4 ボディーガードというよりストーカー
「──────で、あるからして、ここはこうなる訳だね」
一時間目の数学の時間。
先生が黒板に数式を書きながら授業を進めていく。
生徒である私達はその先生の話を聞きながら、黒板に書かれた文字をノートに書き写していた。
どの学校でも見られるような、ごく普通の授業風景。
ああ、何て平穏なひと時。
あのビン底眼鏡っ子から解放されるのは、授業の間くらい。
こんな事ならもう、ずっと授業中でもいいくらいだ。
そう思いながら私は、何気なく運動場側の窓の外を見た。
するとその時、その窓の上の方で、外側から教室を覗いている人物が居る事に気が付いた。
綾芽だった。
ゴンッ。
次の瞬間、私は自分の机に顔をつっぷした。
するとそれに気づいた先生が、呆れた顔で言った。
「私の授業は、机に頭をぶつける程眠たくなるかね?」
「あ!いえ!違います!」
私は慌てて顔を上げて弁解したが、周りの生徒達からドッと笑い声が上がった。
は、恥ずかしい!
ていうか何であいつがあんな所に居るのよ⁉
ここは校舎の四階よ⁉
まさか授業中まで私のボディーガードをしようっての⁉
なので私は、窓の外の綾芽に口パクで問いかけた。
『そこで何してんのよあんた?』
すると綾芽も口パクでこう返す。
『もちろん、詩琴さんのボディーガードです!』
やっぱりか。
私は右手で目元を覆った。
これじゃあ本当にストーカーと変わらないじゃないのよ。
それにそんなところに居て他の人に見つかったりしたら大騒ぎになる。
なので私は口パクでこう続けた。
『教室に戻りなさい』
すると綾芽はグッと親指を立ててニヤッと笑った。
もちろん帰る気配はない。
駄目だ、全然分かってない。
あいつ、この先の授業でもずっと私の事を監視するつもりだ。
そう思った私は、身振り手振りも交えて綾芽に訴えた。
『だから、教室に戻りなさい!バレたらどうするの?』
それに対して綾芽。
『ご心配なく。私はそんなヘマしません』
『そういう問題じゃなくて、とにかく戻れっての!』
『お断りします!私は詩琴さんのボディーガードですから!』
「ああもう!分かんない奴ね!」
頭にきた私は、思わず口に出してそう言ってしまった。
そして『しまった!』と思った時には既に手遅れで、この教室に居る全ての人の視線が私に集中した。
ど、ど、ど、どうしよう・・・・・・。
パニックになる私。
何か気の利いた嘘でもつければいいんだろうけど、今の私にそんな余裕はなかった。
と、そんな中、教壇に立つ先生が再び口を開いた。
「居眠りの次は独り言か?習志野」
「ち、違!これは!あの・・・・・・」
私は両手をバタバタ動かしながら、窓の外に目をやった。
が、さっきまでそこに居た綾芽はもう居なかった。
そして再び教室に湧きおこる笑い声。
もう、カンベンしてよ・・・・・・。




