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6話 敗北

私はアウル・シガレット。最近になって冒険を始めた年老いた冒険者だ。

チェックインした宿で「人売り」の計画を聞いた私は、悩んだ末に「人売り」の取引場所へと向かう。

戦闘が始まり、2人の下っぱを倒したまでは良かったが、リーダーの罠にハマり絶体絶命のピンチを迎えていた。


「喰らえええ!!!」


敵の詠唱が完了し、必ず相手を死に至らしめる魔法が放たれる。

それとほぼ同時に、私は「Black Penguin」最後の一発を放ったのだった。






足音一つしない静かな時間は、戦いに幕が閉じた事を顕していた。


ドサッ!!


「ふっ…見事だ」


そう言いながら、リーダーは前のめりに倒れ、

私は小さくガッツポーズをして、勝利を喜んだ。


それから私は「人売り」が言っていた「銀髪の少女」を探す事にした。

地下道を探索していると


「ここですかな」


私は錆びた柵が並ぶ牢屋のような場所を見つけた。

その奥には銀色の髪の毛が見えている。


「もう安心じゃ、助けに来たぞ」


私が声をかけると、少女はビクッと体を揺らしこちらを振り向いた。

白髪の髪に薄い青色の瞳をした少女は、私のほうに近づいて


「貴方は…誰?」


と話した。


「私はアウル・シガレット。年老いた冒険者じゃよ」


「アウル…」


「そうそうアウルじゃ。今ここから出してやるからな。もう少しの辛抱じゃぞ」


私は鍵がかかった錆びた扉をどうやって開けようか考えた。

すると少女が先ほどとは打って変わって震え始めた。


「今この扉を開ける方法を考えるからな、安心しなさい」


私の言葉を聞いてか否か、少女の顔はどんどん青ざめ恐怖に支配されていく。


そして少女は私の後ろを指差した。


「やれ、ハルバート」


声が聞こえたその直後、私の意識が途切れたのだった。






「おい、起きろ」


声が聞こえた。


「起きろっつてんだろ!!」


腹部に強烈な痛みが走り、意識が覚醒した。

私は地面に横たわり、縄で縛られていた。

先ほどの痛みは蹴られたものだったのだろう。


「こんな奴らにやられたのかテメェら」


「本当に不甲斐ないです。すいません」


聞いたことのない男の声が、先ほど戦った人売りのリーダーらしき声と話していた。


謎の男が話しかけてきた。


「テメェ、誰の差し金だ?」


黒縁メガネの薄気味悪い顔の男がこちらを覗き込む。

私は声を出そうとしたが、気絶している間に痛ぶられたのか身体が痛んで声が出なかった。

私が声を出せないと分かると


「まぁいいや。適当に殺しとけハルバート」


謎の男はあっけらかんと踵を返し、人売り3人を連れて笑いながら姿を消した。


ハルバートと呼ばれた人物はゆっくりとこちらに近づいてきた。鎧で全身が覆われていて、どんな相手かも分からない。


私は自らの人生を思い出していた。

農家としてこの世界に生を受け、子どもの頃に冒険者への憧れを抱いた。その後は農業をして歳を重ね、ジジイになってようやく冒険者になれたと言うのに。


(ここまでか)


気づいた時には涙が溢れ出ていた。

ハルバートは少し動揺しているようだった。

そして口を開く。


「そんなに、助けたかったの?」


キョトンとした女の声だった。

先ほどの少女の事を言っているのだろう。

私は宿で「人売り」の話を聞いただけで、少女との接点は全くと言っていいほど無い。

だからといって幼い少女が商品として売られる事が正しいとは絶対に思えない。

私は声が出せない代わりに首を縦に振り、頷いた。

その様子を見てハルバートは


「わかった、私は君を殺さない」


と話した。

私は驚いた。ハルバートは続ける。


「あの女の子は一週間後。コロセウムで行われる優勝商品になる。だから」


「勝って」


そう言うと、ハルバートは私に留めを刺さずに人売り

達の元へと走り去っていった。


私は見逃された事に驚きつつも、数時間費やして必死に縄を解いた。

一週間後のコロセウムで優勝。

コロセウムは並の冒険者が優勝できるものではない。

この国の猛者や、各国の腕自慢がひしめく強豪ぞろいの生き残り戦。

もちろん命の保証は無い。

冒険を始めたばかりの私が優勝などあり得ない。

私は、助ける道が見えながらも手が届かない現状を嘆いた。










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