五話
こんにちは。 会話ばっかりの文になるとこれでいいのかと不安になりますね。
西に向かっていると高い山が見えてきた。 なかなか高い山であり、そこから人の魔力を感じた。
俺はドラゴンに命令し、山の山頂付近に近づいてもらう。 どうやらあちらも気づいたようで、攻撃的な魔力を感じた。
俺は魔剣を手に取り構えると、飛んできた火や雷を魔力を乗せた斬撃で切り裂く。
距離が近くなると攻撃は苛烈になり、誰かが近づいてくるのを感じた。
「お前は何者だ?」
「俺か? 俺はライド。 今は国を作ろうと思って旅をしている」
「国を? ふむ…。 多種族はどれくらい生きている?」
「魔人族は1000、獣人族は1400、人狼族は2800、鬼人族は400ぐらいだな」
「そうか。 思ったよりも生きているようで何よりだ。 だが、国を作るならばまずは大地をなんとかせねばなるまい。 魔力溜りはそこらで生まれ、魔獣はひしめき合っている。 それをどうするつもりだ?」
「それには心当たりがある。 俺は暗黒龍に匹敵するほどの力を持っているかもしれないやつを知っている。 そいつに頼めばなんとかしてくれるかもしれない」
思い出すのはあいつの力。 もしあいつが本気で暴れれば国なんて一瞬で無くなるんじゃいか。 そんな考えが浮かぶ。
あいつは何かとおかしなことをしていた。 その中にはこの問題を解決出来そうなのも確かにあった。 ならば少し癪だが、力を借りることにしよう。
「暗黒龍に匹敵か。 それならば出来るやもしれんな。 わかった。 もし準備が出来れば呼びに来い。 もし我が居なければラザールの名を出せ。 今みたいに襲いかかることはないだろう。 何か他にあるか?」
「妖精族の場所を知らないか?」
「妖精族か。 奴らは南の大地におる。 奴らは特殊な魔力ゆえ魔獣には襲われぬ。 それゆえに奴らが注意を向けているのはその他の種族と魔物だ。 特に他種族に対しては攻撃的ゆえ見つかれば殺しにかかられよう。 そうなれば争いは避けられまい。 ゆえに女王を探せ。 奴らは女王に従う。 女王の協力が得られれば本格的に国を造り始められるであろう」
「わかった。 この情報はありがたく使わせてもらおう」
「そうか、達者でな」
老いた竜人はそう言うと去っていった。
ここまで早く話が進んだのも一重にあの老人の知恵ゆえだろう。 あの落ち着いた感じは話していてとても助かった。 妖精族もそうであればいいのだが…。
―――――
南の大地を目指している途中に何度も魔獣や魔物に遭遇したが危機を感じることはなかった。 持てる魔力量は増え、魔力回復の速度も上がった。 それに使える魔法も増えたからだ。 とはいえあの魔法使いのようにポンポンと放てるわけではなく、注意を怠って良いわけでもないが。
森に近づくと何か結界のようなものが設置されてるのがわかった。 森全体を囲っており、そのまま入れば何があるかわからない。
魔剣を手に持ち、魔力を込めて振るう。 すると目の前の空間が開いた。
そこを通り抜けると、森の結界の内側にいた。 魔剣の能力であり、反則と言ってもいい力技だ。 しかしこれ以外に方法も思いつかず、どちらにしろ侵入するつもりだったからいいかと開き直る。
マントで姿を隠し、人の居場所を探る。 すると大きな魔力を感じ、そこに行ってみることにした。
着くと、そこにはドレスを着た女性がいた。 女性は辺りをキョロキョロと見ると、こちらをじっと見ると、手に魔力を集めだした。
バレるとは思っておらず、少し焦る。 急いでローブを脱ぐと手を上げ、弁明することにした。
「すまない。 攻撃するのは少し待ってはくれないか? 俺はライド。 国を作るために妖精族に話があって来たんだ」
「ライド、普通にありそうな名前ね。 それで、話をするのにそのヤバそうな剣て必要なのかしら? 私はそうは思わないわねぇ?」
女性は明らかに警戒してるようで、その美貌も合わさって氷のような印象を受ける。 耳は長く、髪は金髪でスラリとした体型をしている。 どこかアナベラを彷彿とさせる姿をしており、ドキリとする。
