5 大いなる誤解
「し~こ~と~さんっ♪」
その日の昼休み、綾芽が能天気な声で私の所にやって来たので、
私はとりあえずそのこめかみ(・・・・)を両拳でグリグリとやった。
「あんたって子は~っ!」
グリグリグリグリッ!
「痛たたた!詩琴さん痛いです!」
両手をバタバタさせながら痛がる綾芽。
しかし私はグリグリをやめずに声を荒げる。
「やかましい!よくもさっきは恥をかかせてくれたわね!」
「ご、誤解ですよ!私はただ、詩琴さんの為を思って・・・・・・」
「どこがよ!あんたのやってる事はもはやストーカーじゃないの!」
「だから誤解ですってばぁ!」
等と言い合っていると、それを見かねた由奈ちゃんが慌てて止めに入った。
「し、しぃちゃん落ち着いて。そんなにやったら綾芽ちゃんのこめかみがへっこんじゃうよ?」
由奈ちゃんがそう言うので、私は渋々綾芽のこめかみから手を離した。
すると綾芽はこめかみを両手で押さえながらその場にしゃがみこむ。
「う~、詩琴さんひどいですよぅ」
「自業自得よっ!」
私がそう言うと、由奈ちゃんがたしなめるように私に言った。
「も~、しぃちゃん。いくら綾芽ちゃんの事が好きだからって、そんなにイジメちゃダメだよ?」
「へ?」
その言葉に目を点にする私。
そして声を大にして叫んだ。
「どえええっ⁉な、何言ってんの由奈ちゃん!
私が綾芽の事を好き⁉そんな事ある訳ないでしょ⁉」
しかし由奈ちゃんはニッコリ笑ってこう返す。
「だってぇ、しぃちゃんは何の遠慮もなく綾芽ちゃんを怒ったり叩いたりするでしょ?
そういうのって、その子の事が本当に好きじゃないとできないもん」
「ええっ⁉ち、違うのよ!この場合はそういうのじゃなくて、
私は本当に腹が立つから綾芽に怒ってるんだよ⁉」
「んもぅ、詩琴さんたらツンデレさんなんだからぁ。
私の事が好きなら好きって素直に言えばいいのに♡」
その言葉にプチンときた私は、ちゅうちょなく綾芽の首を絞め上げた。
「ぐぇえっ!詩琴さんギブですギブ!」
「やかましい!もうこのままあの世に送ってやるわ!」
等とやりあっていると、由奈ちゃんは無言で踵を返し、そのまま教室から出て行こうとした。
「あ、あれ?由奈ちゃん何処行くの?一緒にお昼食べようよ」
私がそう言うと由奈ちゃんは立ち止まり、背中を向けたままこう言った。
「私、ちょっと用事があるから、お昼はしぃちゃんと綾芽ちゃんで食べればいいよ」
そして由奈ちゃんは私の返事も聞かずに教室を出て行った。




