Episode:異星の救済レポートⅣ(機械惑星オートニア)
「さぁ、着いたぞ!エルダーどんな状況だい?」と成神は振り返り、エルダーを見た。
「このオートニアにも生命体はいません、ですが、ガンロック星で成神さんが、精神体をスキャンできるようにして下さったので、精神体をスキャンすると、無数の小さな精神体が、ある場所に集まっているように見えます」
「よしっ、まずはそこに行ってみようか」と言うと、メテオールが真っ先に船外へと出ていった。
それを見たガルムとコダイたちは、そろって「チッ」と舌打ちすると、成神はみんなに対して、「久しぶりに動けて楽しいんだろう、いいかいみんな、”仲良く”だっ」と笑って言った。
みんなが、目的地に着くと、すでにメテオールが小さな精神体に向かって会話をしていた。
「小さいな、それでは体を形成することができないな、まるで最初の頃の私のようだな」
精神体は「私たちは宇宙のあちこちで作られ、捨てられた機械の中にある小さな小さな精神体です、宇宙空間に捨てられた私たちは、なぜだかここに集まってきた。」
「最初は一握りの宇宙のゴミステーションだったが、今では、同じように捨てられた機械や壊れた宇宙船などが集まり、一つの小さな星を形成している。」
「今の私たちは、この程度の数しか存在していないが、昔はもっといたんだ、でも、未来を諦めたものから順に精神体は消えていったんだ。残った私たちの思いは一つ、未来に生きたい、それだけだ」
するとメテオールが彼ら小さな精神体たちに向かって提案をした。
「私もはじめはあなたたちと同じ、小さな精神体だった、私たちは戦いによって勝った方が負けた精神体を取り込み大きくなったんだ、それは服従させるための戦いだ。」
「だが、君たちはすでに思いは一つなんだろ、ならその思いで集合体となれるだろう。どうだ一つになるように手を貸そうか?」
小さな精神体全員の答えは同じ「頼む」だった。
ここまでのメテオールと小さな精神体の会話を聞き、成神はメテオールの行動を制するように話をはじめた。
「こんにちは、みんな!私は、成神つなぐ 地球の人間だ。今までの話を聞いて私からも提案がある」と言い精神体の数を成神は数えだした。
「全部で28体だね、君たちは増えることはできるの? 成長はするかい? 子孫は増やせるのかい?」と興味深く尋ねた。
小さな精神体の答えはいずれも「いいえ」だった。
その答えを聞いた成神はメテオールに「どれくらいになれば、一つの個体として体を形成できるのですか?」と尋ねると、メテオールは「私は15ほどの精神体を吸収し、動く体を形成するだけの精神力がついたんだ」と経験を語った。
そして、成神は「できるかどうか、まだわからないが、私たちの仲間にコピーする能力を持つ者がいる、それぞれをコピーして、28体全員に体を与え、生きてもらいたい。そのためには、精神体の一部をもらうことになるが、どうだい?」と小さな精神体に問いかけた。
小さな精神体は「ここにいる精神体は生きることをあきらめない、それが一体として生きることしかできないのならば、それも受け入れよう、だが、28体全員が生き残れる望があるのであれば、それを試すことを優先したい」
成神は「わかった」と言うとすぐに、博士に連絡を入れた「博士いますか?」
「成神君か、心配をかけてすまん。何もかも任せてしもうて・・・今日は少し気分がいいんじゃ」
「博士、無理はなさらないで、私に任せておいてください。今までの話聞こえていましたか?」
「あぁ、聞いておったわぃ、物質転送装置でドゴーラ保管庫を28個転送しようかのぅ、受け取ってくれ」
目の前に保管庫が大量に届いた「おぉ、来た来た、博士届きました、後はこちらに任せて、休んでくださいね」
「成神君、悪いがそうさせてもらうよ、ではのぅ」
「よしっ、では精神体の皆さん、それぞれ箱に入ってもらえるかい。」
「蓋を閉めたら複製が始まると思います、できれば皆さん始まった時の感覚を覚えておいてください。例えば、チクッとした痛みがあったとか、ヒヤッとしたとか、熱かったとか、わからないがどんな些細なことでもいいから後で言ってください」
「それとエルダー、オリジナルを右側に、最初の複製でオリジナルを取り出してくれるか、みんなもエルダーの指示にしたがって協力を頼む」
メテオールが不思議そうに「成神さん、なぜオリジナルを取り出すのでしょうか」と聞いた。
「わからないが、我々の常識では複製は少しづつ劣化するといわれている、ドゴーラによる複製は、生命体では一番いい状態で複製されることはわかっているが、精神体の複製にどんなリスクがあるのか、まだわからないからね、念のためさ」とメテオールの疑問に成神は答えた。
数分で2体になり、最初の複製が完了した。
それを見たメテオールが小さな精神体に向かって話しかけた「やぁ、二人の精神体よ、気分はどうか?」すると答えを返したのはオリジナルの精神体だけだった。
それに気づいたメテオールが複製された方は、私たちの言う敗者のそれと同じ状態だなと状況を成神に伝えた。
すると、成神は「エルダー、みんなにオリジナルを取り出して、複製を続けるように指示してくれるかい」とエルダーとみんなに聞こえるように話し、みんなも従うように作業を続けた。
「それとメテオール、20分もすれば敗者型の精神体の複製が15から20体ほどできるわけだが、オリジナルにそれを取り込み、体を持たせることは、可能なんだね」と言うと、メテオールは「何千、何万回もやったことだ、造作もない」と自慢げに成神を見て言った。
「では、オリジナルの諸君、どんな体がいいのかパーツ選びをするといい、元の機械をそれぞれの個性とするのもいいし、この際、なりたかった夢のボディを作るのもいいぞ」とメテオールは楽しそうにオリジナルの精神体と話をし、精神体も必要なパーツを集めに動き回っていた。
「成神さん、複製が完了したようです」とエルダーが伝えると、成神は「エルダー、ありがとう、じゃぁ、メテオール頼んだよ」と複製体をオリジナルに吸収させ、さらにパーツによって体を与える工程を興味深く見守っていた。
完成した精神体はパーツによる個性と複製個数により大きさにも違いが出ていた。
「小さな精神体から新たな種族の誕生だね」と成神は28体を眺めながらつぶやいた。
「それで、君たちの種族名だが、オートニア星の機械精神体JO族ということにしよう」
「それぞれの名前は、名前つけるの好きな仲間がいるから、頼んでみるよ」と言うと、成神はその中で一番バランスの良いボディを持つ、1体に「君がリーダーだ、名前はレイだ、いいね」と名づけをした。
レイはみんなに「我らの夢、叶えていただき感謝いたします。今後は皆さんの期待にそえるよう28体、力を併せて、ご恩に報いたい」と語った。
そして成神は、この星を第三の地球として作り変えたいことや、これからのことを、彼らJO族のやりたいことを含め話し合いをして、オートニア星の整備をJO族に任せることにした。
ここに第三の地球、機械衛星オートニアースが産声を上げた。
成神は、レイも一緒に、一度地球に戻ることを提案した。
成神が「では地球、弐本に帰ろう、いつもの確認だ!、ガルム隊長、全員揃ってるね!コダイリーダー、準備OKかい」と尋ねると二人は揃って「大丈夫だ!」と答えた。
さらに、成神は「メテオール!レイもいいかい」というと、二人も初め見る地球に思いを寄せながら、「ハイ、お供します」と返事をした。
続けて成神が「Nスコープ、ロックオン完了、Kワープ!」というとオートニア星から雷鳥号が地球にワープした。
「ーーーーーー到着だ!みんな、帰って来たぞ!!」