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ロストタウンの囁き-10

「……カリム」


「どうした、ジャミル……身体は大丈夫なのか……お前はオーバーブロットを引き起こして……」


「カリム……一つ聞いてくれ。質問があるんだ」


「……。なんだ?」


「……お前はどうして、俺のいる学園に……ナイトレイブンカレッジに来たんだ」


「…………」


「お前なんかいなければいいのに。お前なんか存在しなければいいのに。お前の所為で俺の人生は滅茶苦茶だ。俺が光なわけ、あるか。俺はこれまで何度お前に対して――」


「暗殺、だろ」


「――――知って、いたのか」


「ああ、知っていた。俺も親父もおふくろも……薄々感付いていた。だから、ナイトレイブンカレッジに編入する前、ジャミルの一族を洗った。反乱分子と云うのかな。そういった奴らは遠方に飛ばして……」


「…………」


「まあ、きな臭いのを片付けたわけだ。だから俺は、これからは正々堂々とジャミルと友達になれると思った。思ったんだよ、思っていたんだよ……」


「カリム……残念だが、俺たちの一族の老人たちを遠くに飛ばしたところで、暗殺の命令が撤回されていない以上……俺はお前を狙う。殺す。殺める。ずっと執拗に狙い続ける。今まで不発に終わったからといって、御粗末な結果に終わり続けると思うな。俺はもう子供じゃなくなる。大人になるんだ。今までは児戯で終わっていたかもしれないが、本格的にお前を殺めようと俺たちの一族が本気で動くかもしれない」


「でも、ジャミルは抗うんだろう? 抵抗するんだろう? お前、綺麗好きだから。虫とか汚れは嫌いだから……束縛も嫌いで、自由になりたい。汚れたくないんだろう?」


「……だからって、大丈夫だと思うな。今でも綱渡りをするような状態だったんだ。これからは分からない。これからも変わらないだなんて無根拠を抱くな。他人を信じるのがお前の美徳なんだろうけど、俺はいつかお前を欺くぞ。その信用を崩すぞ。致命的な死を――死んでしまうんだぞ」


「……うん、わかっている。わかっては、いるんだけど……」


「カリム、本当に分かっているのか」


「俺にとってジャミルは光だから」


「…………」


「俺は要は、金のなる木だ。油田そのものと云っていい。俺に近寄る多くの奴らは、湯水のごとく湧き出るユニーク魔法だけが目当てで、本当は俺のことなんかどうでもいい。単なる道具。誰も俺のことを見てくれなかった。だけど、皮肉かな。たとえ俺を殺しにこようとも、ジャミルだけは俺と云う存在を見てくれていたように思うよ。暗殺を失敗に終わらせようとも、その恨みがましい目は、正確に俺のことを判断していたんだ。恨みながらも、直視しているんだよ」


「……俺は冷静に色眼鏡を……いや、ちょっと待て。『暗殺を失敗に終わらせようとも』……?」


「いや、ジャミル。俺は暗殺に気付いていたんだから。そう易々と死ぬわけにはいかないし、友達を犯罪者にしたくない。失敗に終わらせるのは、当然のことだろう?」


「……お前、どうしてそこまでして……」


「だから、俺にとってお前は光だったんだ。光、だったんだよ」


「……カリム……」


「ああ、わかってるよ。もう分かってる。ジャミルの考えていること、俺には分かるよ。同じ意見だ。俺は絶対にこんなこと認めたくないけど、お互いの為を思うなら……お互いが相手を尊重するなら、こうなることは致し方のないことなんだ。ジャミル、お前に下された命令は一生涯覆らない。撤回されない。暗殺の命令は死ぬまで続く。それなら――」


「ああ、それなら――」



『離れよう』



『俺たちは、戦後のイザコザに巻き込まれた被害者だ』


『どちらかが死ぬまで、この状況は変わらない』


『だったらせめて、この関係は学園生活まで』


『卒業するまで友達を続けるが』


『卒業後は、お互いを尊重して――』



『――離れよう』

 

 

……やっと、本当の友達になれた気がする。


……短い間だけど、よろしくな。


二人はどこか憑き物が落ちたように、少し笑った。


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