7 シテ高ボンバーシスターズ
そして放課後、私は綾芽に言われた通り、再び体育館裏へやって来た。
由奈ちゃんも一緒に来るって言ったけど、何やら嫌な予感がするのでやんわり断った。
なのでここには一人で来たんだけど、綾芽はまだ来ていなかった。
「マッタク、人を呼び出しといて何やってんのよあいつは」
そう独りごちてため息をつく私。
それにしてもあいつ、私をここに呼び出して何をするつもりなんだろう?
何でもボディーガードとしての実力を見せてくれるとか言ってたけど。
すると、その時だった。
「あんたが習志野詩琴かい?」
背後から私の名前を呼ぶ声がした。
なので声がした方に振り向くとそこに、三人組の女子生徒が立っていた。
三人はシテ高の制服を着ていたが、そのスカートの丈はやたらに長く、足首くらいまであった。
そして三人とも異様に目つきが怖くて、それぞれ木刀や金属バット等の凶器を持ち、
まるで昭和を彩ったスケバンのような雰囲気を醸し出している。
というかあの人達は、本当にそういう人達なんだろう。
まさかこの時代にもこういう人達が居るなんて。
とか思いながらその三人を眺めていると、まん中に立つリーダーっぽい金髪のロングヘアーの人が、
私に思いっきりガンを飛ばしながら言った。
「シカトこいてんじゃいないよ。あんたが習志野詩琴かって聞いてんだよ」
「え?あ、は、はい、そうです」
慌てて頷く私。
この人達の格好に気を取られて返事するのを忘れていた。
ていうかこの人達って明らかに私に敵意を持ってるわよね?
何で?私この人達に何かした?
と思っていると、右側に立つオレンジの髪のポニーテールの人が、ドスの利いた口調でこう続ける。
「てめぇ、ずいぶんのナメたマネしてくれたじゃねぇか」
「へ?ナメたマネって、私皆さんに何かしましたっけ?」
私が目を丸くしながらそう言うと、
左側に立つちょっと(いやかなり)ぽっちゃり体形でおかっぱ頭の人が声を荒げた。
「とぼけるんじゃないわよ!あんなフザけた手紙をよこしてくれちゃって!」
「え?て、手紙?何の事ですか?」
この人達は何を言ってるの?
私はこの人達に手紙を出した覚えがないし、そもそも会う事自体今日が初めてだ。
もしかして、イチャモンをつけて私からカツアゲしようっての?
だとしたらかなりピンチじゃない?
そう思って焦っていると、金髪ロングヘアーの人がスカートのポケットから一通の封筒を取り出してこう言った。
「これがあたい(・・・)の靴箱に入ってたんだよ」
そしてそれをオレンジ髪のポニーテールの人に渡すと、
ポニーテールの人はその封筒に入った便せんを取り出し、そこに書かれた文章を読み上げた。
「『果たし状。やいてめぇら、何か三人集まってシテ高最強のスケバンを気取ってるらしいけど、
シテ高最強のスケバンはこの私、習志野詩琴様だ。
その辺を身を以て教えてやるから、放課後体育館裏へ来やがれこの馬鹿ども。
シテ高最強のスケバン、習志野詩琴より』」
「えええぇっ⁉」
私はお腹の底から驚きの声を上げた。
どういう事よこれ⁉
私そんな手紙書いた覚えないわよ⁉
一体誰がこんな事を⁉って、まさか・・・・・・。
と思っていると、ぽっちゃりおかっぱの人が私をビシッと指差して言った。
「あんたの望み通り、シテ高最強のスケバンが誰なのか、ここでハッキリさせてやるよ」
「いや!あの!違うんです!これには色々事情がありましてですね!
その手紙を書いたのは私じゃないんですよ!」
私は必死に弁解したが、それをすんなり信じてもらえる様子はない。
金髪の人は更に怒った様子でこう続けた。
「この期に及んでまだそんな事を言うのかい?
益々気に入らないね。こうなったら徹底的に叩きのめしてやるよ」
「でえぇっ⁉」
な、何だかとんでもない事になってしまった!
このままだと私、あの怖いお姉さん達にとっても痛い目にあわされる!
そんなの嫌だ!
そんな中金髪の人は一歩前に出て言った。
「でもその前に、あたいらの名前も教えといてやるよ。
まずあたいは哀原紀和美。通称『黄金バット』だよ!よく覚えときな!」
確かにあの人は金髪で金属バットを持ってるけど、通り名がそんなんでいいの?
すると今度はオレンジ髪のポニーテールの人が一歩前に出て言った。
「そしてオレの名は東倉奏。通り名は『だいだい色の木刀娘』だ。夜露死苦」
確かにオレンジ髪で木刀を持ってるけど、その通り名はどうなのよ?
するとおかっぱ頭でぽっちゃり体形の人が一歩踏み出して言った。
「私は木野彩子。通り名は『どすこいちびま○子ちゃん』よ!頭に叩き込んどきな!」
ていうかそれはもう通り名じゃなくてただの悪口だから!
そして三人は各々ポーズを決め、声を揃えてこう叫んだ。
「「「三人合わせて、シテ高ボンバーシスターズ!」」」
そう叫んでポーズを決めた彼女達の表情は、達成感と誇りに満ち溢れていた。
一方の私はどうしていいのか分からず、目を点にして放心状態になった。
すると黄金バットの哀原さんは、ポーズを決めたままニヤリと笑ってこう言った。
「どうやら恐怖のあまりに声も出ないようだね」
いや、呆れて声が出ないんです。
それに続いてだいだい色の木刀娘の東倉さんがこう続ける。
「それともオレ達の決めポーズに思わず見とれちまったか?」
見とれてないです。
呆けてるんです。
そしてどすこいちびま○子ちゃんの木野さんが言った。
「サインが欲しいなら、決闘が終わってから書いてあげるからね」
いりませんから。
百円あげるって言われてもいりませんから。
そんな中シテ高ボンバーシスターズの皆さんはポーズをやめ、そのリーダーっぽい哀原さんがこう続けた。
「それじゃああたい達の決めポーズもバッチリ決まった事だし、そろそろ決闘を始めようか」
「いやいや無理ですって!私なんかが皆さんに勝てるはずがないですもん!」
私は必死にそう訴えたが、東倉さんは持っていた木刀を地面に投げ捨てて言った。
「心配すんな。丸腰の人間相手に武器を使ったりしねぇよ。正々堂々と三対一でタイマン勝負だ」
「三対一で何がタイマンですか⁉全然正々堂々じゃないじゃないですか!」
私がそう叫ぶと、ちびま○子ちゃんの木野さんも叫び声を上げた。
「そんな事ないわよ!フレッシュプ○キュアだっていつも三人で戦ってたでしょ!
途中から四人になったけど!」
「あなた達はプ○キュアじゃないでしょうが!」
何かこの人達、ただのコントグループに見えてきた。
でもこの人達は本気で決闘する気だ。
ヤバイ、このままじゃあヤバイ!
ていうかあいつは何処に行ったのよ⁉
これを仕組んだのはあいつじゃないの⁉
そんな中シテ高ボンバーシスターズの三人は拳を構え、黄金バットの哀原さんが言った。
「それじゃあいくよ!覚悟しな!」
そして彼女達は一斉に私に殴りかかって来た!
もうだめだ!逃げられない!
と、思ったその時だった!




