6 黒丸金融
「はぁ~・・・・・・」
屋上のベンチに座り、大きなため息をつく私。
そして膝に乗せたお弁当を見つめながら、独り言のように呟く。
「由奈ちゃん、一体何の用事だったんだろう?一緒にお昼食べたかったのに・・・・・・」
すると私の隣でお弁当をモグモグ食べていた綾芽は、その手を一旦休めてこう言った。
「もしかしたら、私と詩琴さんの仲の良さにヤキモチを焼いたのかもしれませんね。
だから一緒にお昼を食べるのが辛かった」
「バーカ、そんな事ある訳ないでしょ。
由奈ちゃんは見た目はちっちゃくて可愛らしいけど、中身は私なんかよりずっと大人なんだから」
「いやいや分かりませんよ?女の嫉妬は根が深いですからねぇ」
「あんた、由奈ちゃんの事をそんな風に言うなら、もう明日からお弁当作ってあげないわよ?」
「えっ⁉す、すみません!ゆなっちさんがそんな嫉妬深い人な訳ないですよね!」
そう言って再びお弁当をパクパク食べる綾芽。
マッタク、調子がいいんだから。と思って呆れていると、綾芽は急に真剣な口調になって言った。
「でも正直、詩琴さんの周りにはあまり人が居ない方がいいんです。その方が私も守りやすいですから」
「・・・・・・」
綾芽のその言葉に、思わず息を飲む私。
まさかこの子、そこまで計算して私にベタベタしていたというの?
と思っていると、綾芽はまたデレ~ンとした表情になってこう続けた。
「それに、こうして詩琴さんと二人で過ごせる時間も増えますし♡」
「そっちが本音でしょっ」
そう言って綾芽の頭に軽くチョップする。
マッタク、一瞬だけでも緊張して損した。
シティーガールハンターか何か知らないけど、この子がそんなに凄い始末屋なはずないんだから。
そう思いながらため息をついた、その時だった。
「こんな所に居たのね」
という声とともに、園真会長が目の前に現れた。
「園真会長、どうしてここに?」
と私が尋ねると、園真会長は腕組みをしながらこう言った。
「あなたの事を狙っている借金取りの事を調べてみたら、色々とヤバイ事が分かって来たのよ」
「ヤバイ事?一体何です?」
綾芽の問いかけに、園真会長は静かな声で続けた。
「まず、習志野さんの事を狙っている借金取りは、『黒丸金融』っていう小さなサラ金業者よ。
表向きは法律で定められた利率で融資を行う貸金業者なんだけど、
その裏ではアジア系のマフィアに、借金の肩代わりとしてさらった若い娘を売り飛ばしているの」
「えっ⁉人身売買ですか⁉」
驚きの声を上げる私に、園真会長は頷いて続けた。
「そうよ。そうやってあの会社は裏で莫大な利益を上げている。
最近はすっかりその味をしめて、若い女性を無差別にさらって売り飛ばしてるって話だけどね。
最近ニュースとかでやってるでしょ?若い女性が立て続けに失踪する事件。
あれは恐らく黒丸金融の仕業よ」
「そ、そんな、それならすぐに警察に届けないと!」
「証拠がないから無理よ。奴らの手口は周到でなかなか尻尾を出さないから、
警察もおいそれと黒丸金融に手を出せないの」
「そんな・・・・・・」
会長の言葉に、そう言ってうつむく私。
私って、そんなヤバイ人達に狙われていたのか。
もし始業式の朝に、あの二人組にあのままさらわれていたら、
私は今頃何処かの外国に売り飛ばされていたんだ・・・・・・。
そう思ったら、額から嫌な感じの汗が噴き出した。
するとそんな私の背中をポンポンと叩きながら、綾芽が軽い口調で言った。
「大丈夫です!詩琴さんはこの私が命に代えてもお守りします!だから安心してください!」
安心しろって言っても、それが一番不安なんだけど・・・・・・。
と内心思っていると、その綾芽のボスである園真会長が、頭をかきながらシミジミと言った。
「それが一番不安なのよねぇ・・・・・・」
おいおい・・・・・・。




