令嬢は叫ぶ「真冬のプールに突き落とされたのですわ!」
「お助けください、ウルツ殿下! ユゼファ様に殺されそうになりました!」
学園の講堂にずぶ濡れで現れた少女は、開口一番そう叫んだ。
何事かと耳目が集まる。
希少な聖女の力を発現させ、男爵家の養女となったベルタ。話題の彼女を、王立学園で知らぬ者はいない。
そんなベルタを、公爵令嬢ユゼファが虐めている噂もまた、有名だった。
平民出であるベルタが礼法に疎いため、潔癖なユゼファが拒絶。
ベルタに対して、過度な嫌がらせを繰り返しているらしい。
故に生徒会長である王子ウルツが、ベルタの保護に回っているという話だ。
「何があった?」
「プールに呼び出され、突き落とされました!」
どよめきが走る。
現在は真冬。それが事実なら命に係わる凶行だ。
泣きながらベルタが訴えると、ウルツが振り返り、尋ねた。
「プールは立ち入り禁止になっているはずだが。そうだな? ユゼファ」
「はい。厳重に管理しており、門の鍵は私が」
ユゼファが王子に応える。
「なら、それこそがユゼファ様の犯行の証ではないですか!」
ベルタが噛みつくように言った。返すユゼファは冷静そのもの。
「私はずっと講堂にいたし、貴女がプールに落ちたのなら、まだ生きているのはおかしいわ」
「凍えながら這い出て来たのです。いくら公爵令嬢だからって、聖女の命を狙うなんて許されません! 殿下、直ちにユゼファ様を罰してください! 投獄して、追放して。もしくは処刑を!」
過激な要求に周りが息を飲む。
殺されかけたとはいえ、上位者に対し、男爵令嬢が口にして良い内容ではない。
なるほど、こういう部分が嫌悪されているのか。
生徒たちが頷く中、王子の声は冷たかった。
「虚偽の発言で投獄されるのは君のようだ、ベルタ嬢」
「殿下、どうしてユゼファ様の肩を持たれるの?!」
「今季、冬のプールではスライムを飼育している」
「……へ?」
「万一落ちればたちどころに取り込まれ、圧死だ」
「は?」
「だからプール全面を蓋で封じている。落ちようがないし、落ちれば生きてない」
「なんっで、学園のプールでそんな飼育を──」
「魔生物部のユゼファの希望でね。研究用に許可した。君は以前からユゼファにありもしない罪を着せようとしていたけど、今回は決定的だ。証人も多い。聖女といえど処罰する」
「ヒッ」
王子が囁く。
「水まで被った演技だったが、プール、本当に落ちて良かったんだぞ? 公爵令嬢の人気を妬んで噂を流し、俺の恋人を不当に貶めやがって」
ベルタの敗北だった。
ベルタの作戦が…お粗末すぎるっ(ノД`)・゜・。のですが、1000文字の限界っ。
聖女という強・肩書に守られたベルタを、動かぬ証拠で嵌め返す戦いが書きたかったのに~。
これで残る"なろうラジオ"のお題は「観覧車」と「お弁当」になりました。コンプリートなるか?(笑) でももう冬休みでタイムアップという気も!
プールでは竜が飼いたかったです…。
最初は「冬のプールでペットを飼育しちゃいけませんっ!」というタイトルだったのに、なぜか令嬢モノになった不思議。読んでいただけると嬉しいです。
なろラジ9作目、よろしくお願いします!\(*^▽^*)/