7 会長、現る
目的地の生徒会室は、校舎の一階にあった。
さっき居た場所は四階なので、私は別の階段を使って一階まで駆け降りた。
あの人達は私が生徒会室へ向かっていた事は知らないはずだから、
そこで待ち伏せされるという事はないだろう。
そして私は校舎の一階までたどり着き、廊下への角を曲がう。
するとそのすぐ目の前に園真会長が現れた!
「うわぁっ⁉」
驚きの声を上げる私。
これはもうよけられない!
と思ったが、園真会長は流れるような体さばきでフワッと私の体をかわし、
チョンと片足を出して私の足を引っかけた!
「うわわっ⁉」
足を引っ掛けられて前のめりになる私!
そして咄嗟に床に両手をつき、クルッと前転してそのまま立ち上がった。
そしてすぐさま後ろに振り向くと、腕組みをしながら壁にもたれる園真会長の姿があった。
長くのびた銀色の髪。
美しく整ったプロポーション。
そして誰もが見とれてしまうような魅力的な顔立ち。
昨日遠くから見た時もその凄さは充分伝わって来たけど、
こうして近くで対峙すると、改めてこの人の美しさに魅了される思いがした。
でも何だろう、この人から感じるえも言えない威圧感は?
これは物凄い美人を前に緊張しているというより、殺し屋に命を狙われているような、
そんな恐怖感に近い感覚だった。
それにこの人、さっきわざと私の足を引っかけたわよね?
一体どういうつもりなの?
と警戒していると、彼女、園真会長は、まぶしいくらいの笑みを浮かべてこう言った。
「廊下を走ってはいけないわよ?誰かにぶつかったりしたら危ないでしょう?」
その笑顔は他の生徒ならたちまち虜になってしまうほど魅力的なものだったけど、
すっかり園真会長に警戒心を抱いた私は、抑揚のない口調でこう返した。
「なら、廊下を走る生徒の足を引っ掛けるのは、危なくないんですか?」
「もちろん危ない事よ。今のは、あなたの身体能力をちょっと見てみたかったの」
「私の?ていうか、園真会長は私の事を知っているんですか?」
眉をひそめて尋ねる私。
すると園真会長はニヤリと妖しい笑みを浮かべてこう言った。
「もちろんよ。だってあなたは、私の大切なお客様だもの」
お客様。という事はやっぱり・・・・・・。
「あなたは、園真探偵事務所の人なんですね?」
私の問いかけに、園真会長はコクリと頷いて続けた。
「そうよ。私はあなたのお父様に、あなたのボディーガードを依頼されたの。
だから今日から私があなたを守ってあげる」
「・・・・・・」
園真会長の言葉に、私は目を細めて口をつぐんだ。
私の予想した通り、この人は園真探偵事務所の人間だった。
という事は、彼女がお父さんの手紙に書いてあったシティーガールハンターなんだろうか?
確かにこの人から感じるオーラーは普通の人とは全然違うけど、
おっかない借金取りから私を守るなんて、本当にできるの?
そう思っていると、それを察した様子の園真会長が、薄く笑って言った。
「信じられないって顔をしてるわね。でも安心して。
私は受けた仕事は必ずやりとげるのがモットーだから」
そして園真会長はクルッと踵を返してこう続けた。
「さ、ついて来て。うちの事務所に案内してあげるわ。
あなたのお友達の家よりははるかに安全よ」
園真会長はそう言うと、私の返事も聞かずにスタスタと歩き始めた。
一方の私はそんな会長の後ろ姿を眺めながら、頭をフル回転させていた。
どうしよう?
私はこのままあの人について行ってもいいんだろうか?
でもこのままじゃあ何も問題が解決しないのも確か。
なので私は両拳をギュッと握り、あの人の後をついていくべく、ゆっくりと歩きだしたのだった。




