Episode:異星の救済レポートⅢ(鉱物精神体の星ガンロック)
「ガルム、今戻った」と擬人化器官の採取に追われるガルムたちに成神は声をかけた。同じ作業の繰り返しに嫌気がさしていたみんなは、”次の冒険だ!”と言わんばかりに期待の視線で成神の帰還を喜んだ。
「おかえり、成神さん。そろそろ次へ行きたいのだが、どうだろう」とガルムは強い視線で成神を見ていた。
「そうだね、次へ行こうか」と言う成神に、ウドノが「私もお供させてください、ここには話し相手もおらず非常に寂しいのです」と訴えた。
「そうだね、いいよ!、ただこの星を放置するわけにはいかないから、衛星監視キットを設置して、弐本の拠点からモニターできるようにしておこう」と言うと、早く次の救助に向かいたいガルムたちは、積極的に衛星監視キットの設置に協力した。
そして、いよいよ成神の出発号令を待つだけとなった雷鳥号の中に、榊剛士が突然現れた。
「よう、成神!、ここがローズッド星、見渡す限り木しか見えねぇや、んで? ここで、何か見つけたのか?」という榊の登場に、ガルムたちはメンドクサそうにため息をついた。
「へぇー、なんだか見慣れない奴いんじゃねーか、誰だい成神、あの材木みたいなやっぁよー」
「成神さん、あのお方からも ”ザイモック” という別名をいただきました・・うれしゅうございます」とまだ言葉の意味を理解しないウドノは、ただただ増えていく名前を喜んで受け入れた。
「材木だから、ザイモックか、ハハッ、見たまんまだナ、ちげーねぇや・・・ザイモックは何ができんだ」と榊は早速、康美の交代メンバーのためのスカウト活動を始めている。
「わたくしは、薬と医療の知識を使った活動が得意でございます、是非ともこの力が必要なト・キ・ニ・・」とウドノがここまで話すと、榊は「悪いが、俺がスカウトしたいのは、採取にたけたやつなんだ、なんてったって手がタ・リ・ネ・ェ・・」と申し訳なさそうにウドノに返事をした。
「私は植物系でございます、手(枝)は、いかようにも増やせますし、伸ばせます」とウドノは自慢げに榊に腕を増やして見せた。
「おおぉー、そういうの待ってたぜ、いいじゃねぇかザイモックよー、一緒に来ちゃくれねーか?どうだ!」と再びスカウトする榊だった。
「成神さん、この方にお供してもよろしいでしょうか、許可を頂きとうございます。」とウドノが成神に同行の許可を求めた。
ガルムが成神の耳元でつぶやいた「成神さん、早く許可を、面倒くさいあの二人を弐本に戻してください」というと、成神は「ウッディが自由に決めていいよ」と返事をした。
「ンじゃ、借りてくぜ!」と言うと、榊とウドノは瞬間移動で弐本の拠点に戻っていった。
ガルム達は、また大きなため息をつき、次こそはと成神の号令を待っている。
成神が「では行こう、いつもの確認だ!、ガルム隊長、全員揃ってるね!コダイリーダー、準備OKかい」と尋ねると二人は揃って「大丈夫だ!」と答えた。
続けて成神が「Nスコープ、ロックオン完了、Kワープ!」というとローズッド星から雷鳥号がワープした。
「ーーー・・・到着だ!」、鉱物だらけの星、ガンロック星に降り立った。
エルダーが不思議そうにモニターを見ながら「成神さん、この星に生命反応はありませんが」と言うと、ガルムが「間に合わなかったのか」と落胆した。
「でも、情報では緊急度は三番目のはずだが・・・とりあえず探索しよう」と成神は準備を始めながら「せっかく来たんだ、資源調査はしてみよう」とみんなを急き立てた。
雷鳥号から外に出で、少し歩くと、成神に話しかけるものがあった。
「助けて・・」と、成神はすぐにガルムたちに確認した。
「みんな、救助要請だ、聞こえたかい?」と言うとガルムたちは全員が首を横に振り、聞こえないという反応を示した。
「おかしいな、みんなのスーツも星の生命体の言語は理解できるはずなのに、私にだけ聞こえるのは、そうか!スーツの性能ではなく、私の能力が直接受信したのか?」
「私はガンロック星の王の中の王、メテオール」
成神は声のする方を見た、しかし姿はなく、あるのは大きな山だった。
「なんだ山? もしかして北遊記みたいに山につぶされたタヌキとかなのか?」
「何を言っている!、私はお前が見ている山そのものだ」とメテオールは興奮して答えた。
