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皮肉、ギャグ婚約破棄シリーズ

悪役令嬢に転生したけど拳で解決することにした

作者: 一ノ瀬和葉

気がついたとき、私は絢爛豪華なベッドの上にいた。

周囲は大理石の柱に、天井からはシャンデリア。どう見ても現代日本じゃない。


(……あ、これ乙女ゲームの世界じゃん!)


そう理解したのは、私の視界に映ったドレッサーに飾られていた肖像画を見た瞬間だ。

金髪縦ロールに青いドレス、口元には冷たい笑み。見覚えがある。


「……悪役令嬢、クラウディア・フォン・ローゼンベルク」


そう、私は転生してしまったらしい。しかもよりにもよって──ヒロインを虐げ、最後は断罪される悪役令嬢に。


「えぇ……マジかよ」


普通なら、ここから「破滅フラグを回避しよう!」ってなるのだろう。

だが私は考えた。


(いや、でも私……現世で格闘技やってたしな)


大学時代、女子ながら総合格闘技ジムに通い、試合にまで出ていた筋肉脳。

就活で全部落ちて、「世の中コネと学歴なんだな」と悟った結果、試合ばっかり出て鍛えていた私。


つまり。


(悪役令嬢でも、拳があれば生き残れるんじゃね?)


そう結論した。



最初の破滅フラグは「ヒロインいじめ」。

舞踏会で、主人公である庶民出身令嬢マリアを侮辱するシーンだ。


ゲームではクラウディアが「下賤の娘が」と言い放ち、攻略対象の王子に睨まれ、信頼を失っていく流れになる。


だが私は違う。


「……ほう、貴様がマリアだな」


緊張で震えるヒロインに近づく。

周囲は「また悪役令嬢の嫌がらせが始まる」とざわつく。


「わざわざ庶民から舞踏会に来る根性……気に入った!」


そして私は──マリアの肩をバシン!と叩いた。

彼女は小鹿のように震えたが、その目に涙はなかった。


「ちょ、ちょっとクラウディア様!? マリアに何を……」

「何って、褒めているんだ。これくらい耐えられずして、どうして王侯貴族の妻となれようか!」


そう言って、私はヒロインの手をぐいっと持ち上げた。

小柄で細いその手は、握れば折れそうだ。


「ふむ……筋力が足りんな。明日から鍛錬だ」


「えぇぇぇぇ!?!?」


ヒロインは素っ頓狂な声を上げたが、王子や周囲の目には「クラウディアが意外にもヒロインを認めた」と映ったらしい。

結果──破滅フラグ回避。



次のイベントは「婚約破棄」だ。

クラウディアは王太子殿下から「君のような残酷な令嬢とは結婚できない!」と断罪される。

だが私はその日を待っていた。


(よし、きたな)


大広間にて、王太子が宣言する。

「クラウディア、君の婚約を破棄する!」


ざわめく群衆。

普通ならここでクラウディアは泣き叫び、悪役としての地位を確定する。


だが私は──


「──受けて立つ!」


「……え?」


王太子が呆気にとられる中、私は裾をたくし上げ、堂々と拳を構えた。


「婚約破棄を言い渡すのは結構。だがその前にッ! 己の拳で私を打ち倒してみせよ!」


「な、なにを言っている!?」


「口先だけの王子に嫁ぐほど、私は落ちぶれてはおらぬ!」


観衆「おおおおおっ……!!!」


結果──

王太子は殴られて床に沈み、逆に私の株は爆上がりした。

「力こそ正義だ!」「さすがローゼンベルク嬢!」とまで言われる始末。



王太子を殴った翌日。

私は「反逆者」として王都を追放された。


普通の悪役令嬢ならここで破滅の道を歩む。

だが私は違う。


(都合がいい……! 辺境なら思う存分トレーニングできるじゃん!)


こうして辺境の砦に赴いた私は、筋トレメニューを作り、騎士団を巻き込んで鍛え上げた。

最初は「令嬢にできるわけない」と笑っていた騎士たちも、腕立て千回を笑顔でこなす私を見て黙り込んだ。


数か月後、砦の兵士たちは精鋭部隊へと変貌していた。

彼らの合言葉は「拳こそ力」「クラウディア様についていけば勝てる」だった。



ある日、辺境を巨大魔獣が襲った。

体長二十メートルのドラゴン。

普通なら国を挙げて対処する脅威。


「クラウディア様! 城下が焼かれてしまう!」

「……下がっていろ」


私はマントを脱ぎ、拳を握った。


「相手がドラゴンだろうが、やることは一つ」


拳を振り抜く。

空気が爆ぜ、轟音が響いた。

次の瞬間──ドラゴンは私の右ストレート一発で吹き飛んだ。


「ひ、ひとパン……!?」

「な、なんという拳……!」


以降、辺境の人々は私を「拳の聖女」と呼ぶようになった。



だが世界は終末へ向かっていた。

魔王が復活し、全土を侵略し始めたのだ。

本来ならヒロインと攻略対象たちが絆を深め、ラスボスを討つシナリオ。


だが今回は違う。

王子は私にワンパンされて引退、攻略対象たちは鍛錬に巻き込まれ筋肉バカに成長していた。


結果──魔王の前に立ったのは、私一人。


「……面白い。人間ごときが、余に挑むか」

「悪役令嬢だろうが何だろうが関係ない。拳こそが真実!」


魔王の魔力が大地を裂き、空を覆う。

私は拳を振るう。

轟音と衝撃波が世界を揺るがす。


殴り合いは三日三晩続いた。

互いに何度倒れても立ち上がり、拳を交わす。


やがて魔王は笑った。


「……見事だ。これほどまでに拳で語れる者は初めてだ」

「ならば分かるな」

「ああ……お前の勝ちだ、人間」


こうして魔王は拳で説得され、和平を結ぶこととなった。



世界は救われた。

悪役令嬢クラウディアは「拳で魔王を屈服させた女」として語り継がれた。


王国からは名誉を与えられたが、私は興味がなかった。

その日も砦で、仲間たちと汗を流し筋トレを続ける。


「クラウディア様! 今日のメニューは何ですか!」

「腕立て二千回だ!」

「おおおおおっ!!!」


ヒロインだったはずのマリアも混じって叫んでいた。

彼女は今や立派な筋肉令嬢に成長している。


こうして私は悪役令嬢として転生したものの──

拳ひとつで運命もシナリオもぶち壊し、世界すら救ってしまったのだった。


──後世の歴史書には、こう記されている。


「悪役令嬢クラウディア・フォン・ローゼンベルク。

その拳は魔王をも屈服させ、世界に平和をもたらした。

以後千年に渡り、彼女は『拳の女神』として信仰された」


ここまで読んでいただきありがとうございました。


世界を救っただの、歴史に名が刻まれただの──周りは勝手に盛り上がっているけれど。


私に言わせれば結論はひとつだ。


「やっぱり拳で殴るのが一番手っ取り早い」              


良ければブックマーク、評価ポイントなどなどよろしくお願いいたします。応援の一つ一つが物語を執筆する励みになります。


すべての読者に心から感謝を込めて


一ノ瀬和葉

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― 新着の感想 ―
ワンパンマ……じゃなくてワンパンレディな主人公。 きっと見た目は世紀末覇者そのものなんじゃないかと思われ……(以下略) ところで、異世界恋愛タグがありますが、恋愛は何処へ? 面白かったです。
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