なんもはじまんない『桃太郎』
この作品はフリーゲームとして公開している同名タイトルのテキスト版です。
基本的にはフリーゲームとして遊ぶことを推奨しております。
興味のある方は「ふりーむ!」ページのリンクを貼りますので、こちらからどうぞ。
ブラウザ版はスマホ、タブレットでも遊ぶことができます。
↓ふりーむ!作品ページ「なんもはじまんない日本昔話【ブラウザ版】」
https://www.freem.ne.jp/win/game/31992
↓ふりーむ!作品ページ「なんもはじまんない日本昔話【ダウンロード版】」
https://www.freem.ne.jp/win/game/31926
むかしむかし、あるところに・・・
おじいさんと、おばあさんがおりました。
ある日のことです。
おじいさんは山へ芝刈りに・・・
おばあさんは川へ洗濯物に行きました。
*おばあさん*「よっこいしょっと」
おばあさんは、大量の洗濯物が入ったカゴを川原へ下ろします。
*おばあさん*「ここ最近は雨続きじゃったからのう・・・」
*おばあさん*「洗濯物が山のようじゃわい」
おばあさんは腕まくりをすると・・・
*おばあさん*「オラァアアアアアア――――――!!」
おたけびを上げながら、洗濯物を次から次へと手洗いしていきます。
そのとき!
川上の方から・・・
なんと! 大きな桃が流れてきたのです!
例えるのならば、そう・・・
人間の赤ん坊が一人、
中に入っていたとしても、おかしくないくらい大きな桃です。
そんな大きな桃が・・・
「どんぶらこ~どんぶらこ~」と、おばあさんの元へと流れてきます。
*おばあさん*「ん・・・?」
おばあさんは手を止めました。
やがて、
信じられないものを見たかのように、口をあんぐりと開けて言い放ちます。
*おばあさん*「なんじゃあ・・・このバカでかい・・・」
*おばあさん*「『シミ汚れ』はァアアア――――!?」
おばあさんが見ていたのは大きな桃ではなく、
洗濯かごに入っていたおじいさんの着物でした。
その裾には、確かに大きな黒いシミができています。
*おばあさん*「あんのクソジジイ・・・」
*おばあさん*「しょうゆをこぼしてそのままにしよったなァ・・・!!」
*おばあさん*「こういうのは早めのシミ抜きが大事じゃというのに・・・!」
おばあさんの額にはピクピクと青筋が浮かんでいます。
大きな桃は「どんぶらこッ!?」と身をふるわせました。
*おばあさん*じゃが、このわしをナメるなよ・・・
*おばあさん*こんなシミ・・・わしの手にかかれば・・・
おばあさんはカッと目を見開くと、ガンコなシミ汚れを仕留めにかかります。
*おばあさん*「オラオラオラオラオラオラオラァッッ!!」
その鬼のような形相に、
大きな桃は「ど、どんぶらこ・・・」と距離をとりました。
*おばあさん*「漂白漂白漂白漂白漂白漂白ゥ!!」
おばあさんのシミ汚れを消し去らんとする執念が、
おぞましい殺気となって山全体に広がります。
大きな桃は「どんぶらこッ!? どんぶらこッ!?」と
おびえた様子で流れていきました。
*おばあさん*「消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろォ!」
*おばあさん*「この世界から消えてなくなれぇええ――――い!!」
そうして・・・
大きな桃は下流の方へと流れていってしまいました。
*おばあさん*「よっしゃぁああああああ!!」
*おばあさん*「ミッションコンプリート!!」
結局・・・
おばあさんは洗濯物に夢中で、
最後まで大きな桃に気づくことはありませんでしたとさ。
めでたしめでたし。