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属性ステラの謎


「うーん…。」

「どうした?」

「んー。ステラ塔に、在籍していた学生を、過去500年前から調べていたのだけれど。」


 書類から目をあげて、フィロスと目を合わせる。

ここは魔術庁長官室。その部屋の主はフィロスだ。


「ああ、ステラは、どうやったら生まれるか、ハッカレー学院長が気にしていたな。遺伝するか?とか。」

「ええ。500年の間に、ステラ塔に選ばれた生徒はわずかに5人しかいないの。」

「意外と、少ないな?」

「3人はわかるわよね?あなた、私、私の父。残りの2人だけれど、1人があなたのご先祖。ブレイブ・スナイドレー。もう1人が、アグリ・クルトレー。この5人に、何か共通点がないかどうかを調べていたのだけれど。」

「何か、あったのか?」

「ブレイブ・スナイドレーと、アグリ・クルトレーは、2人とも両親が10歳未満で亡くなっているの。私もだけれど。」

「それが、何か?両親が幼いころに亡くなっている学生は、もっとたくさんいると思うが?」


 目を軽くつぶり、額をとんとんと、指で叩く。


「仮説なんだけれど。全員、学院に入学する前に、ドラコ王の4宝具、クリスタルネックレスを譲られていないかしら?」

「何?」


「えっと、あなたは、8歳で譲られたのよね?わたくしも5歳。わたくしの父は生まれた時から持っていたと、母に聞いたわ。で、ブレイブ・スナイドレーも、あなたから教えてもらった話では、スナイドレー公爵を継ぐ者がネックレスを受け継ぐのだから、両親が10歳になる前に亡くなった以上、学院入学前に譲られた可能性が高い。」


 フィロスの目が大きく見開かれる。


「アグリ・クルトレーについては、彼女の履歴から、薬草室のクリスタルネックレスを持っていた可能性が高いの。彼女はあなたもご存じのように、この国きっての薬草研究者として名を残しているわよね?

その彼女だけれど、学生時代から園芸魔術だけは6年間主席を通し、卒業時の研究テーマが失われた薬草の復活について、なのよ。論文を読んだけれど、薬草室が無ければ、研究できなかったのでは?と思うような内容だったわ。仮に、学院の森から貴重な薬草を集めたとしても、それだけではここまで書けない気がする。…アグリについては、証拠が無いので、あくまで推察なのだけれど。」


 フィロスが、考え込む。


「魔術師は長命なので、通常、ネックレスが譲られるとしたら、家督を継いだ時だろう。としたら、普通は、成人してから譲られるはず。学院入学前にネックレスを譲るケースは、非常に稀。…私の先祖を全員、洗って、ブレイブ・スナイドレー以外に、公爵家当主が早逝した先祖が居るかどうか調べればいいのかもしれないが、人数が多すぎて、そこまでする気にはなれんな。」


「そうね、そうかも。…そういえば、フィロスのおじい様って亡くなられたとき、何歳だったの?」

「284歳だったかな?祖父は、40歳くらいで結婚して、100歳くらいで、初めての子供を授かっている。その時の子が跡継になるはずだったけれど、その跡継が魔獣討伐で命を落とした。それで、スナイドレーを継ぐ者がいなくなったので、やむなく、晩年になってまた子供を作って生まれたのが私の父だ。だが、魔力が無かったので、もう一度、子供を作っている。それが、亡くなった叔父だ。」


 絶句する。そうか、魔術師は、もともと、寿命が300年くらいあるから、子供ができる年齢も高くておかしくはない。

 魔術庁長官室でいろいろな書類を見ていて気が付いたけれど、魔術師は意外と子供が生まれにくい。生まれても、数が少なく、ひとりっ子が多かったりする。

何人か子供を授かっても、魔力を持つ子供が1人しかいない、というのも珍しくない。

 最近、受理した出生届の中での両親の最高齢は父が305歳で、母が282歳だった。年齢を見、間違いではないかとびっくりして、戸籍の原票を確認してしまったけれど、正しかった。魔術師は男女ともに、死ぬまで子供を作る能力を持つと聞く。


 私達は結婚して3年以上経っているけれど、まだ子宝に恵まれていない。100歳とか200歳とかにならないと、授からないのかしら?というのが、もっぱらの悩みである。


 フィロスの声に、思考が中断する。


「私達に子供が生まれた時、学院入学前に、ネックレスを譲ってみれば、仮説の証明ができるか?」

「それも、無理かと思うわ。忘れた?わたくし達のどちらかが死なないと、他の人に譲れないのよ。」

「うっ。そうだった。」

「遺伝ではないという仮説は証明できるかもしれないけれど。わたくし達、2人ともステラだったのに、生まれてきた子がステラでは無かったら。」

「ああ、なるほど。確かに。」


 私は頬杖をついて、考える。

「4宝具の謎、ね…。また、あちらに行ったら、教えてもらえるかしら…。」


 フィロスに、ものすごい勢いで、睨まれる。


「ソフィア!あの魔術陣を使うことは禁止したはずだ!使おうとするなら、今度こそ、君を、軟禁するぞ?」


 思いっきり、首を横に振る。フィロスを怒らせたら、本気でやりかねない。





短編は、いったんここまで。

4/2土曜日に、ソフィアの学院卒業後の物語の連載を始めます。

もしよろしかったら、応援お願いいたします。

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