5話 地下道での戦い
私、アウル・シガレットは新米のジジイ冒険者です。
そんな私は、モンスターと初めて戦った帰りに嫌な話を耳にします。
なんでも人を売るんだとか…。
「売るのは明日の朝だ。それまで…勘づかれんじゃねぇぞ」
人売りの言葉が頭をよぎる。
「明日の朝、か…」
私は悩んだ。
今この事を知っているのは、おそらく私だけ。
しかし、こんな老いぼれに何ができるだろうか。
相手は少なくとも3人いる。
ここは知らないふりが一番いいのだろう。
私はそう思い、横になって目を閉じた。
次の日の朝。
「オイオイ爺さん。ここはあんたみてぇな素人が来ていい場所じゃねぇんだ。さっさと引き返しな」
「ふっ、お前らが何をやろうとしているか知っておるぞ。人を道具と勘違いするでない!」
私は、来てしまった。
「奴隷トレード」その現場に。
「へっ、昨日の会話を聞いてやがったか。ジジイを痛ぶる趣味は無いんだが…お前ら」
「殺っちまえ!!」
「もちろんです!」「へへっ!任せてください!」
人売りの下っぱ2人が飛び込んできた。
1人は下から、潜り込むように。
1人は上から、高々と飛び上がって。
私は正直、緊張で足が震えていた。が
「うぉおおおお」
私はリボルバー「Black Penguin」を取り出し、2人の男に麻酔弾を一発ずつ放った。
飛び上がっていた敵には命中。下から来ていた敵には命中しなかったが、私が銃を撃った事に驚いて突進をやめ、リーダーらしき男の元へ戻った。
「あのジジイ…まさかのリボルバー使いかよ」
下っぱのリーダーは、私が眠らせた男を見て
「しかも中々の腕だ」
と呟いた。
「次は俺も走る。仕留めるぞ」
と下っぱに言った。
下っぱが静かに頷き、少しの静寂が訪れた。
下っぱが突進をかます。私は二発打ち込んだ。
だが、すんでの所で避けられる。
残り弾は2。相手も2人。
一発ずつ確実に命中させないと私がリロードする隙にやられるだろう。
私は下っぱを出来るだけ引きつける事にした。
下っぱの足は早く、距離はどんどんと縮まる。
50m、40、30、20…
「そこじゃ!!」
私は下っぱとの距離およそ10mの所で引き金を引いた。弾はドンピシャで命中。下っぱはその場に倒れた。
「もう1人…!」
私はここで初めて気づいた。
人売りのリーダーが向かってきていない。
それどころか、先ほどから一歩も動いていないのだ。
リーダーの手には杖が握られて、口はモゴモゴと何かを唱えていた。
「!!」
先ほどの「走る」という言葉ははったりか!
「気づくのがおせーんだよ!クソジジイ!」
男は杖を振り上げた。
「終わりだ!確実に相手を殺す!俺の最高峰!」
私はリボルバーを握りなおし、遠く離れた敵を狙う
「アハハハ!そんな距離で当たるわけねぇだろ!」
こんな時に手が震え始めた。だがこれを当てなければ死ぬのは私だ!
「喰らえ!Hyakubunno 100% Death!!」
詠唱が終わると同時か後か
私は最後の一発を撃ち込んだ。