第百七話 「確定した真実」
カーカラシカ皇居、会議室。
白い封筒が重々しくテーブルの中央に置かれていた。四大家の面々が、息を詰めてそれを見つめている。
「もしあの銀河の化け物が自分たちの身内だとすると……」
エンキドゥが額に手を当てた。
「政治的にも、これからの銀河連盟での立ち位置にも大きく関係する」
シャマシュが尋ねた。
「ニーナ様は?」
ラムザは苦い顔で答えた。
「部屋でまんじゅうになってる」
「なんだそれは」
「布団に丸まって、出てこない」
ナブ家の老当主が杖で床を叩いた。
「せめて最初に会った時、ラムザ、お前があんなに顔をめった打ちにしなければ、気が付いたんだ」
ラムザの顔が更に渋くなった。
「今更言われても……」
「おい、いいから開けてくれ」
エンキドゥが催促した。
「よし」
ラムザは深呼吸をして、ハサミで封を切った。震える手で、ゆっくりと書類を取り出す。
まず最初に見えたのは、各家との適合率の表。
「どうもボム家とベオルブ家に近いな」
シャマシュが覗き込んだ。
「やはりな……」
次のページは健康診断の結果。皆の顔が青ざめた。
「これは……ひどい」
臓器機能の数値が軒並み異常を示している。片肺欠損、肝機能低下、腎機能障害。まともに働いている臓器の方が少ない。
「健康に大いに差し支えがある、どころじゃないぞこれ」
エンキドゥが呻いた。
「よく生きてるな……」
ラムザは大きく息を吐いて、最後のページを引き出した。
親子鑑定。
ニーナ・ボムとの関係性。ガラン・ボムとの関係性。
その数値を見た瞬間、全員が凍りついた。
99.9999%
遠慮のない、圧倒的な数値がそこにあった。
「あー……」
全員が同時に声を漏らした。
「まあ、分かってはいたけどね」
シャマシュが頭を抱えた。
「どうしよう。あの時メル君の胸に剣突き立てちゃったんだけど」
彼女は自分の手をプルプルと振って、感触を忘れようとしている。
「ニーナ様に言いに行くか……」
ラムザが重い口を開いた。
「本当なら超めでたいはずなのに、なんでこんな感じなんだよ……」
ナブ家の老当主が深いため息をついた。
「ガランさんが生きてて、このことを知ったら、俺たちぶっ殺されるだろうな」
「間違いない」
エンキドゥが頷いた。ガランの激昂する姿を想像して、全員が身震いした。
「メル君は今どこに行ってる?」
「街の不良とゲーセンで遊んでるらしい……」
ラムザが力なく答えた。
「呼んでくるか……」
「ああ、ちょっと迎えに行くか……」
全員が重い足取りで立ち上がった。まるで処刑場に向かうような雰囲気だった。
若手の皇族たちも困惑していた。
ティアマトが指折り数えた。
「じゃあ、あの子、私より年上? 実際は18歳ってことか……」
「じゃあメルお兄様って呼ぶのか」
別の若い皇族が言った。
「私は年上だからメル君でいいわよね……」
ドゥムジが苦笑いした。
アンドラは青い顔をしていた。
「どうしよう……私、思いっきり錫杖で頭叩いたんだけど……」
彼女は震える声で続けた。
「鼻も肋骨も折っちゃったし……」
ドゥムジが思い出したように言った。
「そういえばお前、メル君に『追いかけて殺してやる』とかも言われてたな……」
「許してはもらったけど……」
アンドラは自分のスカートをギュッと握りしめた。
「誰かついてきてくれない?」
「えぇー……」
全員が顔を見合わせて嫌がった。SS級指名手配犯で、しかも自分たちが酷い目に遭わせた相手。今更「実は親戚でした」なんて、どの面下げて言えばいいのか。
ラムザが封筒を握りしめた。
「とにかく、行くしかない」
一行は重い足取りで部屋を出た。廊下を歩きながら、それぞれが過去の行いを思い返していた。
骨を折った。剣で刺した。顔を殴った。一週間拷問した。
「最悪だ……」
誰かが呟いた。
同じ頃、ゲームセンター。
「よっしゃー! 新記録!」
竹彦は友達たちとハイタッチをしていた。
「ガラド最強!」
「飯でも食いに行くか?」
「いいね!」
竹彦は満面の笑みを浮かべていた。まさか自分を迎えに、血の繋がった親戚たちが震えながら向かっているとは、夢にも思わなかった。




