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1、

連載小説登録ですが、短編にする予定です。

こちらも申し訳ない事に亀更新予定です。


「酷いわ、お姉様っ···いつもそうやって私に意地悪して···私の事を虐めてっ!私の言いたい事を何でいつも聞いてくださらないの!?」



(はぁ···出た出た、いつもの癇癪。意地悪でもないし、人の言う事を聞かないのはどっちよ)




「ねぇレオナ、この茶番劇はいつまで続く?」


「っ!·····アーロン···陛下」




優しく響く低音ボイスに、皆が帝王陛下の発言に息を飲むのがわかった。


ランドルフ城にてデビュタントの儀を行うべく、貴族が大勢集まり静まり返る大広間でウルウルと瞳を潤わせ恰も自身が、か弱い被害者の様な口振りでいい放つ、容姿はお人形の様な可愛い見た目の少女と、黒髪ストレートにゴールドの瞳の一段と目を引く少女が、帝王主催で新成人を祝うデビュタントの場に人目を引く形で大声を出し対峙していた。



黒髪でゴールドの瞳を持つ少女、レオナ·アッシュフォードは帝国に忠誠を近い、帝王陛下直属の近衛部隊隊長アッシュフォード侯爵家の長女、対峙している赤茶色の髪にグリーンの瞳を持つ少女キャロル·アッシュフォードは、アッシュフォード侯爵家に後妻として事実婚関係の奥方が連れてきた子。


アッシュフォード侯爵家に住む様にする為に同じ姓を名乗っているが、戸籍上はアッシュフォード家には入ってはいない。


レオナとキャロルは血は全く繋がっていないが義姉妹になる。



デビュタントを控えた16歳の子息令嬢は帝王陛下の座る玉座を前に序列毎に各自決まった位置に並び、名前を呼ばれるまで最敬礼の姿勢を保ち、名を呼ばれた者から顔を上げなければならない。

これは、どの序列貴族であろうが幼少時より親や家庭教師から言われており、デビュタント自体も一生に一度しかないので、自身の家名を背負い責任を持ち人生を歩むという意思表示も兼ねている為、皆が出来ることであった。

貴族社会のマナーとして、下位の者からの発言はマナー違反とされている。

ましてや帝王陛下に貴族側から発言するという行為自体もタブー。




それなのに····─────






─────·····




「ランドルフ帝王陛下にご挨拶申し上げます。アッシュフォード侯爵家が次女キャロル·アッシュフォードと申します。ランドルフ帝王陛下のご尊顔を拝見する事ができ、とても嬉しく感激にございます!!」


「·······はぁ···」


これでもか!という様にとてもキラキラした瞳をし、上目遣いで帝王陛下と目線を合わせようとしているのが、遠くから見ても解るほどである。

が、その目線の先に居る帝王陛下は全く興味が無いと云わんばかりに溜め息をつき、目線を近衛部隊隊長のアッシュフォード侯爵に向けている。




キャロル自身も今日デビュタントで参加しているのだが、在らんことに眉目秀麗、文武両道向かうとこ敵無しという絶対的存在として名を持つランドルフ帝国の帝王アーロン·ゼファ·ランドルフ陛下を目の前にして、いつもの我が儘で自己中心的な行動が出てしまい、この大広間にいる全員の注目を浴びてしまっていた。


ランドルフ帝国の貴族序列的に侯爵家は最初の方に名を呼ばれはするが、呼ばれない限り顔を上げる事はタブーであり、最も恥じるべき失態に当たる。


しかも、父はアーロン陛下の近衛部隊隊長。


その家の娘がデビュタントという場で恥ずべき行動を起こすという慚愧にたえない現場を作ったにも関わらず、当の本人は自分の欲の為に動いた行動を恥じと感じていない。


その現場に居合わせる他の貴族は何事かとざわつき、どこの娘だというのが自分から名を発言している為直ぐに知れ渡ってしまう。


父親であるアッシュフォード侯爵家当主であり近衛部隊隊長のリチャード·アッシュフォードは怒りを露にしわなわなと拳を握り、即時行動に起こさんと陛下の傍らに控えている。




保護者である者達が控える場所で、騒ぎの中心人物であるキャロルの母親アイリッシュ·アッシュフォード夫人は娘の行動に心踊らせる様な表情を浮かべ見ていた。


普通の貴婦人であればこの様な現場に居合わせれば一目散に逃げてしまうだろう。


その義母を横目に見ていたレオナは溜め息をつきつつ、キャロルの母親である自身から行動を慎む様にと懇願する。




「お義母様、キャロルを止めて下さいませ。これではアッシュフォード家の名に傷が付きます。それにキャロル自身に対しても良くないかと」


「レオナはまたそんなことを言って、キャロルが注目を浴びるのがそんなに気に入らないの?貴方の可愛い妹ではないの。陛下からも注目されたなら将来の王妃候補として名が挙がるかもしれないじゃない。可愛い妹に対して醜い嫉妬は淑女としてあるまじき事よ!」



