第百五十二話「予想外の作戦」
アスカは人生最大の賭けに出ていた。上着を肩から落とし、最高の笑顔を作る。
「ちょっと待ってえな、ハンサムさん♡」
デストロイヤーの巨大な手が止まった。
「なんだお前は?」
3メートルの巨体が振り返る。その顔には明らかな困惑があった。
飛空挺の中で、ラムザとマリアが唖然としていた。
「あいつ、頭がおかしくなったのか?」
ラムザが呟いた。
マリアが無表情のまま言った。
「遺言があれば最悪」
しかし、デストロイヤーの反応は予想外だった。巨大な体を屈め、アスカをじっくりと観察し始めた。顔、胸、腰回り。
「ほう……」
明らかに興味を示している。
「お前、俺の女になりに来たのか?」
「そ、そうや!」
アスカが必死に媚びた声を出した。
「あんたみたいな強い男、他におらへんもん」
「名前は?」
「アスカや」
「好きな食い物は?」
「た、たこ焼き!」
デストロイヤーが首を傾げた。
「たこ焼き? なんだそれは」
「地球の食べ物や。今度作ったるわ」
「ほう、料理もできるのか」
会話が続く中、竹彦が瓦礫の中で呻いていた。
「何が……起きて……」
ラムザが小声でマリアに囁いた。
「今のうちだ。竹彦を回収する」
二人は飛空挺から降り、こっそりと竹彦に近づいた。
その間も、アスカの必死の演技は続いていた。
「あんた、めっちゃ筋肉すごいなあ。触ってもええ?」
「ふはははは! いいぞ!」
デストロイヤーが腕を曲げて筋肉を見せつける。アスカが恐る恐る触った。
(固っ! 鋼鉄やんけ!)
「すごーい♡」
演技を続ける。
「いい女だ! アスカか!」
突然、デストロイヤーがアスカの腰をガシッと掴んだ。巨大な手が彼女の体をすっぽりと包む。
「ひゃっ!」
「気に入った! 俺の船に乗れ!」
デストロイヤーがニッコニコの笑顔になった。3メートルの巨体が満面の笑みを浮かべる姿は、ある意味恐怖だった。
「俺の妻にしてやる!」
「え、ええ!?」
アスカが本気で焦った。
(ちょっと待て、効きすぎやろ!)
その頃、ラムザとマリアは竹彦を飛空挺まで運んでいた。
「急げ、気づかれる前に」
「竹彦、しっかりして」
マリアが応急処置を始める。
デストロイヤーは完全にアスカに夢中だった。
「お前のような女を探していた! 強くて美しい!」
「あ、ありがとう……」
アスカが引きつった笑顔で答える。
アスカが慌てて尋ねた。
「あ、あの、恋人とかおらへんの? 大丈夫?」
「いない!」
デストロイヤーが胸を張った。
「お前が初めてだ! 光栄に思え!」
「えっ、マジで?」
アスカが驚いた。この化け物、意外と一途なのか。
飛空挺のエンジンが始動した。デストロイヤーが振り返る。
「ん? パニッシャーはどこだ?」
「さ、さあ? 逃げたんちゃう?」
アスカが必死に誤魔化す。
「ふん、臆病者め。まあいい」
デストロイヤーはアスカを抱えたまま、空を飛んだ。
「俺の船を見せてやる!」
巨大な戦艦が雲の上に待機していた。メジャイ評議会の最新鋭艦だった。
飛空挺の通信機から、アスカの声が聞こえてきた。
「おい! うちを助けに来てくれ!」
マリアが無表情で答えた。
「お幸せに」
そして通信を切った。
「ちょっ、マリア!?」
ラムザが慌てた。
「いいのか?」
「大丈夫。アスカは賢い。なんとかする」
竹彦が意識を取り戻した。
「アスカは……どこ……」
「デストロイヤーの妻になった」
マリアの説明に、竹彦が目を丸くした。
「はあ!?」
その頃、デストロイヤーの船内では、アスカが豪華な部屋に案内されていた。
「ここがお前の部屋だ」
意外にも丁寧に扱われている。
「好きなものを食べていい。服も用意させる」
「あ、ありがとう……」
デストロイヤーが部屋を出て行った後、アスカは通信機を取り出した。
「おい! 聞こえてるやろ!」
シーン。
「マリアああああ!」
しかし、返事はなかった。
アスカは頭を抱えた。
(どないすんねん、これ……)
窓の外では、ベルガモット星が小さくなっていく。
一方、飛空挺では、竹彦が悔しそうに拳を握っていた。
「また……負けた……」
「生きてるだけで十分」
マリアが冷静に言った。
「それに、アスカのおかげで時間を稼げた」
「でも、アスカが……」
「彼女のとっさの判断で助かったが…」
ラムザが苦笑した。
「ちょっと予想外だったが、効果はてきめんだった、多分すぐに殺されるというのはない…と思うんだが…」
デストロイヤーの船では、アスカが部屋でため息をついていた。
「妻て……まさか本気なんか」
彼女は窓から宇宙を眺めた。
(とりあえず、脱出方法を考えな……)
ドアがノックされた。
「アスカ様、お食事です」
豪華な料理が運ばれてくる。
「お、おおきに……」
(とりあえず、食べて体力つけよ)
アスカは現実的だった。
こうして、史上最も奇妙な作戦は、予想外の結果を生んだ。竹彦は助かったが、アスカはデストロイヤーの船に捕らわれた。




