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赤き弔花‐2

空き教室で居残り授業を終えた自分は、食堂で食事を済ませた後、オンボロ寮に戻っていた。倒壊しかけのお化け屋敷に戻ると、この建物の中で比較的綺麗にしてある談話室内でグリムが先に帰って眠っていた。居残り授業中、どこで何をしていたのか分からないがボヤ騒ぎのような問題は起こしていないことが、その寝顔で分かる。ただ……幸せそうな寝顔に、上下する満腹の腹、開封済みの缶詰……部屋の中央を見ると財布の中身は軽くなっており、学園長から貰ったある程度のお金は泥棒猫によって勝手に使われたことを知る。


「一緒に夕食を食べるんだった……」


これからこのお化け屋敷で過ごす上で、室内の改善は必須だ。リフォームの為に金はかなりの入り用なのだが、火急ではないとは云えども勝手に資金を浪費されるのは、それなりの痛手であった。


「グリム……グリム、起きて」


これは、説教が必要だ。同居人としての苦言ではなく、管理者としての教えが必要されている。


自分はソファの上で横たわる犯人の身体をゆするとムニャムニャと微睡む声を出す。普通の飼い猫なら眠っている時に邪魔をすることは重罪にあたるだろうが、彼は魔獣である。猫の姿をした獣であるのだ。しかも人語を喋れるのだから、お猫様のように丁重に接する必要はない。しかも本人は猫であることを自ら否定しているのだ。人のように扱っても問題はないだろう。


自分は何とかグリムを揺さぶり起こすと、青い目が半開きになる。顔の造形はかなり猫に近いので絆されそうになりながらも、軽く頬をつねって完全に意識を覚醒させた。


「グリム、どうして満腹になって寝ているの?」


「あ……オメーかよ……俺様は寝ていたゾ……どうしてって……ちゃんとお金を使って購買で……」


「うん、それは分かる。知りたいのはそこじゃなくて、どうして相談もなく勝手にお金を使ったのってことなんだけど……」


「そんなの……腹が減ったからに決まってるんだゾ。別にツナ缶を盗んだワケじゃないから、良くねーか?」


「お金を勝手に使うことは、盗むってことに該当しないかな?」


「それは……って、お前何だか怖いんだゾ。目がマジなんだゾ!」


「いい、グリム? そういう勝手が許されるのはね、本物の猫だけなんだよ。食肉目ネコ科ネコ属リビヤヤマネコ、通称イエネコ。グリム、君には猫が持つ青い目はあれども、その両目には第二の瞼はないし、目尻にはクレオパトララインもない。可愛いで構築された猫=神の姿を真似てはいるけど、そのものじゃないんだ。猫は弁えている。猫はね、どんな悪戯をするにしても決してライン越えはしない。水の入った割れるコップをテーブルから落とすことは絶対にしない。神のやる悪戯は、水の入っていない割れないコップを机の上から落とすことなんだ」


「おめえガチで怖いんだゾ!」


「隣室の掃除中の昨晩と今日の朝、リフォームにお金が掛かるって散々ぼやいていたのを聞いていたと思うんだけど、どうしてお金を使ったの? いや、使うことはいいんだよ。グリムがお金を浪費するのはどうせツナ缶だし。自分が聞きたいのは、なぜ……どうして断わりもなくこういうことをしたのか、ただそれ一点……」


「分かったから! 俺様が悪かったから! つ……次、お金を使う時は――って、誰か来たんだぞ! 玄関! ノックの音!!」


「…………」


その音は詰問の途中から聞こえてはいた。だがしかし、自分にとって最優先すべきはグリムへの説教であって、夜半の来客は無視して構わないと判断して意図的に無視していたのだが、どうやら扉をノックする音をいつまでも放置するわけにはいかないようである。


グリムの現実的な話題そらしの乗ることに半ば抵抗感を覚えながら、玄関に向かい古びた木製の扉を開けると、そこにいたのは見覚えのある枷を付けたエースである。


そして劈頭一番、


「もう絶対ハーツラビュルに戻らねえ! 俺、ここの寮生になる!」



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