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笑顔神社  作者: 亀乃長命
154/288

ようこそ笑顔神社へ(154)飼育係と森のクマさん

今日の予報は、

〈家事 時々 座る〉

亀さんは、朝起きて笑顔神社に手を合わせて顔を洗ってコーヒーを淹れてロールパンを左手に持つところまではだいたい無意識に行なっています。


このようなことは皆さんも一日の中で何度かあると思います。


毎日の繰り返しの動作というのはそんなものです。


たまに考え事をしていたりすると、失敗してしまうこともあります。


ぼんやりしていると、「あれ?次は何だっけ?」と意識が抜け落ちることもあります。

手順を飛ばしていることもあります。

これも皆さんは、経験があると思います。


〜・〜・〜・〜・〜


先日、動物園でヒグマの飼育係を、ヒグマの飼育係になったつもりで見ていました。


その飼育係は、体長2メートルくらいある大きなヒグマを、頑丈な檻に移動させて鍵を閉め、餌を食べさせている間に、先ほどまでヒグマがいた岩場のある観覧エリアに別の扉から入っていって掃除をして、そして再び戻ってきて……、というような動作を行なっていました。


その動作はとても手慣れたものでした。

恐らくその手順をこれまで、まるで同じ線を何度も何度もなぞるように行なってきたのでしょう。


そのとき亀さんは、あることを想像してゾッとしました。


それは、亀さんが毎朝、ロールパンを左手に持つところまでは考えなくてもできるような、そういう感覚でヒグマの餌やり、観覧コーナーの掃除をしていたら……、ということです。


そして、いくら確認していても意識の抜け落ちはあります。

手順を飛ばしてしまうこともあります。


〈檻の扉を閉めたつもりが〉

〈鍵を閉めたつもりが〉

〈ヒグマを移動させたつもりが〉


ちなみにですが、躁鬱が激しくて、気がつくと意識が違うところにいってしまう亀さんにはこの仕事はできないと思いました。


ヒグマを移動させたつもりで掃除をしていたら真横にいたり、ということもありえます。


そのとき頭の中で、森のクマさんの曲が流れました。


「ある日、森の中、クマさんに出会った……♫」


なんだか楽しそうな曲ですけれど、森の中でクマさんに出会ったら、亀さんならその時点で絶望感しかありません。


軽快な足取りで、スタコラサッサとはなりません。


ヒグマの飼育係は、すごい仕事です。

しかもその直前に、リクガメの飼育係のほのぼのとした姿を見ているだけに、そのギャップに眩暈がしそうになりました。


〜・〜・〜・〜・〜


動物園に行くと、ときどき聞こえてくる定番の会話があります。


「安全な檻の中できちんとご飯を食べていける暮らしと、野生の中で命を狙われるけれども自由な暮らし、どちらが幸せなんでしょう?」

ようこそお参りくださいました。

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