第百五十話「破壊者の宣戦」
銀河連盟議会は、かつてないほどの混乱に陥っていた。中央のホログラムには、煙を上げる都市の映像が映し出されている。
「これが『解放』だと言うのか!」
ベルガモット星の議員が怒りで震えながら叫んだ。彼の故郷の首都は、今まさに破壊されつつあった。
「我が星の半分が瓦礫と化した! これのどこが正義だ!」
ケルケルゲが涼しい顔で答えた。
「ベルガモット星では、ゼフィール族が長年迫害されていたはずです。デストロイヤー様は、彼らの解放のために立ち上がったのです」
「ゼフィール族?」
議員が唖然とした。
「人口のわずか0.3%の少数民族のために、1億人の都市を破壊するのか!」
「数の問題ではありません」
トロン星の代表が羽を広げた。
「正義の問題です。少数派の権利も守られるべきでしょう」
議場が怒号に包まれた。
「ふざけるな!」
「これは虐殺だ!」
「テロリストを英雄扱いするな!」
一方、カーカラシカ帝国の訓練場では、竹彦が激しいトレーニングを続けていた。身長は153センチ。まだまだ小柄だった。
「もう一回!」
ラムザの号令で、竹彦は炎の法力を発動させる。赤い炎が拳を包むが、まだ制御が甘い。
「集中しろ、メル」
「はい!」
その時、マリアが血相を変えて飛び込んできた。
「大変。デストロイヤーがベルガモット星を攻撃中」
竹彦が振り返った。
「なんだって?」
訓練場の大型モニターに、破壊される都市の映像が映し出された。巨大な人影が、ビルを素手で倒壊させている。
「デストロイヤー……」
竹彦が息を呑んだ。画面の中で、デストロイヤーが叫んでいた。
「パニッシャー! 出て来い! 貴様が姿を見せなければ、この星を灰にする!」
爆発音と共に、また一つ街区が消滅した。
ニーナが慌てて駆けつけてきた。
「メル、ダメよ。今のあなたでは……」
「でも、罪のない人々が!」
竹彦が拳を握りしめた。
アスカも首を振った。
「あかん。これは罠や。お前を引きずり出すための」
「分かってる! でも……」
モニターには、逃げ惑う市民の姿が映っていた。子供たちが泣き叫び、親が必死に守ろうとしている。デストロイヤーが再び吼えた。
「臆病者め! お前のせいで、この星は滅ぶ!」
エネルギー弾が放たれ、病院が吹き飛んだ。
「もう見てられない!」
竹彦が駆け出した。
「待って!」
ニーナが息子を掴もうとするが、竹彦は振り切った。
「ごめんなさい、お母さん。でも、僕は行かなきゃいけない」
サヤカが叫んだ。
「アーティカルアームもまだ完成してないのに!」
「素手でもなんでもいい。時間を稼ぐだけでも……」
竹彦は格納庫へ走った。そこには、小型の飛空挺が待機している。ラムザが追いかけてきた。
「メル、無謀だぞ!」
「無謀でも行きます」
竹彦は操縦席に飛び乗った。
「あの時、エリドゥで父さんも同じ選択をしたはずです」
ラムザが言葉を失った。確かに、兄ガランならば迷わず向かっただろう。
マリアが冷静に告げた。
「ベルガモット星まで、最速で3時間」
「間に合うか……」
竹彦がエンジンを起動させた。
アスカが叫んだ。
「ちょっと待て! 一人で行く気か!」
「みんなを巻き込めない」
「アホか!」
アスカも飛空挺に飛び乗った。
「お前一人に行かせるわけないやろ」
マリアも続いた。
「統計的に、複数人の方が生存率が上がる」
サヤカも乗り込んできた。
「試作品だけど、小型アーティカルアーム持ってきた。ないよりマシでしょ」
竹彦は仲間たちを見回した。
「みんな……」
「お前ひとりにいかせるわけにはいかんからな!」
アスカが操縦桿を握った。
「時間がないんやろ」
ニーナが格納庫の入り口で、不安そうに見送っていた。
「必ず……必ず生きて帰ってきて」
「はい、お母さん」
竹彦は母親に向かって頷いた。飛空挺が轟音と共に発進する。
その頃、ベルガモット星では、デストロイヤーが新たな街区を破壊していた。
「まだ来ないか、パニッシャー」
彼の周りには、メジャイ騎士団が配置されていた。表向きは「民族解放軍」という名目だった。
「もう少しで釣れるはずです」
騎士の一人が報告した。
デストロイヤーが不気味に笑った。
「来い、パニッシャー。今度こそ、完全に潰してやる」
銀河議会では、緊急動議が提出されていた。
「デストロイヤーを止めろ!」
「自由主義連盟は責任を取れ!」
しかし、ケルケルゲは涼しい顔で反論した。
「彼は独自の判断で動いている。我々には止める権限がない」
「嘘をつくな!」
議会は完全に機能不全に陥っていた。かつての統一は失われ、銀河は真っ二つに割れようとしていた。
飛空挺の中で、竹彦は拳を握りしめていた。




