あるところにいっぴきのあくまがいました
「ねえ、ネーヴェ。ネーヴェはどうしてそんなにきれいなの?」
まっ黒なジェーロはまっ白なネーヴェに尋ねます。羽も髪も肌も服もまっ黒なジェーロは、羽も髪も肌も服もまっ白なネーヴェがとてもきらきらしてきれいで大好きでした。
「私はジェーロの方がきれいだと思うな」
まっ白なネーヴェはまっ黒なジェーロに返します。 羽も髪も肌も服もまっ白なネーヴェは、羽も髪も肌も服もまっ黒なジェーロがとても落ち着く色できれいで大好きでした。
「もう、答えになってないよ」
ぷくりと頬を膨らませてジェーロはネーヴェに怒ります。まっ黒の中で一つだけあるまっ赤な瞳がじいとネーヴェを見つめています。
「ふふ、ごめん。でも私はきれいで優しいジェーロが大好きよ」
くすくすと笑いながらネーヴェはジェーロを抱きしめます。まっ白の中で一つだけあるまっ青な瞳が優しくジェーロを見つめています。
「ぼくもネーヴェが大好き!ね、ぼくらずっと一緒に居られるかな?」
「うん。きっとずっと一緒に居られるよ。だって私達お互いが大好きなんだもの」
悪魔と人との間の子なジェーロと天使と人との間の子なネーヴェはずっとふたりぼっちでした。間の子の変わった姿を受け入れてくれる者は少なく、ジェーロとネーヴェはいつも二人で寄り添って生きてきました。悪魔だったジェーロの父と天使だったネーヴェの母は天界から追い出されてしまったので、ジェーロとネーヴェはその姿も知りません。ジェーロとネーヴェに居るのはお互いだけでした。
ずっと幸せだったのです。
たったそれだけがあれば幸せだったのです。