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シティーガールハンター  作者: 椎家 友妻
第一話 災厄の朝
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2 トウサンガトウサン

 どうか、夜逃げの報告とかじゃありませんように・・・・・・。

 心の底からそう願いながら、私は手紙の一行目に目をやった。

するとそこに、お父さんの字でこう書かれていた。

 『父さんと母さんは、今日付けで夜逃げします』

 「夜逃げの報告だった・・・・・・」

 私は思わずそう呟き、その場にガクッと(ひざまず)く。

私の心の底からの願いは、手紙の一行目であっけなく打ち砕かれてしまったのだ。

しかし手紙はその後も続いていたので、私は両手を震わせながらその手紙を読み進めた。

 『詩琴、父さんと母さんが夜逃げをしたからって、そんなにガックリしないで欲しい』

 そんな事言ったって・・・・・・。

 『父さん達だってこんな事になってガックリしてるんだ。ガックリしすぎてポックリいきそうだ』

 何言ってんの?

 『ここで、どうして父さん達がこのたび夜逃げをする事になったのかを発表致します』

 丁寧な言い回しが(かえ)ってイラつく。

 『実はつい先日、父さんが勤めていた会社が倒産してしまったんだ』

 えっ⁉倒産しちゃったの⁉

 『(とう)さんが倒産(とうさん)だ』

 つまんないシャレはいいから。

 『(微笑(びしょう))』

 微笑(ほほえ)まないわよ!

クスッともならないくらいつまらないわよ!

 『ちなみに、この会社の社長は後藤さんという人でな』

 だから何なのよ?

 『後藤(ごとう)さんの会社が御倒産(ごとうさん)。そんな会社に勤めていた()(とう)さん』

 御父さんとか言わないでしょ⁉

 無理矢理ダジャレにしようとするな!

 『(大爆笑)』

 しないわよ!

一体何がしたいのよこの人は⁉

 『という訳で、父さんは大変な事になってとても落ち込んでいる』

 嘘つけ!

絶対落ち込んでないでしょ!!

 『ちなみに、もうひとつ大変な事があるんだ』

 何よ⁉

 『実は父さんは、このたび一億円もの借金も抱えてしまう事になったんだ』

 ええっ⁉

一億円⁉

どうしてそんな多額の借金を⁉

 『父さんが保証人をしていた友人が、一億円の借金を残してとんずらをぶっこいてしまったんだよ』

 そ、そんな・・・・・・。

 『当然うちにそんな多額の借金を払うお金なんかない。

おまけに今回の倒産。

という訳で、これはもう夜逃げするしかないという結論になった訳だ』

 だ、だからって、私一人を置いて行くなんてひどいじゃない・・・・・・。

 『この手紙を読んでいる詩琴はとてもショックを受けているかもしれないが、

お前を一人残して出て行ったのには、深い訳があるんだ』

 どんな訳よ?

 『今や父さん達は一億円の借金を背負った身。

これから怖い借金取りに追い回される毎日になる。

そんな日々に、大切なお前を巻き込みたくなかったんだ』

 お父さん・・・・・・。

 『あ、ちなみに今日、そっちにその怖い借金取りが行くと思うから』

 「え・・・・・・」

 『借金の肩代わりにさらわれたりしないようにな』

 はぁああっ⁉

ちょっと!

何勝手な事言ってんのよ⁉

ていうか借金の肩代わりをさせるために、私をここに置いて行ったの⁉

 『詩琴、ドンマイ♪』

 ドンマイじゃないわよ!そんな事で済む問題じゃないでしょ!

 『だが安心するんだ詩琴。手はちゃんと打ってある』

 どんな手よ⁉

 『(その)()探偵事務所という所に、

「シティーガールハンター」

という凄腕の始末屋(スイーパー)が居るらしいんだが、その人にお前のボディーガードを依頼しておいた。

何でもその筋じゃあナンバーワンの腕前らしいから、必ずお前の身を守ってくれるはずだ。

事務所への地図は、もう一枚の紙に書いてある』

 そ、そんな事いきなり言われても・・・・・・。

 『最後に、この言葉をお前に送ろう』

 何よ?

 『入学、おめでとう』

 「ふざけんじゃないわよ!」

 私はその手紙をグシャグシャに丸め、ゴミ箱に放り投げた。

 「まったく、とんだ入学祝いだわっ!」

 そう言って私は目の前の椅子に腰かけ、キッチンのテーブルに顔を突っ伏した。

 どうしよう、大変な事になっちゃった。

この状況を全く受け入れる事ができない。

 両親が多額の借金を抱えて夜逃げ?

そして私はその借金の肩代わりに借金取りにさらわれる?

だからシティーガールハンターっていう人にボディーガードをお願いした?

 あまりに現実離れしたこの状況に、私の頭は真っ白になってしまった。

 私はこれからどうなってしまうんだろう?

私はこれからどう生きて行けばいいんだろう?

 その言葉が私の頭の中をひたすらグルグル回っていた。

そして暫くそれを繰り返した私は、ひとつの結論にたどり着いた。


 とりあえず、学校に行こう。


 そうだ、こんなところで悩んでいても仕方がない。

私は今日から女子高生なんだ。

この状況はひとまずおいといて、とりあえず制服に着替えよう。



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