第百五十三話「後悔と決意」
カーカラシカの医療施設で、竹彦は治療ポッドから出たばかりだった。体中に包帯が巻かれ、顔には悔しさと後悔が滲んでいた。
「また……負けた」
竹彦が拳を握りしめた。
「しかも、アスカのせいで……」
ニーナが心配そうに息子の肩に手を置いた。
「アスカは自分の意志で囮になったのよ。あなたのせいじゃない」
「でも、僕が弱いから!」
竹彦の声が震えた。
「153センチの僕が、3メートルのデストロイヤーに勝てるわけなかった。分かってたのに……」
マリアが淡々と言った。
「その通り、だいたいあなたのめちゃくちゃな暴走のせい」
全員がマリアを見た。
「しかし怪我の功名もあった、デストロイヤーが子供ができて丸くなる可能性もある」
「マリア!」
ニーナが驚いた。
マリアは肩をすくめた。
「冗談」
そして、竹彦に向き直った。
「でも、二度とこんな衝動的な行動をしてはいけない」
マリアの声は厳しかった。
「今回は運良くアスカの機転で助かった。次はない」
竹彦は深く頭を下げた。
「すみません……でも、必ずアスカを助け出します」
彼の目に決意が宿った。
「時間をかけて、しっかり力を蓄えて。今度こそデストロイヤーを倒して、アスカを取り戻す」
ラムザが頷いた。
「その意気だ。焦らず、着実に強くなれ」
「はい」
竹彦は訓練室へ向かった。もう二度と、仲間を危険に晒さない。その決意を胸に。
一方、デストロイヤーの戦艦では、アスカが脱出計画を練っていた。
「よし、警備のパターンは大体つかんだ」
彼女は部屋のドアをそっと開けた。廊下には誰もいない。
「今や!」
足音を立てないように走る。曲がり角を曲がり、エレベーターへ向かう。
「脱出ポッドまであと少し……」
突然、巨大な影が立ちはだかった。
「アスカ、どこへ行く?」
デストロイヤーが腕を組んで立っていた。
「あ、えーっと……」
アスカが必死に言い訳を考えた。
「迷子になってしもうて……トイレ探してたんや」
「トイレは部屋にあるだろう」
「あ、そうやった! うち、方向音痴で……」
デストロイヤーが首を傾げた。
「そうか。迷子か」
あっさり信じた。
「船は広いからな。案内図を渡そう」
デストロイヤーはアスカを小脇に抱えた。まるで子猫を運ぶように。
「ちょ、ちょっと!」
「部屋まで送ってやる」
豪華な部屋に戻されたアスカは、ベッドに座らされた。
「よく寝ろ。明日は忙しくなる」
「忙しい?」
「ああ、メジャイ評議会本部に到着する。お前を皆に紹介しなければ」
アスカの顔が青ざめた。
(紹介って……マジで結婚する気なん?)
デストロイヤーは満足そうに部屋を出て行った。
「おやすみ、アスカ」
ドアが閉まる音。そして、ロックされる音。
「あかん……」
アスカは窓から外を見た。既に船は動き出している。
翌朝、船は巨大な宇宙港に到着した。メジャイ評議会本部のある星だった。
「ますます逃げにくくなった……」
アスカは頭を抱えた。
窓の外には、無数のメジャイ騎士たちが整列している。まるで花嫁を迎えるような光景だった。
「アスカ様、お支度を」
侍女たちが部屋に入ってきた。豪華なドレスを持っている。
「え?」
「デストロイヤー様の妻としてお披露目です」
「ちょ、ちょっと待って!」
しかし、侍女たちは有無を言わさずアスカを着替えさせ始めた。
メジャイ評議会本部では、アスカが豪華なドレスを着せられ、玉座の横に立たされていた。
「諸君、俺の妻を紹介する!」
デストロイヤーが誇らしげに宣言した。
「うわははははは! 最高の女だ!」
上機嫌な爆笑が会場に響き渡る。
騎士たちは困惑した視線を交わしていた。
(一体何があったんだ?)
(あのデストロイヤーが結婚?)
(しかも、あんなに嬉しそう……)
アスカは作り笑いを浮かべながら、心の中で叫んでいた。
(誰か助けて!)




