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第六話 第一試合と第二試合 -セレナ-

 午前八時五十五分。闘技場の観客席は熱気に包まれていた。半円状をした古びた闘技場の入り口には、『第百三回 エストピア王立学園冒険者クラス卒業試験』の文字が張り出されている。


 第一試合開始まで、あと五分だ。国民は観客席に着いていて、各々知り合いと談笑している。


 あたしは控室で、エルフ姉妹の横に座り、周りを見回す。


 男三人衆はすでに闘技会場に出ていて、控室には女三人だけだった。控室には闘技会場が見渡せるように窓がある。あたしが窓から顔を出すと、エルフ姉妹も割って入ってきた。


 対面のムダに高い位置に備え付けられた椅子には、お父様が座っている。石造りの椅子は、とても座り心地が悪そうだった。


「さて、それでは第一試合を始める」


 学園長が、拡声魔導具を使いながら闘技場に現れた。普段から野太い声の学園長の言葉が、魔導具によってさらに聞き取りづらくなっている。


「ルールは簡単。各々闘ってもらい、戦闘不能となるか、負けを宣言した方が敗者となる。ただし、相手の命を奪うのは禁止だ」


 つまり、どんなに怪我を負わせてもいいのか。命を奪わない限り。その証拠に、治癒クラスがスタンバイしているのが見える。エミリーは、あたしに気づき手を振ってきた。あたしは振り返そうとしたが、対面にはお父様が座っていることを思い出し、自制した。


「それでは第一試合、開始!」


 学園長の言葉と同時に、ダニエルとセバスチャンが詠唱する。


「【豪炎球(フレイム・ボール)】」

「【風の弾(ウィンディ・ショット)】」


 二人の魔法は途中で合わさって威力が上がり、真っ直ぐオリバーへ向かう。


 なるほど、この三人の中ではオリバーが最も魔法に長けている。だから、ダニエルとセバスチャンは協力して、先にオリバーを倒すことにしたのか。


「何? こいつら……。【氷弾(アイス・ショット)】」


 オリバーの魔法は、協力魔法にあえなく弾かれ、そのまま吹っ飛ばされた。


「オリバー、敗北!」


 学園長がオリバーの敗北を宣言する。火傷を負ったオリバーは、二人を睨みながら治癒クラスに連れられ、闘技場を後にした。


 残った二人は、互いに見つめ合う。その時。


「ぼ、僕は負けを認めます」


 ダニエルが唐突に負けを宣言した。会場中がどよめきに包まれる。


「なぜだ?」


 セバスチャンは問う。


「僕の力では、セバスチャンには勝てないよ。オリバーに勝てたのだって、キミの協力のおかげさ」

「本当に負けを認めるんだな?」


 学園長が念を押す。


「はい」


 これで、ダニエルの負けが決まった。第一試合は、なんともあっけなくセバスチャンの勝利で幕を閉じた。


 試合後も、ダニエルとセバスチャンは口喧嘩をしていたが、その内容まではあたしには聞こえなかった。


「次、第二試合を始める」


 学園長の試合開始宣言に、エルフ姉妹は慌てて準備する。


「全力で闘ってくるのです!」


 アリスは手を振りながら闘技場へ向かった。リンもその後を着いて行く。


 そういえば、今までリンの声を聞いたことがない。行動を見る限り人見知りらしく、いつもアリスの後に着いていた。



 エルフ姉妹とは、一年生の頃から仲が良かった。あたしが最初に話しかけたのは、エルフに興味があったからだ。エルフと言えば、希少な種族で有名だ。その力は治癒の場面で発揮されるのだが、エルフ姉妹は冒険者クラスに配属された。


 その理由を聞くと、一族を探すために冒険者になる必要があったからだと言う。エルフ姉妹は幼い頃、一族からはぐれて以来、一般の魔族に拾われ育てられた。しかし、次第に一族の元へ帰りたくなり、他国への入国が自由となる冒険者になることを選んだのだ。


 二人の魔法の腕はそこそこだった。しかし、この一年どんな修行をしたのか。エルフは一体どんな闘い方をするのか。あたしは少し興味があった。



「それでは第二試合、開始!」


 学園長の言葉と同時に、アリスが詠唱する。


「リン、悪いけどワタシが勝つです。【氷の足止め(アイス・ロック)】」


 すると、リンの足元が凍りつき、動きを止めた。


「これでリンは動けないのです。アイス・ショ……」


 アリスが攻撃魔法を詠唱しようとしたその時。


「……姉さん、ワタシのこと分かってない」


 リンが喋った。どことなく覇気の無い低い声だった。


「……【火炎(フレイム)】」


 リンは炎魔法で、足元の氷を溶かす。


「分かってないってどういうことです?」


 怪訝な顔をするアリスに、リンは答える。


「……姉さん、今までワタシのこと見てくれなかった」

「見てたです。リンは頑張っていたです。でも、ワタシには敵わないです」

「……そう思うなら、全力で来るといい」

「言われなくてもそうするです。【火炎放射(フレイム・バースト)】」

「……【風の反射(ウィンディ・バウンド)】」


 リンは、アリスの炎を弾く。弾かれた炎は観客席へ向かって飛んでいった。ドーンという大きな音とともに観客の悲鳴が聞こえる。しかし、観客は無傷だった。闘技場には結界が張られていて、観客に被害が出ないようにされているのだ。


「ワ……ワタシの炎が弾かれたです!?」

「……次で決める」


 リンはそう言うと、アリスに向かって走り出す。


「……【火球(ファイアボール)】」


 爆音とともに、砂煙が舞う。攻撃が決まった。誰もがそう思ったが、リンの攻撃は氷の壁に防がれた。


「魔法を防いだです。これで終わりです」


 アリスは、目の前にまで迫って来ているリンに魔法を繰り出そうとする。


「……だから姉さん、ワタシを見てない」


 リンが呟いたその時。壁が張られていないアリスの背後から、ファイアボールが襲ってきた。


「な……なぜです?」


 アリスは為す術もなく、無防備の背後からファイアボールをまともに食らった。リンは、ファイアボールを二つ打っていて、一つを囮に、一つを誘導してアリスの背後から攻撃したのだった。


 この攻撃は想定外だったのか、それともリンを舐めていたことを反省しているのか、アリスは倒れたまま、意気消沈していた。アリスは、蚊の鳴くような声で宣言する。


「ワタシの負けなのです」


 こうして第二試合は終了した。


 もうすぐ、第三試合が始まる。

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