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タルフィーネの庭  作者: 東雨和花奈
1/1

とある日記




「まずい!沈む!」

【打ち付ける雨粒が、船の中を満たして行く。海上の旅のお供には、常に死の予感がついている。我らにとって、嵐など慣れきったものだ。だが、もうここで終わりかもしれない。



豪雨の中での光は、触れると死んでしまう。






海をさ迷った末、半分の人数になってたどり着いた巨大な島。




甘やかな香りを放つ果実に、咲き誇る美しい花々。


太陽を受ける清らかな湖には、オーロラの鱗が煌めいている。空には鳥が羽ばたいて、その歌声は私たちを包み込むようであった。


私達はただ立ち尽くした。その時は、ここは楽園で、もう既に死んでいるのだと、本気でそう思っていた。


私達はこの島を、神タルフィーネの庭「タルデ」と呼ぶようになった。




タルデにたどり着いて1週間、私達は帰る方法を模索していた。故郷には家族や友人、恋人が待っている。自分が生きているのかさえ分からない。ただ縋り付いた。


「この島のことを王に報告すれば、たくさんの褒美を貰えるだろう。」

「船長には、爵位なんかくれたりして!」

「さすがにねーよ!」

そんな馬鹿なこと言い合って、お互いを保っていた。


タルデにたどり着いて2週間がたった頃、船の材料を探しに島の奥まで入り込んでいた者が、奇妙な建造物を見つけた。


それは黄金でできていた。輝きで目を傷めるほどだ。中に入ってみると、たくさんの何か、物体が転がっている。どういうものなのか全く想像がつかなかったが、丁寧にデザインされた外見から人工物であることはわかった。


中央の壁に張り付いて、祭壇のようなものが置かれている。それにはとても緻密に模様が掘られていた。規則性があるようだ。その祭壇を囲うように太陽の光が差し込む。上を見ると、その部分だけ天井が無かった。周りが金なことも相まって、神聖さとはまた違う、排他的な雰囲気に満ちていた。



それからさらに2週間経ち、ついに船の修復に成功した。

1人があの謎の人工物を王に献上しようと提案した。私は正直嫌だった。あそこの空気は重く苦しい。私達を拒んでいるようだ。しかし、もし故郷へたどり着けて、タルデを国に報告したとて、到底信じて貰えないだろう。夢のようなこの島は、現実とは思えない。




ある程度積み終え、船を出す準備ができた。ここは美しい島だった。ここが我が国の領地となったら、冒険はもう辞めて、島へと本土を繋ぐ船乗りになるのも悪くないかもしれない。




船が出航し………】










―――世界に厄災が生まれた。





ある日消息を絶った船団。その2年後の厄災が生まれた日、彼らの故郷に空っぽの母船が漂着した。その船はまるで1から作り直されたかのように不自然に綺麗で、中にはたった1つ、航海士の日記があるのみ。途中で途切れているその日記には、『タルデ』という神の島の存在が記されている。



そこで彼らは禁忌を犯した。厄災は全て、彼らが邪神を呼び覚ましたことが原因だ。



そんなことが囁かれるようになった。

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