「山?生命反応はないぞ!いったい何なんだ?!」ただ漠然と山を見て話しかける成神だった。
「生命?私は生命体ではない、精神体だ」とまた、メテオールは久しぶりの会話を逃さないと言わんばかりに興奮して答えている。
「精神体?・・・ちょっと待ってて。えーっと記憶から精神体の知識を引っ張り出そう・・あった、あったぞ、その情報をスーツにアップデートして、みんなにも共有しておこう。」
「なるほど、ゲームでいうと生命体がHPなら、精神体はSPみたいなものか?」と成神は手早く対応した。
「ゴチャゴチャ言わずに、それをくれ、そう、それだ!」とメテオールが成神を急かすように話した。
「どこかで聞いたフレーズだな、と、すれば、この答えはコレのことか?擬人化器官・・・」と成神はメテオール山に向かって擬人化器官を見せた。
「そうだ、それはローズウッド星人の擬人化器官だろう、今の私にはそれが必要なのだ」
「わかった」と成神は言い、山に擬人化器官をセットした。
山はみるみる小さくなり人間の大きさになった。
「まるで岩人間のようだ!で、なんで山だったんだ?」と成神はメテオールに尋ねた。
「話せば長くなるが・・」とメテオールが言うと、成神は「いいさ」と即答した。
メテオールは「我々は鉱物に精神が宿った物だ、すべての鉱物がこの星の中に存在する。そして、それぞれの鉱物の一体のみが、その鉱物の王として他の鉱物の王と戦うことを許されるのだ、鉱物同士が戦い、敗者を吸収し大きくなる、負けた王の精神は消え、勝った王の精神を強くする。最後まで勝ったもの、すなわち私、鉱物の王の中の王、メテオールなのだ」と話した。
「戦いの初めのころは、互いに切磋琢磨し、ぎりぎりの戦いをした、だが私は勝った。」
「戦いが中頃になると、私は連続で戦いを申し込まれた、私は集中的に狙われたのだ、だが私は勝った。」
「そして終盤になると、私の大きな体を見ただけで、相手は負けを認めるようになり、戦わずして私は勝った。楽な戦いだっただけに、ただ吸収する日々が続いたのだ、するとどうだ、すべてを吸収したこの体は山になり、動けなくなった。」
「その後は、あなたが来るまで、ずっと助けを待っていたのだ、ありがとう成神、おかげで助かった。」
「へぇー、ということはメテオールは、すごく強いわけだね」
「それはわからない、鉱物には特性がある、私は吸収した鉱物の特性も生かしながら、戦ったのだ、だが、星は数多く、私はこの星の王というだけで、井の中の蛙のようなものだ、あそこに見えるのは、また別の種族のようだな」とメテオールはガルムたちに視線を向けた。
「あぁ、ガリュー星のガルム達だ、僕たちは彼らと絶滅に瀕している種族の救済のために活動しているんだ」と成神もガルムたちを見て答えた。
「ならば、成神、私も、あなたたちと星々を渡ってみたい、せっかく動けるようになったのだから、できれば、強い奴と手合わせもしてみたい」
「ついてくるのは、メテオールの好きにしていいよ、ただ、手合わせで勝ったからって、吸収は無しだよ」
「わかっているよ、それと成神、あなたたちが着ている服を、私にもくれないか、仲間として!」
「いいだろう、みんなーっ、紹介するよ、精神体でガンロック星の王、メテオールだ。」
「みなさん、この星の最後の王、メテオールです、お仲間に加えて下さい、よろしくお願いします」とメテオールは胸を張り、右手をあげた。
すると、ガルムが成神の耳元で囁いた「成神さん、王、王って、彼もめんどくさそうなのですが、榊さんに連れ帰ってもらっては、いかがでしょうか」
「ガルム、まぁ、そう言うな、しばらく行動を共にしてスキルとかを観察しようと思っているんだ。」
「おーぃ、エルダー!メテオールにスーツを持ってきてあげて」と成神はエルダーに指示を出した。
「はい、今お持ちします」こうして、ガンロック星メテオールが仲間に加わった。
成神が「では行こう、いつもの確認だ!、ガルム隊長、全員揃ってるね!コダイリーダー、準備OKかい」と尋ねると二人は揃って「大丈夫だ!」と答えた。
さらに、成神は「メテオール!楽しんで行こう」と言うと、メテオールは満面に笑みを浮かべて「ハイ、お供します」と胸を張った。
続けて成神が「Nスコープ、ロックオン完了、Kワープ!」というとガンロック星から雷鳥号がワープした。
「ーーーーーー到着だ!」、機械だらけの星、オートニア星に降り立った。