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第百十六話「銀河連盟到着」



「おい坊主!」


 技官の一人が親しげに竹彦を呼んだ。

 カラオケ大会での文化交流がすっかり緊張をほぐし、カーカラシカの技官たちも竹彦に打ち解けていた。まだ皇族だということは知らないので、日本で暮らしていたカーカラシカ人くらいに思っているのだろう。


「ハイパージャンプから抜けます」


 別の技官が計器を確認しながら告げた。


「アンドロメダ銀河に出ます。周囲の安全確認……よし」


 窓の外の虹色の空間が徐々に薄れていき、普通の宇宙空間が現れた。そして、目の前に巨大な惑星が浮かび上がった。


「うわあ……」


 竹彦が息を呑んだ。

 アスカが伸びをしながら言った。


「本部に行くの久しぶりやな」


「抜けたら、本部に連絡を取れば護送してくれる」


 京介が説明した。

 実質、何も起こらない安全な一週間の船旅だった。護衛の仕事としては、最も楽な部類だろう。

 早速、向こうから通信が入った。


『星系に到達おめでとうございます! 銀河連盟新規加盟の部門、モルモノアです! 護送を希望しますか?』


 明るい声が船内に響いた。

 マリアが頷き、ラムザが前に出た。


「こちらは地球代表のカーカラシカ国、ラムザ・ボム。護送と誘導をお願いする」


『では護送と誘導を開始します。重力は地球の0.734倍です。大気の厚さは……』


 詳細な情報が次々と伝えられていく。気温、湿度、大気組成、放射線レベル。

 技官が計器を確認しながら、奇妙な顔をした。


「着陸可能です。というか……防護スーツは必要なさそうですね」


「本部はヒューマンタイプの星」


 マリアが説明した。


「ヒューマンタイプは環境が似ている」


 徐々に星が近づいてくる。


「いよいよだ……」


 ラムザの声が震えていた。何世代にもわたって夢見てきた瞬間。カーカラシカが、いや地球が、ついに銀河連盟の仲間入りを果たす。

 技官たちも緊張した面持ちで操縦に集中していた。

 星に近づくにつれて、その壮大さが明らかになってきた。惑星は余すことなく開発されており、巨大な浮遊施設があちこちに見える。無数の飛空挺が整然と飛び交い、まるで光の川のような交通網を形成していた。


「すげえ……」


 キヨシが呆然と呟いた。


「これが銀河の中心か」


 技官たちも圧倒されていた。カーカラシカの技術など、まだまだ子供の遊びに見える。

 通信機から、少し遅れてカーカラシカ本部からのメッセージが届いた。映像は地球にも中継されているらしい。歴史的瞬間を、全地球が見守っているのだ。

 地上が近づくにつれて、異常なほど高い建物が見えてきた。雲を突き抜け、さらに上へと伸びている。その間を、光る筋のような交通網が縦横無尽に走っている。


「あそこです! 空港ですよ!」


 竹彦が興奮して指差した。巨大な施設が見える。地球の国際空港など、おもちゃのようだ。

 誘導機に従いながら、船はゆっくりと高度を下げていく。

 技官の一人が緊張で手を震わせながら、慎重に操縦桿を握った。人類史上最も重要な着陸の一つ。失敗は許されない。


「高度3000……2000……1000……」


 もう一人の技官がカウントダウンしていく。

 船体がホバリングを始めた。ゆっくりと、慎重に、指定された着陸パッドへと降りていく。

 ガシャン!

 軽い振動と共に、船が着陸した。


「着陸……」


 技官の声が震えていた。感動で涙ぐんでいる者もいる。


「やった……やったぞ!」


 技官たちが抱き合った。


「この船のクルーに選ばれて光栄です!」


 全員が敬礼した。

 マリアも感動して拍手した。珍しく、目が潤んでいる。


「これで地球も正式に連盟の加盟星になった!」


 アスカも興奮を隠せない。


「ついにやで! ウチらがここまで来たんや!」


 京介も深く息をついた。長い旅だった。地球がここに辿り着くまで、どれだけの犠牲があっただろうか。

 ラムザが立ち上がった。


「では第一歩は、ニーナ様に踏んでいただきましょう」


 ニーナは震えながら立ち上がった。女帝として、地球の代表として、歴史的な一歩を踏み出す責任。そして……

 彼女は竹彦を見た。息子と一緒にこの瞬間を迎えられたこと。それが何より嬉しかった。

 ハッチが徐々に開いていく。

 シューッという音と共に、外の空気が流れ込んでくる。不思議なことに、地球とほとんど変わらない空気だった。少し甘い香りがするくらいか。

 光が差し込んできた。

 銀河連盟本部の、新しい世界の光が。

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