Episode:異星の救済レポートⅠ(双子星バラージ星とビラージ星)
このお話は、『Teams チームズ 会社をクビになったが祖国を救う事になる話』の続編です。
ある日の夜、博士の夢の中に『聞ケ、伝道者・ヨ、地球・ハ、再生・・ヲ 行う、生物ハ キエ・・・・』、同時期に成神の夢にも、『見ヨ、地球・ノ 姿・ダ、各地デ・災い・ガ・起きる、記憶・セヨ・・・・』博士はカッと目を開き、そのままの姿で成神の元へ急いだ、成神もベッドから飛び起きて、博士のもとへ向かう・・・。その日の1カ月半前の話から始めよう。
「おーぃ、ガルムー」
「何でしょうか、成神さん」
「弐本の、いや世界の救助活動も落ち着いたことだし、そろそろガルムは絶滅の危機に瀕した異星人の救済活動がしたいんじゃないかと思ってね、情報を頭の中から引っ張り出してリストを作ったんだ、気になるところはあるかい?」
「おおっ、ありがとうございます、拝見します。」ガルムは目を輝かせリストに見入っている。
「4つの星ですか、意外と少ないのですね」と少しがっかりしている。
「違うんだよ、今すぐに手を打たないとならない星という条件で絞り込んだんだ」
「今すぐとは、どれくらいの猶予があるのでしょうか、成神さん」
「1カ月半くらいじゃないかな」
「ひと月半で4つの星を、ですか・・・すぐに準備を」といい、ガルムはメンバー6名を選抜した。
「私と成神さんで一つのチーム、もう一つはコダイをリーダーに6名のチームです」
「あーぁ、彼?切り裂く・・コダイっていう名前になったの?」と成神はコダイに視線を向けた。
「リザレの神の神原さまに ”古代種だからコダイだね”と言われ、名を付けて頂きました」
「それって、どうなのかなぁ」
「このコダイ、大変気に入っております」とコダイは尻尾を大きく振っている。
「あっそ、気に入っているのなら、僕は構わないよ、じゃぁ、コダイ!リーダーよろしく」と言い、成神はコダイに握手を求めた。
ガルムが、コダイたちに向かって話した「本来であれば、私たち8人で一つのチームなんだが、救助に向かう最初の星が双子星なのだ、よって二手に分かれることも想定して、いつでもスムーズに別行動がとれるようにしておきたい、リーダーを任せていいなコダイ!」
「ああ、ガルム隊長、準備は出来ている」
「それと今回は、雷鳥号で行こうと思う、4つの星をめぐることになるので、拠点が必要なんだ、それとみんなのセイバースーツだが、巨大化するときは気を付けて!伸びるにしても限界がある、体長70メートルまでが限界だ、それ以上は大きくはなれない、スーツは破れないので、体の方がどうにかなるからね!」と成神は注意事項をみんなに伝えた。
「それじゃぁ、最初の双子星バラージ星とビラージ星の情報だ目を通しておいて、1時間後に出発しよう!ガルム隊長、コダイリーダー二人に任せるよ、ヨロシク!」と言って散会した。
1時間後、成神が「ガルム隊長、全員揃ってるね!コダイリーダー、準備OKかい」と尋ねると二人は揃って「大丈夫だ!」と答えた。
続けて成神が「じゃ、行くよ!Nスコープ、ロックオン完了、Kワープ!」というと救助隊格納庫から超大型救助船雷鳥号がワープした。
「・・・到着だ!」
「こちらはバラージ星ですね」と資料の座標を確かめるようにガルムが確認の会話をした。
コダイも窓越しに見える状況を声に出した「なっ、なんと惨い、死体の山、なぜ」、外を見る他のメンバーの中には、あまりの凄惨さに身震いするものもいた。
ガルムはメンバーの動揺を引き締め、抑えるように、威厳をもって伝えた「理由はわからんが、見た通り死体の山だ、我らの教えは”救済”である、ブルッてる暇はないぞ、わかってるな」メンバーはガルム隊長の一言で我に返り、やるべき行動を取り始めるのだった。