(何を言っているんだ、この人は。あの子がああいう行動を起こすのも、この親の影響が非常に大きいわ。本当に頭が痛くなる)




レオナは義母にキャロルへ行動を慎む様お願いするが、義妹を溺愛している母親はキャロルが帝王の御目がねに叶うことを信じて止まない、お花畑な思考の持ち主であり、王妃候補へ一番につくいい機会だと勘違いし、レオナに対しては寧ろレオナが起こそうとしている行動を慎む様いい放つ。


義母に頼むより自分が場を静めた方が良いと判断し、無礼を承知でデビュタントの為に配置についてる子息令嬢の間を掻い潜りキャロルの側へ近寄り、場を納めようと話し掛ける。



「キャロルやめなさい。陛下に対し無礼だわ。しかもデビュタントの進行を妨げている。あなたも頭を垂れ、規律を守りなさい」

「嫌よ、お姉様!陛下にお目にかかるなんて私を知ってもらうまたとない機会よ。しかも今目の前にいらっしゃるのに···」

「何を言ってるの、皆をご覧なさい。貴方だけよ、名を呼ばれる以前に自分から発言しているのは。小さい子でも解りきってる事を貴方は成人の儀であるデビュタントで恥じるべき行動を起こしてるのよ」

「そんなこと無いわ!私は陛下に直接お会いする運命だったのよ···それに眉目秀麗で完璧なまでに綺麗なお顔、まさに物語の中にいる王子様のよう」



うっとりとした表情で言うが、内容は侮辱していると捉えられても可笑しくない内容である。


(陛下に対して王子様って、表現が幼稚にも程があるし、失礼極まりないわ。それに周りの子息令嬢がその発言に対して青ざめている。この子をどうにかしないと折角のデビュタントが台無しになってしまう)




「いい加減になさい!陛下に対し何と無礼な。身の程を弁えなさい。貴方は今日皆と同じく一成人として儀式を迎えるのですよ。なのにこの様な失態を···」


「酷いわっ、お姉様っ!·····




そして冒頭に戻るのだ。


「申し訳ございません、陛下。この様な神聖な儀式でありますデビュタントの日に、我が家の者が無礼を働きました」

「お姉様!私は何も悪くないわ!陛下にお会いするのは当たり前なのよ!運命なのよ!私は陛下に見初めてもらう為に今日のデビュタントを迎えたんだわ!」

「やめなさい、キャロル。今日は皆が記念すべき日であるのよ。貴方だけの特別な日では無いの、解りなさい」

「嫌よ!陛下、私一目で貴方様が運命の方だと···」








「クスッ···レオナのそんな表情が見れるなんて今日はついてるね」




レオナ自身キャロルを静めようと語尾が強くなり意識がそちらに行ってた為に、陛下が玉座から降りてくるのに気付かなかった。

音もなくいつの間に近くに来たのか陛下がレオナの直ぐ側に立っていた。

周りでは陛下が玉座から立ち上がると同時に貴族全員頭を垂れ、最敬礼している。



(流石というべきなんだろうけど、アーロン陛下はいつも静かに近付くからビックリするわ)




「皆も面を上げよ。この様なアクシデントでデビュタントの儀の進行が遅れた事を遺憾に思うが、注目しているこの場を借りて皆に言っておく。デビュタントの儀終了後の夜会にて皆に伝える予定だったが、丁度良い。長い間空席だった王妃の座にこちらに居るアッシュフォード家長女レオナ·アッシュフォード令嬢を妃と迎える事をここに宣言する!」


陛下からの号令と共に会場にいる者全てが顔を上げるが、今の今まで騒いでいた内容とは打ってかわっての陛下からの爆弾発言に貴族一同動揺を隠しきれず、悲鳴と共に妃候補にと名を連ねていた複数の令嬢がバタバタと倒れるのが傍目に確認出来る。




───···そう、これは必然か。


それとも運命なのか。


歴代の帝王はどうだったかわからないが、今まで生きてきてずっと感じていた違和感。

心が枯渇していた様な何か足りない感じがあった。

でもレオナと出会い、心が満たされる様なバラバラだったパズルのピースが全て揃ったかの様な感覚が自分の体に起こった。

ランドルフ帝国帝王アーロン·ゼファ·ランドルフはアッシュフォード家長女レオナと初めて出会った時に自分の中に足りたかった物がストンっと満たされる様な感じがした。

お読み頂きありがとうございます。

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