1 これからはタダ働き
「どぇえええっ⁉」
翌日の朝、園真探偵事務所の中で、私は驚きの声を上げた。
そして目の前の机を両手でバン!と叩き、椅子に腰かけた園真会長に言った。
「ど、どういう事ですか⁉私がこれからずっとこの事務所でタダ働きって⁉」
それに対して園真会長は、銀色の髪をクシで解きながらこう返す。
「あら、あなたのお父様から聞いてなかったの?」
「聞いてないですよ!」
「じゃあ改めて言うわね。
あなたは今日からうちの事務所で住み込みでタダ働きをしてもらう事になりました。
いいわね?」
「よくないですよ!どうして私がここでタダで働かなくちゃいけないんですか⁉」
「だって私、あなたのお父様に依頼料をもらってないもの」
「へ?」
「『依頼料が払えない代わりに、うちの娘を好きなようにコキ使ってくれ』
って、あなたのお父様に言われたの」
「あ、あのクソ親父・・・・・・」
「あら、でもこれはあなたにとってとても好都合な話だと思うけど?」
「何処がですか!」
「じゃあ聞くけど、あなたこれから何処に住むの?」
「うっ・・・・・・」
「食事はどうするの?」
「うぅっ・・・・・・」
「高校に通う為の学費は?」
「うぐぐ・・・・・・」
「何より依頼料はどうなるの?あなたが払ってくれるの?」
「・・・・・・」
「その依頼料をチャラにして、なおかつあなたの面倒を丸丸見てあげようって言ってるの。
これほど待遇のいいタダ働きは無いと思うけど?」
「・・・・・・」
もはや私は何一つ言い返す事ができなかった。
私の人生は、両親が夜逃げをした時点で決まっていたんだ。
そう悟った私は、ガックリうなだれて園真会長に言った。
「これから、よろしくお願いします・・・・・・」
すると会長はニッコリ笑ってこう言った。
「はいよろしく。払えなかった依頼料の分、ミッチリ働いてもらうからね♡」
「う・・・・・・」
私の選択はこれで本当に正しかったんだろうか?
むしろここを出て行った方が、もっと幸せな人生を歩めたんじゃないだろうか?
そう思うと、益々気分が重たくなった。
するとそんな私の気持ちなどつゆ知らず、綾芽が嬉々とした表情で私に後ろから抱きついてきた。
「わぁーい♪これからもずっと一緒ですねしぃちゃん♡これからも仲良くしてくださいね♡」
こうして私、習志野詩琴の、新しい人生が幕を開けたのだった。
果たして私の人生はこれからどうなってしまうのか?
少なくとも人並みの幸せは、掴めそうになかった・・・・・・。
シティーガールハンター 完