成神がガルムとコダイに、窓越しに指をさして「あれ見て4体が正方形の形、ちょうど角に当たる部分に外側を向いて立っている、昆虫型だな、しかも大きい50メートルはあるな」
コダイも続いた「立っている昆虫型のタイプはバラバラ、でも死体の方は同じタイプものが半分以上ありますね」
「死んでいる中で多いのは、サソリ型だな、立っているのはカブトムシ型、アリ型、クワガタムシ型、スズメバチ型かな、みんな強そうだ」と成神はタイプの分類をした。
ガルムも何かに気が付いたように「彼らは何かを守っているのでしょうか?中心に何かがあるのかもしれません」と話す。
「ガルムとコダイの推測から仮説を立てると、双子星のもう一つの星ビラージは、サソリ型の生物の星、そこからの襲撃から、彼らが大切なものを守っていた、バラージ側は大勢が倒れ、残ったのがあの4体なんじゃないかな?」
コダイの部下の医療主任のエルダーが状況を伝えてきた「倒れているモノの中に生命反応はありません、あるのはあの4体、それと、わずかですがあの中心に微弱な無数の生命反応を確認、もしかすると卵を守っているのかもしれません」
弐本で武術を学び、頭角を現したグリムが「今度、サソリの奴が来たら、どうなるかわかりませんね、彼らは立っているのもやっとって言う感じのようです、私は援護に回りましょうか、それとも前でサソリと戦いますか?」
ガルムは全員に向けて「みんな、巨大化して戦うことになるかもしれない。全員今のうちにガルグミ食っておけ、今から、成神さんと私はビラージ星に潜入してくる。いいか!彼らを死なせるな、できればサソリの方もだが、コダイいいな!」
「あぁ、ガルム隊長了解だ、エルダーは、あの4人とコンタクト頼む、残りグリム、ザットン、エルム、ジーラはそれぞれ4体をフォローしろ、俺は強うそうな奴、みつけて叩く」
すると、グリムがコダイに向かって「コダイリーダー、俺なら弐本武術で一撃で行動不能にできますよ。代わりましょう!リーダーが動き回るのは、どうも締まらないですからね」と話すと、コダイは「そうか、そうだな、そうしてくれ」とグリムの意見に賛同した。
「ガルム!CZU001型 白銀で行こう」
「了解!ゴーストモードで行きます!発進・・もう目の前にビラージが見えてますね」
「おいっ、ガルム!2時の方向、サソリ型100体・・・すれ違うぞ」と言うと、成神はすぐにバラージのメンバーに連絡を入れた、「サソリ型約100体行ったぞ!しっかり頼むぞ、ただし ”いのち大事に”だ!」
「あぁ、わかった、彼らとコンタクトが取れた、我々の援護を受け入れるそうだ、もう限界らしい、とりあえずギリギリ間に合ったところだが、勝たなきゃ意味がない。そっちも気を付けて」とコダイは言うと、「油断するなよ、命守るぞ!」とみんなを鼓舞した。
一方、成神とガルムはビラージ星の大きな巣穴のそばの岩場に白銀を隠し、徒歩で巣穴に入っていった。
ほとんどがバラージ侵略のために出払っているようだったが、数体のサソリ型が見守る一つの場所があった。
「ガルム!あそこ、何かあるな、ある程度小さくなれば、奴らからは見えなくなると思う、ガルム行って様子を見てきてくれるかい」
ガルムは「わかった」と言うと4分の1ほどの大きさになり、細かく瞬間移動を繰り返しながら、その場所へ向かった。
数分後ガルムが戻ってきた、「2体のサソリ型がとらえられていました、この星の王と王妃です、軍部が彼らをとらえ実権を握った、つまりクーデターのようです」
「なるほど、でもなぜバラージを襲うんだ?」と成神は仮説を確認するかのようにガルムに問いかけた。
「もともとは全員ビラージで暮らしていたんだとか、豊富な資源があったころは良かったが、星の資源が減るにつれ、サソリ型が他の昆虫型を資源のほとんどないバラージに追いやったンだとか、さらに今度は、栄養豊富な彼らの卵を狙って、侵略をしているようなのです」
