7話 家族との決別
地下道にて人売りとの戦いになった後、私は交渉相手の用心棒「ハルバート」に敗北した。
「殺せ」と命じられたハルバートだったが、
私を殺さずに「白髪の少女」がコロセウムの優勝商品になると言う事まで教えてくれた。
しかし、コロセウムで優勝など不可能だ…。
四苦八苦する心に蓋をして、オールドメレーから自分が住んでいる村へ行く馬車に乗り込んだのだった。
7話 家族との決別
古い馬車がガラゴロと、整備されていない土の道を踏み鳴らしている。嫌になるほど太陽は眩しくて、私の心をジリジリと焼いていた。
「あの子は、これからどうなるんだろうか…」
檻の中に入れられていた、名も知らぬ白髪の少女。
コロセウムの優勝商品ということから、もはや人としては扱われていなかった。このままではきっと貴族の奴隷になり、私では考えられないほど酷い生活を送るのだろう。
「私だけ逃げるのか」
ハルバートによって助けられたこの命。
正しい冒険者なら迷わず少女を助けに行くのだろう。
だが…私は今になって自分の命が惜しくなってしまった。愛する家族に、会いたくなってしまった。
「ごめんよ…」
私の吐いた小さな謝罪は、馬車の足跡に掻き消されたのだった。
「着きましたよ〜、ミサド村に到着です〜」
馬車使いの声を聞いて、村に着いたのだと自覚する。
私は馬車から飛び降りて、馬車使いに代金を渡した。
「ありがとう」
私がそう話すと
「何か辛いことがあったんでしょうが、家族と会えば気が晴れますよ」
私の様子を見てそう言ってくれた。
私はそこから少し歩いて、自分の家へと帰った。
「アウルさーん、おかえりなさーい」
「アウルさん早いっすね〜復興のお金貯まりましたかー?」
「アウルさんお疲れ様ー!」
村の人々が私の帰還を知って、声をかけてくれた。
そこに…
「この意気地なし!!」
私の妻が現れたのだった。
「復興のために冒険者になるって聞いた時は、驚いたがやっぱり直ぐ帰ってきたね!」
「ば、ばぁさん。すまな…」
「意気地なしの声なんて聞きたく無いね!さっさとこの村を出ていきな!」
「これでも喰らえ!!」
そう言ったかと思うと、妻が袋を私に向かって投げてきた。
袋を開けてみると、黒のコートと「離婚届」と書かれた紙が入っていた。
「お前とは離婚だ!どこでも好きなとこほっつき歩いとけ!」
突然渡された離婚届。
頭の整理がつかないまま、ばぁさんは自分の家へと戻っていった。
「父さ〜ん、おかえり〜」
「おぉ、お前か。一体これはどういうことじゃ?」
「それはね〜」
息子の話によると。
妻は、私が何かにつまづいて村へと帰ってくると分かっていたらしい。
その時のために、家族との縁を切る離婚届、私がどこへ行っても怪我をしない様にと丈夫なコートを用意していたと言うのだ。
「父さんはこれまで十分すぎるほど私達に尽くしてくれたから、人生の最後くらい、私達の事なんか気にせずに旅を楽しんでほしいのさ」
妻はそんな事を言っていたという。
「さて父さん。僕たち家族じゃなくなっちゃったね〜。これからどうするの?」
息子がそんな事を聞いてきた。
「フッフッフ、ばぁさんには敵わないなぁ…」
「ばぁさんに伝えといてくれ『ありがとう』ってな」
喝を入れられた私は
「は〜い!」
袋を握りしめ、決意する。
「つまづいた時に落としたもんを、拾ってくる!!」
必ずコロセウムを優勝し、あの少女を助けようと!




