5 園真会長とシティーガールハンター
キーンコーンカーンコーン。
午前の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響き、私は足早に教室を出た。
そして向かう先はシティーガールハンターこと、花巻綾芽が在籍しているという一年A組の教室。
昨日園真会長は私にハッキリと言った。
シティーガールハンターは花巻綾芽だと。
綾芽といえば、始業式の日に私の前に現れた、ちょっと、いや、かなり変わった人物。
彼女が私のボディーガードだなんて、本当に大丈夫なんだろうか?
そう思っているうちに、私は一年A組の教室にたどり着いた。
そして教室の中を覗き込むと、一番後ろの窓側の席で、綾芽が机に顔を突っ伏して眠っていた。
その綾芽に向かって、私は声をかけた。
「おーい、綾芽ーっ」
すると綾芽は一瞬ビクッとした後、ゆっくりと上半身を起こしてこちらを向いた。
かなり熟睡していたのか、ホッペのところにビッシリと制服の袖の跡がつき、
口の端からデローンとよだれが垂れている。
その姿に顔をひきつらせて呆れていると、私に気づいた綾芽はパァッと目を輝かせ、
ガタンと席を立って一目散にこっちに駆け寄って来た。
「しぃちゃん!・・・・・・じゃなくて、詩琴さん!また私に会いに来てくれたんですね!」
そう言ってガバッと私に抱きつこうとする綾芽。
そんな綾芽の顔と肩を両手で押さえて私はこう返す。
「ちょっとあんたに用があってね」
「分かってます!私とヨリ(・・)を戻したいんですよね!」
「別れたカップルか!そうじゃないわよ!」
「じゃあ、一体何なんです?」
「それは──────」
と、私が言いかけたその時だった。
廊下に居た生徒達がにわかにどよめいた。
一体何だろうと思ってそっちに振り向くと、微笑を浮かべた園真会長が、
優雅な足取りでこちらに向かって歩いて来ていた。
その姿は美しさと気品に満ち溢れ、周りの生徒達をすっかり魅了していた。
が、そんな会長の素顔を知ってしまっている私は、その表面上の美しさに魅了されるはずもなく、
綾芽に至っては露骨に顔をしかめている。
そんな中園真会長は私達の目の前までやって来てこう言った。
「二人とも、ちょっといいかしら?」
それに対して綾芽は、間髪いれずにこう答える。
「いえ、よくないです。無理です。だからあっちに行ってください」
するとその瞬間園真会長のこめかみに青筋が入ったが、何とか平静を保ちながらこう続けた。
「そんなイジワルな事言わないで。あなたに大切な話があるのよ」
「私はないです。サヨウナラ」
綾芽がにべもなくそう答えると、園真会長は表情はそのままに、
周りの生徒に聞こえないくらいの小さな声で言った。
「言う事を聞きなさい。さもなくば習志野さんがどうなっても知らないわよ」
「えぇっ⁉」
その言葉に驚きの声を上げる私。
ていうかこの人は私の事を守る立場なんじゃないの⁉
その人が私を人質にとるってどういう事よ⁉
と内心パニックになっていると、綾芽は苦虫を噛み潰したような顔でこう答えた。
「話って、何ですか?」
すると園真会長は、
「ここじゃあ人目もあるし、もっと静かな場所へ行きましょう」
と言って、悪魔のような笑みを浮かべた。
それを見た私は、この人にはあまり逆らわない方がいいと本能的に悟ったのだった。




