8 由奈のキモチ
おかめ仮面の協力もあり、無事に運動部の人達を巻く事が出来た私は、鞄を取りに教室に戻って来た。
教室の引き戸を開けて中に入ると、そこにはもう誰も残っていなかった。
結構長い時間逃げ回ってたもんね。
由奈ちゃんはもう帰っちゃったかな?
そう思いながら私は、自分の席に置いていた鞄を手に取った。
と、その時だった。
教室の引き戸がガラッと開き、両手でゴミ箱を抱えた由奈ちゃんが現れた。
「あ、由奈ちゃん。まだ帰ってなかったんだね」
私がそう言うと、由奈ちゃんはゴミ箱を教室の端に置きながらこう返す。
「うん、私今日、掃除当番だったから。しぃちゃんこそ何してたの?」
「私は運動部の人達から逃げ回ってた」
「相変わらず人気者だね。それで、どの部活に入るつもりなの?」
「う~ん、まだハッキリとは決まって無いけど、
できればまた由奈ちゃんと一緒に家庭科部に入れたらいいな~と思ってるんだけど」
私は頭をかきながらそう言った。すると由奈ちゃんは背を向けたままこう言った。
「私なんかより、綾芽ちゃんと同じ部活に入った方が楽しいんじゃない?」
「え?そんな事ないよぉ。あんなおバカな奴より、
由奈ちゃんと同じ部活に入った方が楽しいに決まってるもん」
私はヘラヘラ笑いながらそう言った。すると由奈ちゃんはいきなり、
「そんな事ないよっ!」
と声を荒げた。
「えっ⁉」
その声にビクッとする私。
由奈ちゃんがこんな大声出す所なんて初めて見た。
しかもよく見ると、由奈ちゃんの背中が小刻みに震えていた。
まさか、泣いてる?
そう思った私は慌てて由奈ちゃんの近くに駆け寄った。
すると由奈ちゃんはそのまま教室から出て行こうとしたので、
私は咄嗟に由奈ちゃんの腕を掴んで言った。
「由奈ちゃん!一体どうしたの⁉」
「もう私の事はほっといて!」
「ほっとけないよ!」
由奈ちゃんの言葉に私はそう言い返し、その華奢な両肩を掴んで強引にこっちに振り向かせた。
すると案の定、由奈ちゃんの目から大粒の涙があふれ、それが白い頬を伝っていた。
「由奈ちゃん、一体どうしたの?」
私は由奈ちゃんの目を見据えて静かに尋ねた。
それに対して由奈ちゃんは、目をそらしながらこう答えた。
「私、綾芽ちゃんみたいにできないから・・・・・・」
「へ?」
「私は綾芽ちゃんみたいに、しぃちゃんと遠慮なく怒鳴り合ったり叩きあったりできないの!
私は綾芽ちゃんみたいにしぃちゃんと仲良くできないの!
だからしぃちゃんは、綾芽ちゃんと仲良くすればいいじゃない!」
「由奈、ちゃん・・・・・・」
由奈ちゃんのその言葉に、私は頭が真っ白になった。
まさか由奈ちゃんが、そんな事を思っていたなんて・・・・・・。
すると由奈ちゃんはうつむきながらこう続けた。
「ごめん、なさい・・・・・・。
しぃちゃんと綾芽ちゃん、最近凄く仲がいいから・・・・・・
もう、私なんかとは、仲良くしてもらえないと、思って・・・・・・」
そう言ってむせび泣く由奈ちゃん。
私はそんな由奈ちゃんを優しく抱きしめて言った。
「そんな訳ないでしょ?私の一番の仲良しは由奈ちゃんだよ。これからもずっとね」
「ひぐっ・・・・・・ホントに?」
「うん、ホントだよ」
私がニッコリ微笑んでそう言うと、由奈ちゃんもニッコリ微笑んで言った。
「良かった・・・・・・」
「これからもずっと仲良しでいようね、由奈ちゃん」
「うん、しぃちゃん」
そう言ってまたニッコリ微笑む私と由奈ちゃん。
何だかまた更に由奈ちゃんと仲良しになれた気がして、私はえも言えない温かい気持ちに包まれていた。
そうだ、私にとっての一番の友達はやっぱり由奈ちゃんなんだ。
これからも、ずっと。
シミジミそう思っていると、由奈ちゃんがニコニコしながらこう言った。
「ね、しぃちゃん。今日うちに来ない?またお泊まりしようよ」
「えっ?」
その言葉に、私は目を丸くして考え込んだ。
由奈ちゃんの家にお泊まりかぁ。
そんな事したら園真会長に怒られそうだけど、
今日はもっと由奈ちゃんと一緒に居たい気分だし、今日一日くらい大丈夫よね?
そう考えた私は、再びニコッと笑ってこう言った。
「うん、いいよ」




