ようこそ笑顔神社へ(72)テセウスの船・後編
これは空想の神社です。
創建は、令和三年十二月三十日。
主祭神は、亀乃長命です。
自分のことを、亀さんと呼びます。
この神社の御利益は、笑顔です。
たくさんの人に参拝してもらえたら嬉しいです。
※笑顔神社の造り方は、第1話から書いています。
※たまに友人の鶴乃長命も登場します。
自分のことを、鶴さんと呼びます。
BARのカウンターで、〈Chaka Khan の Through The Fire〉を聴きながら、スパイシートマトジュースを飲んでいると、鶴乃長命さんが現れました。
そして、突然、こう言いました。
【人の細胞が完全に入れ替わるのは、だいたい7年くらいとされています。ということは、7年後の亀さんは、今の亀さんと同じですか?】
「7年で入れ替わるんですね!」
亀さんは、目から鱗が落ちました。
そういえば、亀さんは、つい先程、このようなややこしいことについて考えていたことが原因で針をどこかに失くしてしまったのです。
ちなみにこれは、テセウスの船と同じ内容だと思いました。
とりあえず、スパイシートマトジュースがなくなったのでおかわりしました。
一口飲んだとき、一杯目と同じ味がしました。
それは当然のことです。
なぜなら、スパイシートマトジュースはいつも同じ味だからです。
ということは、
この味が変わったなぁと思ったときは、今の亀さんが変化したということになります。
ということは、
「7年後、ジュースの味が変わったと思ったら、同じではありません!」
勢いよく言うと鶴さんは目を丸くしました。
ということは、テセウスの船の場合はどうだろうか?
しかし船は人と違って物だから難しいです。
どう考えても、この問題は解けません。
降参です。
けれども亀さんはこの問題からあることを学びました。
それは、
〈世の中には、解けない問題がある〉
ということです。
そのことが分かっただけでもよしとして、このお話は忘れましょう。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
BARを出て、最近、開発中の〈笑顔になれる呪文〉を口ずさみながら帰宅しました。
なんとなく針を探すと、棚の引き出しの中にきちんとありました。
ようこそお参りくださいました。




