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あるときてんしがでてきていいました

「ねえ、ネーヴェ。これでうまくできるかな?」

 ジェーロは絵本にあった悪魔の姿をまねして言いました。大きな角をつけて、三叉(みつまた)の槍を持ったジェーロは絵本の悪魔とおんなじ姿をしていました。

「そうね、ジェーロ。きっとうまくいくと思うわ」

 その姿を見た人がきっとジェーロを悪魔と言って恐れるだろうとネーヴェはわかっていました。たくさん悪口を言われてジェーロが傷つくだろうとネーヴェはわかっていました。けれどジェーロを止めることができないのもネーヴェはわかっていました。

「でもどうしよう。ぼくがずっと怖いままでいいんだろうか」

 ジェーロはそれが不安でした。自分が一番怖くなって戦争が止まっても、それが少しの間だけになるかもしれないのが心配でした。少しずつ怖いのに慣れてしまうから、ずっと一番怖くいるのは難しいことを知っていました。

「じゃあ私が人を導くよ」

 ネーヴェはジェーロががんばったことがむだになるのが嫌でした。だから自分が絵本の天使になることに決めました。

「ネーヴェは何をするの?」

 ジェーロは天使を知りませんでした。絵本の悪魔を知らなかったのとおんなじように絵本の天使がいるのを知りませんでした。

「私は天使になるの。人は天使の言うことをよく聞いてくれるのよ。だから悪魔のジェーロが怖がらせたあとに戦わないでって私が言うの」

 ネーヴェは天使が神の使いとされているのを知っていました。だから悪魔が出たのは戦争のせいだと言えばきっと戦争が止まるだろうと知っていました。人間にとって神様はとても大事なのです。だからその使いである天使の言うことを聞いてくれる人間が多いのを知っていました。

「そうすれば戦争はなくなるかな?」

 ジェーロはむじゃきに聞きました。人がよい人ばかりだと信じている、とてもきれいな瞳で聞きました。

「きっとなくなってくれるよ」

 ネーヴェは優しく答えました。ネーヴェは人がよい人ばかりではないのを知ってはいたけれど、そんな人は全部なくしてしまえばいいと思っていました。



 それはむじゃきな願いでした。

 それはおろかな祈りでした。

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