3 シティーガールハンターの正体
そしてテーブルを挟んだ正面のソファーに、園真会長も腰掛ける。
そんな中会長は、長くて細い足を組みながら私に言った。
「さて、何から話せばいいかしら?」
それに対して私は、園真会長の目をまっすぐに見据えて問いかけた。
「私の両親は、何処へ行ったんですか?」
これはどうしても知りたい事だったけど、園真会長は肩をすくめてこう答える。
「残念ながら知らないわ。私はあなたのボディーガードを依頼されただけだから」
「そう、ですか・・・・・・」
そう言ってうつむく私。
すると園真会長は至って軽い口調で続けた。
「でもまあ、今は御両親の心配よりも自分の心配をした方が良いと思うわよ?
その為にあなたはここに来たんでしょう?」
「まあ、そうです、よね。それで、私はこれからどうすればいいんですか?」
「このビルに住んでもらうわ」
「え?ここに?」
「そうよ。どうせ住む所も無くなっちゃったんでしょう?
それにこのビルは見た目はボロだけど、
その辺の高級マンションよりもはるかに高度なセキュリティーシステムを完備しているのよ?」
「そ、そうなんですか。じゃあ私はほとぼりがさめるまで、このビルに隠れていればいいんですか?」
「いいえ、明日からも普通に学校に通ってもらって構わないわ」
「え?いいんですか?」
「もちろんよ。学校まではリムジンで送るし、学校ではボディーガードをつけるから」
「と、いう事は、園真会長が私の近くについていてくれるんですか?」
「私じゃないわ。他にボディーガード担当の人間が居るの」
「へぇ、園真会長がシティーガールハンターっていう訳じゃないんですね」
「シティーガールハンター?ああ、そういえば最近はそういう風にも呼ばれているみたいね。
ていうかあの(・・)子が自分で勝手にそう言っているのかしら?
とにかく私は違うわよ。強いていうなら、シティーガールハンターの調教師ってところね」
「ち、調教師?何か凄いですね」
「あの(・・)子はある意味野獣だからね。私ですら手に余るくらいよ」
「そ、そんな人にボディーガードを任せて大丈夫なんですか?」
「ま、大丈夫なんじゃないの?」
「何だか益々(ますます)不安になりますね・・・・・・で、そのシティーガールハンターの人は今何処に?」
「ああ、そういえば昨日の朝から帰って来ないわね」
「他の仕事をしてるんですか?」
「いいえ、恐らく家出したんだわ」
「ええっ⁉それどういう事ですか⁉
私のボディーガードをしてくれる人が何で家出しちゃったんですか⁉」
「これには深い事情があってね」
「い、一体何があったんですか?」
「目玉焼き・・・・・・」
「は?目玉焼き?」
「目玉焼きに何をかけるかで口論になって、あの子はここを飛び出して行ってそれっきり」
「浅っ!家出の事情浅っ!」
「浅いですって⁉あなた目玉焼きを何だと心得ているの⁉」
「ええっ⁉わ、私にとって目玉焼きは、朝食の定番メニューくらいでしかないんですけど・・・・・・」
「私はね、目玉焼きにはいつも塩をかけるのよ」
「あ、私はコショウです」
「死ねばいいのに」
「どええっ⁉目玉焼きにコショウをかけるだけで何でそこまで⁉」
「私は塩派なの!塩じゃないと駄目なんだから!」
「わ、分かりましたから!塩でいいからとにかく落ち着いてください!」
「それなのにあの子は昨日の朝、
『たまには違うやつをかけたらどうですかぁ?』
とか言って、勝手に私の目玉焼きに醤油をかけたのよ!」
「醤油派の人も沢山居ますしね。それで、どうしたんですか?」
「その子の額に正拳突きをお見舞いしたわ」
「ちょっとちょっと⁉醤油をかけたくらいで何て事をするんですか⁉」
「マッタク、あの子はホントに大人げないのよね」
「大人げないのはあなたですから!」
「うるさいわね、とにかくあの子は今ここに居ないのよ。はいはい、私が悪いわよ」
「何を開き直ってるんですか・・・・・・。
ていうか園真会長って、学校に居る時とは全然イメージが違うんですね」
「あんなもの、化けの皮を被ってるに決まってるじゃないの」
「自分で化けの皮とか言っちゃってるし・・・・・・」
「とにかく!あなたは今日からここに住むの!いいわね⁉」
「そ、それは構わないですけど、学校に行ったらどうすればいいんですか?
ボディーガードの人は家出しちゃってるんでしょう?」
「学校に居るわよ、多分」
「へ?シティーガールハンターの人って、もしかしてシテ高の生徒なんですか?」
「そうよ」
「何ていう人ですか?」
私がそう尋ねると、園真会長は思い出すのも腹立たしいという感じで頭をかきながらこう言った。
「花巻綾芽よ」




