1 事務所でお目覚め
チュンチュン、チュンチュン。
「ん・・・・・・」
朝の雀の鳴き声で、私は目を覚ました。
重いまぶたを開けて天井を見上げると、それがいつもと違う光景である事に気づく。
あ、そうか、私は昨日から園真探偵事務所に寝泊まりしてるんだった。
園真探偵事務所は三階建ての古いビルで、二階が事務所、
三階が居住スペースになっている(ちなみに一階が何の部屋なのかはまだ知らない)。
そのうちの一室に泊まらせてもらってるんだけど、
部屋は前に住んでいたマンションよりも広くて綺麗で、住み心地もなかなかいい。
これならいっその事、ずっとここに住みたいくらいだ。
そう思いながら布団の中でウトウトしていた、その時だった。
ムニュッ。
何者かが私の胸を、背後から両手で鷲掴みにした。
そしてそれをモゾモゾと動かしながら、うっとりした声を上げる。
「あ~、しぃちゃんのおっぱい、や~らか~い♡」
ちなみにその人物は綾芽だった。
なので私はその脳天にどぎついゲンコツをお見舞いし、腹の底からこう叫んだ。
「何やっとんじゃお前はぁあああっ!」
「もうすっかり打ち解けたみたいね」
食卓で優雅にコーヒーを飲みながら、園真会長は言った。
それに対して頭に大きなたんこぶを作った綾芽は、照れくさそうに言う。
「えへー、そうなんですよぅ。私と詩琴さんは、もうすっかり仲良しさんなんです」
それを聞いた私は、食卓を両手で叩いて声を荒げる。
「どこがよ!勝手に人のベッドに忍び込んで変な事して!あんたの部屋は別にあるでしょうが!」
しかし綾芽は何ら悪びれる様子もなくこう返す。
「だって、私は詩琴さんのボディーガードなんですから、常に一緒に居ないといけないんですよ?」
「だからってあんな事をしていいって理由にはなんないでしょうがっ!」
そう言って綾芽の口を左右にムニョーンと引っ張る私。
すると園真会長がニンジンのスティックをポリポリ食べながら言った。
「ま、ボディーガードが常に依頼人の近くに居るのは仕事上必要な事だから、
多少の事は大目に見てあげて」
そして声をひそめてこう続けた。
「それに私も、綾芽の相手をしなくて助かるし」
それが本音か。マッタクこの人は。
と思いながら園真会長をジトっと睨んでいると、会長は
「ごちそうさま」
と言ってスッと立ち上がり、私を指差してこう言った。
「それじゃあ私は先に学校に行くから、あなたは綾芽と一緒に登校しなさい。
さっきも言ったけど、ボディーガードと依頼人は常に一緒に行動するのが基本。
だから学校でもできる限り綾芽と一緒に居るのよ?」
「ええっ⁉学校でも一緒に居なきゃいけないんですか⁉」
「そうよ。この前も言ったじゃないの。学校だからって安全だとは限らないの。
用心には用心を重ねないと」
私の訴えに園真会長はあっさりそう言い放つと、踵を返して部屋を出て行った。
すると綾芽はすこぶるご機嫌な口調でこう言った。
「ウフフ♪私達、これからずっと一緒ですね♪」
何だか益々、不安になってきたなぁ。




