なんかかわいく見えてきた……ちょう疲れとるわウチ…)




