「あくまをころすぶきをあげましょう」
「ねえ、ネーヴェ。全部終わったらぼくは死ぬのがいいよね」
ジェーロはむじゃきな声でネーヴェへ言いました。悪者が死んでめでたしめでたしになるお話をジェーロはたくさん知っていました。だから自分が最後に死んだらきっとめでたしめでたしになるだろうと思ったのです。
「私は死ななくてもいいと思うわ」
ネーヴェは祈るようにジェーロへ言いました。ネーヴェにとって一番大事なのはジェーロでした。だからジェーロが居なくなるなんて考えたくなかったのです。
「でも悪者は死なないと」
悪魔と人はなかよくできないのをジェーロは気づいていました。ジェーロは自分が死んでもめでたしめでたしになるなら別にかまわなかったのです。間の子の自分が誰かのためになれるなら、ジェーロは自分の命なんて簡単に捨ててしまえたのです。
「何か死ななくてもいい方法があるかもしれないじゃない」
ネーヴェは必死な声でジェーロに言いました。ネーヴェにとっての幸いはジェーロが居ること。だからジェーロがいない世界を見たくなかったのです。
「ぼくが死んで天に上らないとみんな安心できないよ」
ジェーロは優しい声でネーヴェに言い聞かせます。死んだふりが難しいのをジェーロはよく知っていました。身体が焼けて天に上るまではみんな安心できないのをわかっていたのです。だから嘘っこはダメだとジェーロは言うのです。
「うん。そんなの知っているよ」
それでもネーヴェはジェーロに生きていてほしかったのです。世界の誰よりもジェーロに生きていてほしかったのです。
残酷で優しい願いを言いました。
残酷で哀しい願いを言われました。