真なるダンジョンに憧れて
高熱が出た訳では無い。その日が誕生日であった訳でもなかったがある時、少年は。
『あ、これ、ファンタジー世界に転生してるな』
そう悟った。
だが前世があったとはいえ、少年の生活が変わる事は無かった。朝起きて井戸から水を汲み、母が作った朝ごはんを食べる。
そんな少年、イアンが転生したと気づいてから数年、イアンが7歳になった時にとある事件が起こった。
いや、元から『それ』がある可能性は考えていたのだ。
母親の青髪、父親の銀色の髪、父親が毎日振っている大剣。だが、決定的になったのは自分が村の中で友達と走り回っていた時に転んで手のひらを擦りむいた時。それを母に見せると母は不思議な球体を持ってきて僕が着けてきた傷の上に翳し、何かを唱えた。
すると、その球体から雫が垂れ、僕の傷口に当たると傷がみるみるうちに治っていったのだ!
何が言いたいかと言うと、僕の怪我を『魔法を使って』治した、という事だ!僕は母に聞いた。
「今のって何!?」
「ん?今のは『回復の泉』、っていう物でね?これを使うとさっきみたいに傷が治るんだよ。まあだけどこのくらいのイミテーションコアじゃ、小さい怪我しか治せないんだけどね」
最後の方はボソボソ話していたのであまり聞こえなかったが僕の耳は『イミテーションコア』という単語はしっかり聞き取っていた。
「ねえねえ、その『いみてーしょんこあ』?っていうのを使うと魔法が使えるの?」
「え?ええ、そうよ?でも使えるのは大きさとか、色んな事が大事になるから、さっき使った『回復の泉』一つでも効果が強かったり弱かったり、後はそうねぇ、込められる魔法の数も変わるのよ?」
ほうほう、成程!つまりは、だ。そこら辺に落ちているような石ころサイズのコアでは出来ることは小さく、そして少ないが、例えば最高に大きいサイズ、かつ、最高品質の物であればもっと凄い魔法、例えば隕石を降らせる、なんて事も可能だと言う事だろう。多分。
「ま、今のイアンにはちょっと難しい事言ったかな?またイアンが大きくなったら話してあげるね?」
そう言ってイアンの母は夕ご飯を作る為に台所へ向かっていった。
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そして魔法がある事を知った年から数年、イアンは15歳になっていた。
未だに昔、母が使っていた魔法に対する憧れが色濃く残っていたイアンはイミテーションコアが取れるという都市に行く条件として出された剣の修練を父から学んだ。
僕が選んだ武器は父と同じく大剣。そして大剣の扱いを学びながら母から貸してもらった『イミテーションコア』で魔法を使う感覚を養った。
「ふむ、これだけ剣を振れるのなら、まあ魔獣に撃退くらいは出来るだろう。だが、しっかり剣の訓練は続けておけよ」
「ほんとに、お父さん!?じゃあ旅に出てもいい?」
「ああ、だがゆっくりでいいが仲間は見つけていけよ。仲間ってのは時にピンチを切り抜ける原動力にもなるからな!」
そうして旅の許可を貰ったイアンは村の皆に別れの挨拶をした後、意気揚々とイミテーションコアが取れるという迷宮都市、『ダイダロス』へと向かった。
イアンは迷宮都市『ダイダロス』に向かう途中、食料確保の為によった街で、同じダイダロスに向かう、師匠から貰ったと言う小さなコアを持った攻撃魔法を使うシアと、体全体を覆う盾だけを持った、タンクを担うオルバを仲間に引き入れた。
そして、オルバを仲間に引き入れてから2週間が経った時、オルバがある噂を話してくれた。
「知ってるか?イアン。迷宮都市『ダイダロス』にはな、とある噂があんだよ。曰く、大迷宮ダイダロスの最奥には秘宝を守るガーディアンがいる。そしてガーディアンを倒した物は秘宝、つまり今シアが持ってる『イミテーション』じゃあない、本物の『ダンジョンコア』が手に入るんだってよ」
「へえ、じゃあその、『イミテーションコア』と最深部にある『ダンジョンコア』って何が違うの?」
「さあな、何せたどり着いたやつがいねぇんだと、だから何ができるかはわかんねぇ。ただ噂によるとそれ一つあるだけで世界を滅ぼす力を得る、だとか自分が想像できる範囲で何もかもが叶うだとかそんな眉唾みたいな話がいっぱいあるぜ」
「そうそう、ちなみに私はオルバの言ってる本物の『ダンジョンコア』を手に入れて世界最高の魔術師になるのが夢、って訳!」
成程、今まで単純にコアを手に入れて魔法を使うってことだけを考えてここまで来たけど、そうか迷宮にはそんなのがあるんだな。
そう考えるとダンジョンを攻略するのもなかなか楽しくなりそうだ。
イアンは胸に夢と希望をいっぱいに入れ、今、『迷宮都市ダイダロス』へと入った。