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シティーガールハンター  作者: 椎家 友妻
第一話 災厄の朝
3/40

3 初登校のお出迎え

 という訳で、私は私立四邸阪田高校の制服に着替え、洗面所の鏡の前に立った。

 ここの制服は黒を基調としたセーラー服とプリーツスカートで、首元には赤色のスカーフを締める。

その制服を身にまとった、黒髪のショートカットの私の姿が鏡に映った。

何とか鏡の前で笑ってみようとするが、顔の筋肉がひきつってうまく笑えなかった。

 「はぁ、とにかく学校へ行こう」

 私はそう呟き、玄関に向かおうとした。

が、起きてからまだ何も食べていない事を思い出し、キッチンへと向かう。

 お皿やお鍋等の用具類は残っていたが、すぐに食べられそうな食品類は姿を消していた。

 私は大きなため息をつき、あまり期待せずに冷蔵庫の扉を開けた。

すると予想通りその中にはロクな食料が入ってなくて、

そこにあったのはペットボトルに入ったミネラルウォーターと、

昨日私が半分食べた板チョコだけだった。

 「ま、何もないよりはマシだわ」

 そう自分に言い聞かせ、私は冷蔵庫に残った食べかけの板チョコを手に取ろうとした。

と、その時だった。

 ピンポーン。

 と、インターホンのチャイムが鳴った。

こんな時間に一体誰だろう?

もしかしてお父さん達が帰って来た?

いや、いくら何でもそれはない。

それにどうも嫌な予感がする。

 私は忍び足で玄関まで行き、ドアについている覗き穴から外の様子をうかがった。

するとそこに、細身で背の高い男と、小太りで背が低い男が居た。

二人とも黒のスーツにサングラスをかけていて、いかにも悪そうな雰囲気を(かも)し出している。

そしてよく見るとその背後に、大家のおばさんの姿もあった。

 あの二人組の男は誰?

と思っていると、背の高い方の男が乱暴にドアを叩きながらこう言った。

 「習志野(ならしの)(私の苗字)さーん!ワシら黒丸(くろまる)金融(きんゆう)の者です!

うちから借りた一億円、返してもらいに来ましたーっ!」

 「げっ⁉」

 思わず声を上げる私。

どうやらあの二人組は、お父さんが言っていた借金取りみたいだ。

 まさかこんなに早くここに来るなんて!

 そう思いながら(あせ)っていると、背の低い方の男が続けてこう言った。

 「居るのは分かってるんですよ!出てこないなら無理にでも入らせてもらいますよ!」

 そしてその男が大家のおばさんに声をかけると、

おばさんは(うなず)いてズボンのポケットから鍵を取り出し、それをうちのドアの鍵穴に差し込んだ。

すると次の瞬間、閉まっていたドアの鍵がガチャリと開いた。

 「ヤバッ!」

 思わず声をあげてドアノブを押さえたけど、外からの力の方が強く、ドアは強引に開け放たれた。

 「うっ・・・・・・」

 目の前に現れた借金取りの二人組。

ヤバイ、これはヤバイ!

 すると私の顔を見た背の高い方の男が、ニヤッと笑ってこう言った。

 「朝早(はよ)うからすまんのぉお嬢ちゃん。悪いけどお父さんかお母さんを出してくれんか?」

 それに対して私は、平静を装ってこう返す。

 「あ、あいにくうちの両親は、朝から出かけて居ません」

 「おいおい、それってまさか夜逃げしたって事?君一人を置いて?」

 と、背の低い男。

するとそれを聞いた大家のおばさんが、血相を変えて私に食ってかかって来た。

 「ちょっとどういう事なのそれ⁉あなたの所は先月の家賃もまだもらってないのよ⁉」

 「えぇっと、それは・・・・・・」

 たじろぐ私。

どうしよう、朝起きたら(すで)に両親が夜逃げしていたなんて言いたくない。

何しろ私自身、まだこの事実を受け入れられないんだから。

 そんな中背の高い男が、大家さんの肩に手を置いて言った。

 「まあそうカッカせんと。

用があって来たのはワシらやさかい、まずはワシらの方から話をさせてもらいまっせ」

 「そうはいかないわよ!こっちだって生活がかかってるんだから!」

 大家さんはそう言って反発したが、そんな大家さんを長身の男はキッと(にら)みつける。

その目つきはまるで、既に何人か人を(あや)めた事があるかのように鋭く、

そんな目つきで睨まれた大家さんは、

「ひっ⁉」

と声をあげてその場に尻もちをついた。

すると男はまたニヤッと笑い、私に向かってこう続けた。

 「お嬢ちゃん、ご両親が夜逃げしてしもうたっちゅうのはホンマか?」

 「本当だったら、どうだって言うんですか?」

 後ずさりしながら聞き返す私。

すると背の低い男が、さも愉快(ゆかい)そうにこう言った。

 「そういう事なら、君を借金の肩代わりに連れて行くしかないわなぁ」

 「い、嫌だと言ったら?」

 「力ずくでも連れて行くまでや」

 私の問いかけに、長身の男はゆっくりとこっちに歩み寄りながら言った。



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