第12話 閃光弾、いける
エレベーターの扉が閉まり、ヴァレリウスのあの毒蛇のような視線を遮断した。この閉ざされた箱の中で聞こえるのは、ケーブルが巻き上げられる低い唸りと、未だ鎮まらない二人の鼓動だけだった。
二階……三階……。数字が上がるにつれ、時限爆弾のカウントダウンがゼロに向かうようだ。
「毒蛇は通してくれたけど、上ではきっと熱烈な歓迎が待っているわ」リティヤは深呼吸し、カエソルの腕を軽く解き、指先でドレスの皺を伸ばして背筋を正した。
「毒蛇? じゃあ俺たちは自ら網にかかりに行くのか?」カエソルは扉の隙間を凝視し、無意識に腰の『千変』を撫でた。掌の冷や汗で金属の円筒が滑る。
「五階で降りて、階段で行くか?」
「だめ。こそこそ階段で行けば、かえって侵入者として誤射する口実を与えることになるわ。私たちは堂々と歩いて出なければならないの。両軍の交戦後の撤退協定のように、このエレベーターは合意された平和の通路よ。だからこれに乗って上がり、団員全員に知らせ、またロビーに戻って無事な姿を見せる必要がある。この通路を踏み固めなければならないの。戦場における既成事実にするために」
「分かった」カエソルは苦笑した。「撤退時に銃口を後ろに向け、敵の目をじっと見ながら下がるようなものか。先に瞬きした方が負けだ」
七階。
「あなたの懐中電灯、まだ使える?」リティヤは彼の腰の千変をちらりと見た。
「懐中電灯で奴らを照らし殺せと?」
「いいえ、懐中電灯よりもっと明るいものが必要なの。そう……閃光弾のような」リティヤは早口で言った。「扉が開いた瞬間、外に誰がいようと、機先を制して動きを封じるの。あなたが強烈な光で彼らの目を眩ませて、混乱に陥れる。その数秒が、私たちが主導権を握るチャンスになるわ」
「閃光弾が必要なの。いける?」
「エリー嬢、無茶を言う……だが、やってみよう」カエソルは苦笑した。
カエソルは千変を強く握りしめた。掌は冷や汗でびっしょりだ。閃光弾……瞬時に炸裂する光。こいつにスイッチはない。すべては想像力次第だ。朝は傘、さっきは懐中電灯、今度は閃光弾に変えろだと?
彼は目を閉じ、脳裏で強烈な白い光が炸裂する映像を描いた。それは東部戦線の攻堅戦で見た光景――網膜を焼き尽くし、世界を一瞬で惨めな白一色に変えてしまうほどの、恐ろしい高熱。あの滑稽な琉璃の傘の残像を、必死に振り払う。
頼む、今回ばかりは恥をかかせないでくれ。今回だけでいい! 炸裂しろ! 頼む!
九階。
「準備!」リティヤが低く叫び、体を僅かに前傾させた。
チン――。
エレベーターの扉がゆっくりと左右に開き、隙間が広がっていく――。
金属同士が擦れ合う微かな音が、すでに漏れ聞こえていた。
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