「この森には結界が張ってあったからこの剣を使って抜けて来た。 この剣には空間を切断する力があるんだ。 決して争いに来た訳では無い」
女性は興味深そうな視線を魔剣に向ける。 どうやら気になるようだ。
「空間を切断ねぇ。 そんな剣聞いたこともないわ。 一体誰がそんな剣を作ったのかしら? あなた知ってる?」
「ああ。 それを作ったのは一人の魔法使いだ。 それは簡単に作れるものなのか?」
「簡単に? 無理ね。 そもそもこれを作るのに必要な魔力がバカにならないし、それを行う魔力操作も必要になる。 何より、干渉力がおかしいわよ。 魔力を火に変えるだとか力に変えるのは簡単。 だけど、これは空間に干渉してそのまま斬るっていう事象を無理やりこの剣に収めているようなもん。 こんなの人の作れるような物じゃないわ。 あなた、その魔法使いとはどういう関係?」
思ったよりも凄いもののようで驚く。 どうやらまだあの魔法使いの底を知ることは出来ないらしい。
「そいつはシンという名前で俺の師匠のようなものだ。 そいつから魔法を学んだ」
「魔法を学んだのにこの剣のこと知らなかったの? それに結界もくぐり抜けられないって一体何を教えてもらってきたの?」
「…身体強化と魔力の変換、それと魔力の増やし方と攻撃する魔法と洗脳の魔法だな」
「攻撃と洗脳は別として、他のは自分で身につけられるのばかりじゃない。 魔法陣と詠唱を学んでいないの?」
「…魔法陣と詠唱? なんだそれは」
「はぁ、それも教えてもらってないの? あなたもしかして弟子として見られてないんじゃない?」
「そんなこと言われても初耳だ。 それに魔法使いも使っていなかった」
女性は額に手を当てると疲れたようにため息を吐いた。 俺もそうしたい気分でいっぱいだった。
「いい? 詠唱も魔法陣も慣れれば使わなくなるかもだけど、とても大切なの。 それがなければ魔力消費が多くなるし、複雑な魔法も使えない。 高位の魔法使いは魔法の練習はせず魔法陣を作っているものなのよ?」
そんなことは聞いたこともないし、教わったこともない。 しかし、一つハッキリとしたことがある。 それは、あの魔法使いが嘘つきだということだ。
「そうか…、俺は騙されていたのか…」
「そうみたいね。 まぁ、これから学べばいいのよ。 まずはこのことを知れたのだから大きな一歩だわ」
「ああ、そうだな…」
進んだ一歩は大きいが道のりが果てしなく遠く感じた。
「まあ、元気だしなさい。 それとまずは国の話に戻りましょ。 そうねぇ、他の種族はもうみんな集まってるの?」
「ああ、あとは妖精族だけだ」
「へぇ、そうなの。 なら領土はどう分けるの? 私、この森は欲しいわ」
「領土を分けるのか? 種族ごとに?」
「当たり前じゃない。 混ぜてもいいことないわ。 まぁでも移動を自由にしとくぐらいはいいと思うけどね」
「なるほど。 わかった。 ではお前たちの女王はどこにいるか分かるか?」
女性は目をぱちくりすると、ケラケラと笑った。 その笑いに含まれるものを感じ、少しムッとする。
「あははっ、女王は私。 今まで気づいていなかったの?」
「ああ、まさかこうも無防備だとは思わなかったからな」
少し皮肉を込めてそう言う。 あれだけ大規模な結界を張っていたのだ。 その守りの要がこうも無防備だとは思わなかった。
「そうかしら? 私、あなたと戦っても負ける気はしないわよ? 例えその剣を使っていても…ね」
女性は挑発的に笑っている。 どこか余裕そうな感じを受けるが、目は真面目で本当のことを言っているようだった。
「そうか。 ならばやってみるか? 俺もお前に負ける気はしない」
「本当ー? なら本気でかかってくるといいわ」
「そうさせてもらう」
そう言うと魔剣を手にし、その場で振り下ろす。 空間を切ることは出来たのだが女性は切れていなかった。 その代わりに横の地面が切れている。
「これは…」
