5 思い出した園真
「えええええっ⁉しぃちゃん、住む所が無くなっちゃったのぉっ⁉」
私から今朝の出来事を一通り聞いた由奈ちゃんは、そう言って大きく目を見開いた。
ちなみにここは由奈ちゃんの家の由奈ちゃんの部屋。
そのベッドに腰掛ける私は、苦笑しながらこう返す。
「うん、まあ、要するにそういう事なの」
すると私の隣に腰掛ける由奈ちゃんは、悲しそうな顔でこう続ける。
「そんな、しぃちゃん一人に借金を押しつけて夜逃げするなんてひどいよぉ。
これじゃあしぃちゃんがかわいそう過ぎる・・・・・・」
そう言って涙ぐむ由奈ちゃん。
私はそんな由奈ちゃんの肩にそっと手を置いて言った。
「泣かないで由奈ちゃん。私は大丈夫だから」
しかし由奈ちゃんは大粒の涙をこぼして本格的に泣き出してしまった。
「由奈ちゃん・・・・・・」
泣きじゃくる由奈ちゃんを見ていると、何だか私の方が申し訳ない気持ちになった。
なので由奈ちゃんの両肩を掴み、さっきよりも強い口調で改めて言った。
「由奈ちゃん、私は大丈夫。だからもう泣かないで?ね?」
すると由奈ちゃんは鼻をスンスンさせながら言った。
「でもしぃちゃんは、これからずっと一人ぼっちなんでしょ?」
「まあそうだけど、私には由奈ちゃんも居るし、淋しくなんかないよ」
「でも、住む家もなくなっちゃったし・・・・・・」
「う、それは、まあ、何処かのお笑い芸人の中学生時代みたいに、公園とかで寝泊まりするから」
「食べ物は?」
「それは、えぇと・・・・・・」
ズズイッと迫りくる由奈ちゃんに、私はたじろぎながら言葉を詰まらせる。
そしてちょうどその時、私のお腹から情けない音が鳴り響いた。
ぐぅ~・・・・・・。
そういえば私、朝に食パンを半分かじってから何も食べてなかった。
でも今はそんな空腹感よりも、お腹の虫を由奈ちゃんに聞かれた事の方が恥ずかしい!
なので私は両手をバタバタさせながら取り繕った。
「ち、違うのこれは!確かにお腹は空いてるんだけど、とにかく私は大丈夫だから!」
すると由奈ちゃんはプッと吹き出し、無邪気な笑い声を上げて言った。
「しぃちゃん、これからここに住むといいよ」
「へっ?」
由奈ちゃんの予想外な言葉に、マヌケな声を上げて目を丸くする私。
「え?住むって、私が由奈ちゃんの家に?いいの?」
私の問いかけに、由奈ちゃんは快く頷いてこう返す。
「もちろんだよ。だって私の大切な友達が困ってるんだもん。
それに私のお父さんとお母さんも、事情を話せばきっと分かってくれるよ」
「うぅっ、由奈ちゃん・・・・・・」
由奈ちゃんの言葉に、今度は私の目から大粒の涙がこぼれてきた。
するとそんな私の頭をなでながら、由奈ちゃんはこう続けた。
「よしよし、もう泣かないでしぃちゃん。これからは、ずっと私がそばについてるからね」
「ずっと?」
「うん、ずっと一緒だよ♪」
私の問いかけに、由奈ちゃんは天使のような笑みを浮かべて答える。
と、いう事は、学校への行き帰りはもちろん、家でお風呂に入る時や、夜寝る時も一緒って事?
それって、それって──────。
ぐへへ・・・・・・。
はっ⁉いや!これは別に変な妄想とかをした訳じゃないのよ⁉
そうじゃなくて、私は純粋に、仲良しの由奈ちゃんとずっと一緒に居られる事が嬉しいだけなんだからね⁉
私はそっちの趣味は全然ないんだから!
と、誰にでもなく心の中で言い訳していると、珍しく由奈ちゃんが怒った口調で言った。
「それにしてもひどいよね、しぃちゃんのご両親。
会社が倒産して多額の借金を抱えたからって、しぃちゃん一人を置いて夜逃げするなんて!」
「ハハハ、まあ、ね・・・・・・」
確かにそうだ。
私一人を置いて逃げるにしても、せめて一言くらい相談して欲しかった。
それがあんなふざけた置手紙だけなんて、私って所詮その程度の存在だったの?
そういえばあの手紙、夜逃げの事以外にも何か書いてあったわよね?
確か、私はこれから借金取りに追い回される事になるから、
シティーガールハンターという始末屋にボディーガードを依頼した。
そしてその人は、園真探偵事務所という所に居る。
んん?園真って何処かで聞いた事がある名前よね?
何処だったっけ?
園真、園真。
う~ん・・・・・・あ。
「ああああっ!」
それを思い出した私は、思わず叫び声を上げて立ち上がった。
「わっ⁉ど、どうしたのしぃちゃん⁉」
びっくりした顔で声を上げる由奈ちゃん。
それに対して私は、語気を強くして言った。
「思い出したの!」
「え?思い出したって、何を?」
「あの名前を何処で見たのか!」




