Episode:生きるためのキビ団子<擬人化器官>をください(犬とカラス)
「ガルムたち、今日はウッディに擬人化器官の採取方法を聞いて、できるだけ多く採取してもらえるかい、数は多ければ多いほどいいけど、最終的には擬人化したいものが、自らここへ採取しに来させてもいいかな、ただ、コレの管理者も置いておきたいし、その辺の組織も考えておいて下さい。
私はちょっと地球へ戻ります、何かあったら念話して、擬人化器官いくつか持っていくよ、じゃぁ」と言い、成神は瞬間移動で地球に一時帰還した。
戻った成神をみつけて、嬉しそうに御神が駆け寄ってくる「成神さん、お帰りなさい」
「やぁー、御神さん、今日は資源調査は休みですか?」
「ハイ、博士の体調がすぐれないので、康美さんがお世話をする関係で、榊さんが、康美さんは、しばらくの間、博士についていた方がいいだろうと、ただ、こちらも人手が足りないので人財を見つけに、榊さんは各部署回っています」
「それに何かスキルのことで気になるからって、今日は自由にしようって」御神は、久しぶりの休みと成神との再会に笑顔で答えた。
「なんだろう、スキルのことって?」と成神も気になっているような口ぶりだった。
「なんだかわからないそうなンですが、スキルを使うと、別のスイッチが入りそうだとかなんだとか言ってました、ちょうど ”初めてグニャリが発動した時みたいに” って言ってましたよ。」
「何なのでしょうか」と御神は博士の体調不良と続く榊の体調の変化にも心配を寄せていた。
「僕も同じだ、榊も、なのか・・・」同じような変化を成神も感じ取っていた。
「同じってなんですか?体調の変化でも」と心配そうに御神は成神の顔を見た。
「そのことで、今日はこちらにいらしたのですか?成神さん」
「いや、ちょっと残された弐本を見たくなってね」と、救助活動で惑星探査をしていた成神は、”ほんの少し弐本へのホームシックだな“ と心の中で解説した。
「じゃぁ、九国か北道に行かれるのですか?成神さん」
「そうだな、九国は最初のビジネスホテルにでも行ってみようかな、北道はどこへ行こうかな?」と変わり果てた北道の写真を成神は見ている。
「成神さん、わっ、私も一緒に行ってもいいですか」と御神は同行を申し出た。
「もちろんです御神さん、では、行きましょう」
御神が成神の手を取り「はい」というと同時に、九国のビジネスホテルの前に立っていた。
「このホテル、最初にみんなが集まった場所だ、しっかり残っていたんだな」と感慨深くホテルを眺めていると、成神は「ソレを、く・ダ・さ・イ」という声と視線を感じた。
成神はぐるっと見まわしたが人は見当たらなかった。
しかし、視線を下に向けるとそこには、昔見たような犬が成神を見上げていた。
「この犬は、以前成神さんが見つめていた犬ではないですか?、何かを言っているのですか?成神さん」
「わかるかい御神さん、この犬は何かをくれと言っているみたいだ、でもなんだろう、欲しいもの」というと、その犬は、成神のポケットを指さしている。
「これは・・・擬人化器官?」成神は犬に擬人化器官を見せて「これのこと?」と問いかけた。
犬は頷き擬人化器官を手に取り胸に装着した、すると、みるみるうちに子供の大きさの人型に変わっていった。
「コンニチハ、成神さん」犬はヒト型となり、話し始めた。
「私は、タルトと呼ばれていました、あの日、私にも不思議な事が起きたのです、遠くにあなたを見たとき、追いつき話をしたかった、でも追いつけなかったと思ったときに、私は時間を超え先回りしたんです、でも、あの時は、私の話が、あなたにはわからなかったみたいだった」
「タルトくん、でいいのか、君は未来へ飛べると言うことかい?」と成神が驚いていた。
「かわいい、タルトくん」と御神は頭をなでている。
「タルトくん、タルトは過去にも行けるのかい?」と成神はスキルの確認をした。
「それは出来ないんだ」と肩を落とした。
「でも、やっと話せた、僕もあれから、いっぱい練習したし、少し大きくもなったよ、だから、僕もついて行っていい?」と二人に問いかけた。
二人は揃って「勿論だ」と言ってタルトの手を取った。
三人は九国を歩き、弐本に残された大地を実感した、成神は、御神とタルトに「じゃあ、北道に行こうか」と言いジャンプした。
「北道は半分ほど残っているんだな」と歩きながら、御神とタルトに話しかけた。
「こんなに簡単に移動ができるんだね、これもスキルなの?」とタルトは疑問に思うことを次々に聞いてきた。
「このスーツがあれば、いろいろなスキルが使えるわよ!タルトくんも、かわいいの作ってもらいましょうね」と御神が着せ替え人形を見るような目で訴えていた。
そんな会話の中、小さなカラスが近くに飛んできた、そしてタルトの時と同じように、成神のポケットをつついて「カァー、その、光るものをくれ」と言ってきた。
すでに勝手がわかっている成神は、擬人化器官をカラスの胸に付けてあげた。
すると、みるみるうちに子供の大きさの人型に変わっていった。「私もお供させてください、私のスキルは過去に戻れることです」とカラスは言った。
成神は思わず「こんどは過去なんだね、未来には行けないということでいいね」とカラスに問いかけると、カラスは「過去にしかいけない」といい肩を落とした。
「成神さん、このカラスさんに名前を付けてあげないといけませんね」というと御神はすぐに「ね、Qクロウさん」と既に名付けて呼んでいた。
一人の旅のはずが、二人と二匹の旅となったのだった。
拠点に戻ると成神は、早速タルトとQクロウのスキルを取り出し、康美の時間停止のスキルも使った “タイムトラベルPOD” を作成した。
POD内は時間停止をさせ、未来と過去を行き来できるもので、組織内でも超極秘裏に取り扱われ、短い日数での使用を繰り返し、人体への影響を探っていた。
また、擬人化器官の連続使用実験に同意したタルトとQクロウは、今も擬人化を保っている。
父、ネ申博士の体調不良から、康美も介護の疲れと心配から落ち込む日々が続いていたが、タルトとQクロウの登場は、心の癒しとなっていた。
成神は連続使用実験と康美のそばにいることを二人に命じて、再びガルムと合流することとした。
康美は擬人化器官のプロセスを解析し、擬人化時のモデルデザインを自由に書き換えることに成功し、タルトとQクロウは誰の目から見ても”かわいい”ものとなり、癒しの存在という立場を確立していった。