第百四十九話「成長計画」
カーカラシカ帝国の作戦会議室に、主要メンバーが集まっていた。中央のホログラムには、銀河の勢力図が表示されている。
「とりあえず、竹彦は隠す」
マリアが淡々と宣言した。
「成長するまで、トレーニングと食事に専念。公の場には出さない」
竹彦が不満そうな顔をした。
「僕は逃げ隠れするのは……」
「戦略」
マリアが即座に訂正した。
「デストロイヤーは確かに化け物。ヒューマンタイプなのにエネルギー弾を撃つ。宇宙空間を生身で移動する。理解不能」
ニーナが頷いた。
「でも、宇宙空間でできることには限界がある。さすがに惑星を素手で破壊はできないでしょう」
ラムザが補足した。
「それに、まだ自由主義連盟との全面戦争には至っていない。向こうも表立って制圧戦は仕掛けてこないはずだ」
アスカが腕を組んだ。
「デストロイヤーも、さすがに単身で宇宙には出てこんやろ。宇宙船に乗ってくるはずや」
「その通り」
マリアが確認した。
「宇宙空間の戦闘で牽制すれば、地上への侵入は防げる。地上に降りられたら終わりだけど」
サヤカが計算していた端末を見せた。
「政治的な駆け引きを考えると、全面戦争まで最低でも1年。うまくいけば2年の猶予がある」
竹彦が少し安堵の表情を見せた。
「その間に成長すれば……」
ニーナが優しく息子を見つめた。
「あなたの両親、つまり私とガランは、どちらも高身長で大柄。遺伝的には必ず大きくなるわ」
「父さんは200センチでしたっけ」
竹彦が見上げる。
「そうよ。私も180センチある。あなたが小さいのは、長年の栄養不足が原因」
マリアが医療データを表示した。
「健康な臓器になって1ヶ月で2.2センチ成長。この調子なら、1年で180センチも夢じゃない」
「180!」
竹彦の目が輝いた。
ラムザが真剣な表情で言った。
「では、具体的な計画を立てよう」
彼はホログラムを操作して、スケジュールを表示した。
「朝:高タンパク質の朝食と成長ホルモン促進運動」
「午前:格闘訓練と筋力トレーニング」
「昼:カーカラシカ伝統の成長促進料理」
「午後:法力制御訓練」
「夕方:柔軟性向上のストレッチ」
「夜:大量の夕食と早めの就寝」
竹彦が顔をしかめた。
「食べて寝るだけみたいな……」
「成長の基本」
マリアが断言した。
「特に睡眠は重要。22時から2時は成長ホルモンのゴールデンタイム」
アスカが笑った。
「ええやん、食っちゃ寝の生活。羨ましいわ」
「でも、訓練もきついですよ」
サヤカが付け加えた。
「筋肉をつけながら身長を伸ばすのは、結構大変」
ニーナが立ち上がった。
「料理は私が担当するわ。カーカラシカには、昔から背を伸ばす秘伝の料理がある」
「秘伝?」
「葡萄の葉で包んだ特殊な肉料理よ。成長期の子供に食べさせる伝統食」
ラムザも頷いた。
「私も子供の頃、それで一気に伸びた。効果は保証する」
竹彦が希望を持った表情になった。
「本当に180センチになれるかな」
「なれる」
ニーナが断言した。
「あなたは私たちの子供。必ず大きくなる」
その時、モニターに緊急ニュースが流れた。
『自由主義連盟、新たに500星系が参加。総数3,500に』
全員の表情が引き締まった。
「思ったより拡大が早い」
ラムザが眉をひそめた。
マリアが分析した。
「このペースだと、1年後には5,000星系。全面対決は避けられない」
「でも、今はまだ政治的な段階」
サヤカが指摘した。
「実際の軍事衝突まではまだ時間がある」
竹彦が決意を新たにした。
「分かりました。僕は成長に専念します」
彼は全員を見回した。
「でも、ただ隠れているだけじゃない。この期間で、必ず強くなります」
アスカが竹彦の頭を撫でた。
「その意気や! がんばりや」
マリアが最後に付け加えた。
「あと、重要な情報。デストロイヤーの弱点を調査中」
「弱点?」
「あらゆる生物には弱点がある。奴も例外じゃないはず」
サヤカが同意した。
「エネルギー活火山で大ダメージを受けたということは、超高熱には弱い可能性がある」
「竹彦の炎の法力が有効かもしれない」
ニーナが希望を持った声で言った。
竹彦は自分の手を見つめた。
「この炎を、もっと制御できるようになれば……」
「それも訓練メニューに入れる」
ラムザが決定した。
「法力の制御は、カーカラシカの専門分野だ」
会議が終わり、皆が立ち上がった。竹彦は最後に呟いた。
「1年後、必ず180センチになって、デストロイヤーと戦える力を身につける」
ニーナが息子の肩に手を置いた。
「焦らないで。成長は一歩ずつよ」
「はい、お母さん」
竹彦は母親を見上げて、小さく笑った。




