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救国の獅子‐10

「…………ん」


レオナは久しぶりに悪夢に魘され飛び起きることなく、ごく自然に目を開いた。周囲にいるのは学園長に、グリムを抱えた監督生の姿だった。


場所はこの学園の保健室。レオナはマジカルシフト会場で暴走してその後、気絶させられ、消毒液臭いこの室内に運ばれたのである。


「キングスカラーくん、これまでの事件は話に聞いています。オーバーブロット及び連続傷害事件の犯人……間違いありませんね?」


「……ああ」自嘲気味の笑いが出た。「そうだ。俺たちが犯人だよ」


学園長の溜息。


「そうですか。では……サバナクロー寮のマジカルシフトの参加権は剥奪、失格するものとします。その後の処置についても、被害者の皆さまと話し合い決定。そして、キングスカラーくん……ローズハートくん同様、退学『には』なりませんから、そこは安心してください」


私、優しいので。


学園長はいつもの自己陶酔に溢れた言葉を出すと、保健室のドアをコンコンとノックする音がする。「失礼します」の声と共に現れたのは、連続傷害事件の被害者であった。彼らを代表するようにトレイとジャミルがその先頭に立っていた。


「学園長、ちょっと待って下さい。サバナクロー寮ですが、マジフト大会に出場させてください」


「……どういうことですか? まさか許すのですか?」


「いいえ」ジャミルのキッパリとした否定。「許しはしませんよ。だからこそ、大会に出場してもらいたいんです」


「マジカルシフトは魔法込みのスポーツ大会」


トレイはニヤリと笑った。


「俺たち被害者がサバナクローに仕返しできるチャンスなんです。誰からもお咎めなく正々堂々と魔法を使える。この機会を棒に振るだなんて……一発犯人を殴らないと、気が収まらないんです」


「ふ、ふふ……あはははははは! 知ってたけどお前ら、本当容赦ねえな」


レオナは笑う。その笑い声は久々に国の憂いのない、純粋な笑みであった。悩みのすべてが吹き飛んだわけではないのだが、なぜだが罰を受けることに対して気分は晴れやかだった。重傷こそ負わせていないものの、無関係な一般人を国の事情だからといって怪我を負わせるのは無意識ながら罪悪感として気分を圧迫していたものだったらしい。


後腐れがない。


レオナが大声で大笑いするなら、自分はもう大丈夫だろうと判断してグリムを抱えたまま、廊下に出る。やがて人気のないところに差し掛かったところで、グリムがいつの間に拾ったのか……レオナがオーバーブロットした現場で拾った黒い石をモグモグと食べ始める。


「ん~、どことなく香るスパイシーな香り! 奥深く濃厚でありながらもサッパリとした味わい! 俺様感激なんだゾ~!」


「またグリム、拾い食いなんかして……」


自分は呆れながら、溜息を出す。子供の獣人が「おじた~ん」と真横を通り過ぎるのを後目に、グリムに対して呆れるのであった。


「そんなことを云っても、子分……美味しいから仕方がないんだゾ」


「それって本当に美味しいのかな……動物の味覚はわかんないや。それにしてもグリム、今日は大活躍だったね」


自分はグリムが魔力の残滓を匂いで追える特技を思い出しながら、云う。恐らくだが、グリムのあの嗅覚がなければ、ラギーを追い詰め真犯人に到達するのはかなり遅れていた……いや、最悪犯人が見付からないまま試合当日を迎えていたかもしれなかった。


「学園長から渡された約束の品……自分とグリム、そしてエースとデュースの最前列の試合チケットがある。明日はマジフト試合の本大会だよ、グリム……デュースから借りたスマホは、明日合流して返せばいいか」


「エースから聞いた話によると、ディアソムニア寮? ってところが不参加らしいゾ。六寮で試合をするんだとよ。なんか無条件で本命の他校との試合で活躍するらしい」


グリムはそう云いながら、拾い食いである黒い石を早々に食べ終えていた。


「ふうん、どんな寮なのか気になるな。でも、それにしても明日の試合、楽しみだよね」


自分はそう云いながら、オンボロ寮に戻って夜を迎えた。


翌朝、オンボロ寮の修繕したての玄関口にエースとデュースの二人が揃って出迎えてくれた。自分は信用して貸してくれたスマホをデュースに返しながら、出店が立ち並ぶ大通りを歩いていく。食欲を刺激される匂いに空腹を覚え買い食いをしながら向かうのは、ディアソムニアを除いた六寮試合が行われるマジフト会場のコロシアム。


自分たちは会場に足を踏み入れた。


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