「彼らがそれをガルムに話すということは、サソリの王と王妃には戦う意思はないということなんだね、では、ガルムもう一度、彼らのもとへ行き、停戦と、王と王妃 二人への服従命令をサソリ型みんなにするがいいかと承認をもらって来てくれないか」と成神はガルムに指示を出した。
「わかった、そうしよう」と言い、再び彼らの元へガルムは向かった。
そして念話にて「了承を得た!」と伝えてきた。
成神は、「ビラージに残っているのは、門番をしている6体だけのようなので、彼らには、王と王妃の護衛役を命じておくよ、私はバラージに飛んで戦いを止めてくるので、ガルムはここに残って、これからのことを話し合ってくれるか?」と伝えるとバラージに飛んだ。
成神が戻る少し前、バラージにサソリ型の大軍団が到達し、正方形のエリアに進軍している所だった、コダイたちは全員が50メートルの大きさに巨大化し、疲れ切ってはいるが戦う意思を切らさない4体のその前に立ち、身構えていた。
グリムはというと、向かってくる方向の前方に進み出て、腕を組んで出方をうかがっている所だった。そのグリムの肩の上に成神は戻ってきた。
「よし、間に合ったな、”戦いはしない、君たちは、王と王妃の命令を聞くんだ” 」と命令を送ると、彼らは踵を返してビラージヘ戻っていった。
カブトムシ型の1体が話しかけてきた「ありがとう、助かった。私の名はキングオー、あいつ(アリ型)は、アントール、向こう(クワガタムシ型)は、クリッパー、こいつ(スズメバチ型)は、クインビーだ、我々は、まだ、生きているが、もうこれから生きるだけの資源が、この星のどこにもない、この卵たちも、生まれてくることさえ許されない」
「キングオーさん、私は成神と言います。一つ提案がある、私たちがこの星に立ち寄ったのは、絶滅しそうな生命体を救済するためなのです、今のあなたたちのことです。あなたたちを助けたい、ビラージに戻って一緒に暮らしてはどうか、共存できるようにはする、さっき彼らに命じたようにネ、それにサソリの王と王妃は戦う意思はないと言っている」
そこへガルムが白銀と共に戻ってきた、成神はグリムの肩の上からガルムのそばへ瞬間移動した。
「成神、ありがとう、だが、戻ったところでビラージもやがて資源が尽きる」とキングオーは言う。
「あぁ、そうだね、だからずっとビラージでということではない、私たちの星、地球で一緒にだよ、でも、その大きさはちょっと問題なのでね、それを解決できるまではビラージで」
「大きさ?」とキングオーが尋ねると、コダイたちは元の大きさに戻って行った。
「そう、僕たちほどの大きさに普段はなってほしいんだ、そのためのスキルを用意するから」とキングオー達の足元で成神は手を振った。
「成神さん、卵の健康管理もあるので、私が毎日定時健診をしましょう」とエルダーが言うと、成神は「エルダー、できるかい、ここに付きっ切りでいられると、僕らのこれからの活動に影響するから、行ったり来たりで大忙しになるが・・・」
「弐本の厄災の時も乗り切ったのです、今回は健康管理だけですから、十分に対応可能です」とエルダーは余裕の笑みを浮かべていた。
「わかった、エルダーありがとう、では、サソリの王と王妃に念話で情報を伝えておくよ、それから、サソリ一族にも”平和”の理解と実行を命じておく、必要なものは地球と連絡をとって・・・博士、聞いていました?」
「康美です、成神さん、お父様は、朝から体調がすぐれないと言って自室で安静にしています」
「そう、あまりう無理しないようにと伝えてください、じゃあ康美さん、エルダーと一緒に、頼めるかい」
「もちろんです、できるだけ早く対応します、エルダーさんも次の星に早く追いつかなきゃだしね」と康美は、父の心配を隠すように気丈に振舞っている。
「じゃぁ、時間も迫っているから、次の星へ行く準備だ」と成神は、ガルムとコダイの肩を”ポンッ”と叩いた。