5 食パンをくわえて急いで登校していると、ハンサムな男の子とぶつかる説
ていうか今の私って、ちょっと少女マンガの主人公みたいじゃない?
これが本当に少女マンガだったら、
道の曲がり角でハンサムな男の子とぶつかって恋に落ちるなんてミラクルが起きるけど、
現実世界じゃありえないわよね。
とか思いながら道の曲がり角に差し掛かった、その時だった。
曲がり角の陰から突然人が現れ、私はその人に思いっきりぶつかった。
「うわぁっ⁉」
そして後ろによろめき、地面に尻もちをつく私。
その時口にくわえていた食パンが宙を舞い、そのまま私の頭にポテッと着地した。
何というミラクル。
でも、私が思っていたミラクルとはちょっと違う。
そんな中私がぶつかった人が、私に手を差しのべながらこう言った。
「すみません、大丈夫ですか?」
その声は男の人のそれで、低くて落ち着きのある優しい声だった。
もしかしてハンサムな男の人?
私が求めていたミラクルが起きたの?
私は期待に胸を躍らせながら、目の前の人の顔を見上げた。
すると、そこに、
スキンヘッドで眉毛が無く、頬に刃物の傷跡がある巨漢の大男が立っていた。
「ひっ⁉」
それを見た私は恐怖のあまりにそのまま凝り固まってしまった。
こ、怖い!
怖すぎる!
その怖さといったら、さっきの黒スーツの二人組の比じゃなかった。
と、その時、目の前の男がやにわに顔を赤くする。
な、何よ?
まさかこの男、私に一目惚れしたっていうの?
い、いやっ!
そんなミラクル嫌よぉっ!
が、その男の視線は何やら私の足元に向いていた。
ちなみに私はこの人にぶつかって尻もちをつき、スカートが思いっきりめくれ上がってしまっていた。
なのでその中に隠されていた私の、パ、パン・・・・・・。
「きゃああああっ!」
反射的にスカートを直して悲鳴を上げる私!
見られた!
よりにもよってこんなヤクザみたいに恐ろしい顔をした男に・・・・・・。
「いやぁあああっ!」
再び悲鳴を上げる私。
どうしよう!
このままじゃあ私、この男に大切な操を散らされてしまう!
そんなのいやあっ!
すると目の前の男はそのまま本能に任せてガバッと私に襲い掛かってくる──────
かと思いきや、両手をバタバタ横に振りながらこう言った。
「わわわ!す、すみません!そういうつもりじゃなかったんです!とにかくごめんなさい!」
あれ?
何か思ってたのと違うリアクション。
もしかしてこの人、そんなに悪い人じゃない?
と、思ったその時だった。
ドゴォン!