Episode:月での暮らし(かぐや姫はいなかった!?)
榊が月面の基地にやってきた。
「へぇー、ここ月面じゃ何人が住んでんだ?」と言うと月面のスタッフが「およそ10万人です」と答えた。
「じゅっ、十万人!そんなにいるのかよ」と、すれ違う人たちに榊は「おい、あんた、食堂の感想はどんなもんだい?」と聞いて回っていた。
そして「おっと、違う違う、採取状況の確認だったナ」と言うとスタッフと共に採掘エリアへと向かった。
そして榊の目に飛び込んだのは、いろいろなモニュメントだった、ウサギや、大きな木とその下で休む男性、大きなハサミを持つ蟹が飾られていた。
「なんでぇ、ありゃ」と榊がスタッフに尋ねると、「あぁ、あれはお守りみたいなもんですよ、各国の月に伝わるいろいろってやつですよ」とスタッフが答えた。
榊は「なんで、かぐや姫がないんだ?」と不思議そうな顔をして首を傾げた。
「さてと、鉱物はどうかな」と分析表に目を向けると榊は「なんだぁ、月にしかないものはないのか」と肩を落とした。
そして榊はスタッフの耳元で「おい、本当のこと言えよ、月ってよ、人工的に作られたもんなんだろ」とニヤニヤしながらささやいた。
するとスタッフが「なら榊さん手で成分分析してみるといいですよ、そのリストと同じ結果になりますから、なんてったって、あなたのスキルで解析しているんですからね」とスタッフもニヤニヤしながら榊の問いかけに答えていた。
榊は「それと、あのカメラを持ったあいつらはなんだ?」とスタッフに問いかけると「彼らは情報伝達班ですよ、いろいろ月面でのニュースをネットで流して、地球に伝えるのが役目なんですよ」
「ほーぅ、と言うことはあれか?アメリアやイリギス、ロ連、華国でも見られるんだな!」と聞くと、スタッフは「そうですね、特に規制してませんからね、それに資料や報告書、写真、サンプルなども博士がすべて目を通し、少しは同盟入りの鼻薬として4大国にチラ見せしてるみたいですよ」と答えた。
それを聞いた榊はため息をつきながら「はぁー、そんなことあの歳でしてるから、良くなんねーんだよ」と呟くと、するとスタッフが「なにか悪いところでも?」と不思議そうに榊の顔を見たので、榊はとっさに「なんでもねー、ところでよー、博士の代わりっつぅか、助手ができるとしたら、誰だと思う」とスタッフに切り返した。
スタッフは「そーすねぇ、笹川博士でしょうか、あの方も天才と言われた方ですよ、得意分野がない、あえて言えば、なんでもこなす天才肌ですね」というと、「ほー、会えるかい、今から」と榊はスタッフに尋ねると同時に、成神に秘匿回線で連絡をした。
「成神よー、相談だ、博士の助手ができそうな奴を見つけたぞ、んでだ、セイバースーツを着せて、いろいろ調べたり、守ったりしてーんだが、どうだろう」というと成神は「榊、それならもっといいものがある、バイオウォッチだよ」と言い説明を始めた。
「わぁった、わぁった、でもよー時計だろ、外しちまったら使えんだろうが」と言う榊の問いかけに「一度つければ、目に見えないマイクロチップが腕に埋め込まれるんだ、そこからの情報を時計が受信、さらに指定場所に発信する仕組みさ」と言うと「げっ、また嫌なもん作ってんな、成神よー、まぁ、いいや、それを送ってくれ、笹川博士っちゅうのに渡すつもりだ、いいだろ」と転送されたバイオウォッチを手に取り、スタッフと笹川博士の元へ向かった。
スタッフが笹川博士を見つけ手を振り、声をかけた「はかせー、笹川博士、コッチ、コッチです」という合図に気づき博士が近寄ってきた。
「どうも、笹川です、初めてお会いしましたよ、榊さん」という笹川に榊は「えっ、おれのこと知ってるの?」と少し嬉しそうにしている。
「あっそうだ、このスタッフから聞いたんだが、笹川さんあんた、博士の助手、いや博士の代わりができるほどの実力だそうじゃないか、ちーと頼みたいことがあるんだが、いいかい」と、榊が言うと笹川は「いえいえ、まだまだです」と謙遜している。
「でー、頼みっちゅーのは、この時計を付けてくんねーかと言うことだ」と言い、榊はバイオウォッチを笹川に渡そうとすると、笹川は「えっ!」と戸惑いながら、榊に「榊さん、これはいくつもつけるものなんでしょうか」と左腕の袖をまくり、すでに使っていることを見せた。
「はぁー、誰がこれを?」と問いかけると、笹川が「神原さんが、いきなり手を出せ、逮捕だと、言ってこれを付けて行ったんです」というと榊は心の中で ”神原、なんだかんだ言っていい奴なんだな” といつになく神原を高く評価した。
「それで、神原さんは、榊より私の言うことを聞け、そうすれば出世すると・・・」と言われたと聞くと榊は ”前言撤回だ!” と心の中で評価を下げた。
そして榊は笹川に「そうか、それならこれは無しだ、これからいろいろ頼むよ」と言い笹川と別れた。
「スタッフ君、あんた名前は?」スタッフは「田中です、田中」と言うと、榊は「じゃあ、田中さんよー、一つ調べちゃぁクンねーかな、弐本から月を見たときに年間で一番よく見える、月面ポイントをよっ、それと同じようにアメリアやイリギス、ロ連、華国の首都から見たときによく見える月面ポイントをだ、マーキングして送ってくれよ、そしてこれが先渡しのお礼だぜ」と言って、榊はバイオウォッチを田中に渡した。
田中は「こんな良いものを、ありがとう」と言って、ポイントを調べに行き、30分ほどで、マーキングデータを送ってきた。
榊はそのポイントへ行き何やら作業を行い、数時間後に月面基地に戻ってきた。
そして「次は火星だな」と言い、火星に向けジャンプし、月を離れた。
その後、弐本の地下研究施設でほんの一瞬話題になったことがある。
それは弐本から月面を望遠鏡で見ると、6体のオブジェが見える時があるという。
それは、右から順に、ネ申博士、ネ申康美、榊剛士、神原翔子、御神望、少し離れたところに成神つなぐの像であった。
そして榊の像は神原と肩を組んだものだった。
さらに4大国の首都でも同じように6体の像が手招きをしている姿が見えるという噂が広がっていた。