9 キキィーッ!
という訳で私と由奈ちゃんは、二人で学校の門を出た。
結局あれから綾芽は教室に戻って来なかったけど、今はその方が好都合だ。
今日はまたひとつ由奈ちゃんと仲良しになれた気がする。
由奈ちゃんとは中学の頃からの付き合いだけど、
私は由奈ちゃんに嫌われたくないっていう思いが強すぎて、
自分の中で由奈ちゃんに対して壁を作っていたのかもしれない。
でもさっきの由奈ちゃんの叫びを聞いて、その壁はだいぶと低くなったと思う。
それにしても由奈ちゃんが私と綾芽の仲をあんな風に思っていたなんて。
そう思うと私は、歩きながら吹き出してしまった。
「プッ、ククッ・・・・・・」
「えっ?どうしたのしぃちゃん?」
目を丸くして尋ねる由奈ちゃんに、私はイタズラっぽく笑って言った。
「いやあ、由奈ちゃんが私にヤキモチを焼いていたんだって思うと、何だかおかしくって」
「なっ⁉」
それを聞いた由奈ちゃんはたちまち顔を真っ赤にし、両手をバタバタさせながら言った。
「ち、違うよっ!あれはヤキモチとかじゃなくて、
しぃちゃんが何だか遠くに行っちゃうような気がして・・・・・・
と、とにかく!あれはヤキモチなんかじゃないの!」
「うんうん、可愛いよ由奈ちゃん」
「だーかーらーっ!」
等と言い合っていた、その時だった。
キキィーッというブレーキ音とともに、灰色のワゴンが由奈ちゃんの背後に停まった。
そして後部席のスライドドアが開き、黒のスーツを着てサングラスをかけた、パンチパーマの男が現れた。
その男がいきなり右手に持った布切れで由奈ちゃんの口を押さえこむと、
その瞬間由奈ちゃんは気を失い、その場に膝から崩れ落ちた。
「由奈ちゃん!」
叫び声を上げる私。
するとパンチパーマの男は由奈ちゃんを後ろから抱え、そのままワゴンの中へ連れ込もうとした。
「ちょっと待ちなさいよ!あんたその子を何処に連れていく気⁉」
私はそう叫んで男に掴みかかろうとした。
すると男はスーツの内ポケットからある物を取り出し、それを私に向けた。
それは、拳銃だった。
その銃口が私の顔に向けられ、男はその銃の引き金に人差指をかけた。
え?私、撃たれるの?ここで、死ぬの?
そう思った、その時だった。
ベシィッ!
という衝撃音とともに拳銃を持った男の手に何かが当たり、その拍子に拳銃が地面に落ちた。
そしてその拳銃の隣には、今男の手に当たった物も落ちていた。
ちなみにそれはおかめのお面だった。
という事は、もしかして。
と、それが飛んできた方へ振り向くと、二十メートルくらい離れたそこに、綾芽の姿があった。
するとワゴンの中から
「おい!早くしろ!」
という別の男の声が聞こえ、目の前の男は素早く拳銃を拾い上げ、
由奈ちゃんを抱えてワゴンに乗り込んだ。
「あ!コラ!待ちなさいよ!」
私はそう叫んでワゴンの中に手を伸ばそうとしたが、
それより一瞬早くスライドドアが閉まり、ワゴンはそのまま猛スピードで走り去って行った。
「そん、な・・・・・・」
そう呟いてその場に跪く私。
由奈ちゃんがさらわれた。
由奈ちゃんがさらわれた。
由奈ちゃんがさらわれた!
同じフレーズが何度も私の頭の中に渦巻いた。
そしてそんな私の元に、
「詩琴さん!大丈夫ですか⁉」
と綾芽が声を上げながら駆けよって来る。
しかしそれに対して、私は何も答えられそうになかった。




