1 仲良くスリッパ登校
私が今日から通う私立四邸阪田高校は、私が住んでいた(・・)マンションの最寄りのバス停から、
バスで二十分くらい走った所にあった。
そこそこの学力があれば充分入学できるけど、この学校には特別進学クラスというものもあり、
国内でも有数の秀才や、凄いお金持ちの御曹子なんかも入学してくるとか。
要するに私のような平々凡々な生徒から、超が付くようなエリートまで、
様々な種類の生徒が集う学校なのだ。
そんな四邸阪田高校の校門に、私と花巻さんは到着した。
するとそんな私達を、周りのシテ高の生徒達がジロジロ眺めながら通り過ぎていく。
それは私が女子にしてはひと際背が高い(正直な所百七十五センチくらいある)というのもあるだろうけど、
それ以上に、私と花巻さんが足に履いている物に大方の原因があった。
そんな中、私達の足元を見た女子生徒の二人組が、ヒソヒソ話をしながら通り過ぎて行った。
「ちょっと見てよ、あの二人スリッパで学校に来てるよ?」
「ホントだ、チョーウケる。ツッコミ待ちってやつ?」
そう、周りの人達が私達の事をこんなにジロジロ見て行くのは、花巻さんが用意したこのスリッパのせいだ。
家の中で履いている分には全く問題はないけど、ここは学校の校門の前だ。
そんな所でスリッパなんかを二人して履いているもんだから、やけに目立つ存在になってしまっているのだ。
こんな事なら靴下のままの方がまだよかった。
しかし一方の花巻さんはそんな事を全く気にする様子もなく、
シテ高の校舎を眺めながら嬉々とした声を上げた。
「うわ~っ、私達、今日からここの生徒なんですねぇ。ワクワクするな~」
「楽しそうね、花巻さん」
私がげんなりしながらそう言うと、花巻さんはニコニコしながらこう返す。
「やだなぁ、綾芽でいいですよぅ。私と詩琴さんの仲じゃないですかぁ」
いつの間に私と彼女はそんなに親しくなったんだ?
しかもこの子はもう私の事を下の名前で呼んでるし。
いささかイラッときた私だが、それを何とかこらえてこう続ける。
「綾芽、さん。始業式に遅れるといけないから、そろそろ行かない?」
このままここに居ても恥ずかしい思いをするだけなので、私はそう言った。
すると綾芽はニコニコしたまま
「あ、そうですね、行きましょうか」
と言ったので、私達は校舎へ向かって歩き出した。
そして少し歩いた所で、
「あ~っ、しぃちゃん(・・・・・)だ~」
という可愛らしい声が背後から聞こえた。
そしてその声の方に振り返るとそこに、私より頭一つ半ほど小柄で、
明るい茶色の髪をお団子にした、シテ高の制服を着た可愛らしい女の子が立っていた。