そう口に出して考えようとするが、気づけば下半身が凍りついていた。 急いで熱を出し溶かすと上から巨大な氷塊が降ってきていた。 魔剣を振り真っ二つに切り裂くが、すぐにそれはくっつき、落ちてきた。
「ぐぅっ!」
なんとか身体能力を上げて受け止めると、それを魔法にやって塵に変える。 魔力消費は大きいが速くて強い魔法だ。
「へぇ、やるじゃない。 なら、次はどうかしら?」
彼女はそう言うと地面を足で軽く叩いた。 すると地面に魔法陣が浮かび、強い風と雷が発生した。 そして次の瞬間腕に鋭い痛みが走った。 見てみると腕が裂け、血が流れていた。 何かが高速で飛来したようだ。
痛みに意識が逸れそうになるが、雷が近づいてきているのを見て反射的に障壁をはり、ガードする。 しかしすぐに嫌な予感がし、女性を見るとそこには空に向かって手を上げ、いくつもの魔法陣を出しているのが見えた。 それにはさすがに焦り、頬が引き攣る。
急いでそれを止めようと魔力をレーザーのようにして飛ばすが、それを軽く障壁で弾かれる。
さすがにこのままではまずいと思い、魔剣に入っている魔力も全力で使い薙ぎ払うとすると、次の瞬間強い衝撃を受けて気を失った。
――――――
気づけば空が目に入り、今まで眠っていたことが分かった。 辺りを見ると、そこには魔剣を楽しそうに振っている女性がいた。 女性はこちらに気づくと、少し怒ったような表情になった。
「おはよう。 何か言うことはあるかしら?」
言うこと。 突然そんなことを言われてもイマイチピンと来なかった。
分からず首を振ると、女性は目じりを吊り上げた。
「わからない? あなた私が止めなければこの森ごと切っていたのよ? ここには私以外にもたくさんの人が暮らしているんだから、次やったら殺すわよ?」
「それはすまない。 だが、範囲は絞っているつもりだったが…」
そう言うと女性はため息を吐いた。
「バカねぇ。 この剣に入ってる魔力は普通のとは全然違うの。 とても圧縮されていてこの魔力自体がとても破壊的な力を持ってるから、ちょっと使うだけでもどうなるか分かったもんじゃないわ」
「そこまでか…」
女性に真剣な様子で説明され、自分がまずいことをしでかそうとしていたのがわかった。 やはりあいつはろくでもない、と思いながら。
「それと、この剣作ったの魔法使いって言ってたけど、それは本当に人だった? これ、私が昔見た暗黒龍よりもヤバい魔力よ。 断言出来るわ」
「本当か!?」
それは驚愕せずにはいられない情報だった。 ヤバいヤバいとは思っていたが、それを自分以外の人から聞くのは初めてで、とても実感が湧いた。
「えぇ。 だって、これ本気で振れば星だって切れちゃうわ。 ほんとにどうしてこんなもの作ったのかしら? あまりに危険過ぎるし、一体何に使うつもりなのかしら?」
そんなにヤバい剣なのか。 いや、ヤバさは昔から分かっている。 昔は持つだけで出血したし、何か邪悪なオーラが溢れている。 持つだけで不幸になりそうなものだ。 しかし、それが作られた理由を知っているだけにどこか悲しく感じた。
「それを作ったやつ、ああいやシンは俺の村に突然来ると、食べ物とかを与えてくれるようになった。 それからたまに武器とか作るようになったんだがそれを誰も使わなくてな。 それが嫌だったようで振れば誰でも勝てる剣としてそれを作ったんだ。 あとは村を自分が守らなくてもいいようにだそうだ」
女性はかなり微妙そうな表情でそれを聞いていた。 やはりどこか信じられないのか懐疑的な視線を向けてくる。 俺が相手の立場ならば
似たような反応になるだろうと感じるため、俺はどこか親近感が湧いた。
「ふ、ふーん。 そうなの。 良かったじゃない。 その剣が手に入って。 じゃ、本題に入りましょうか。 まず、住める場所だけど、まずは魔獣と魔物を殲滅しないといけないわね。 それから大地に充満している魔力だけど、それは私が育てている木でなんとかなるわ。 結界を解除すればそのまま世界に満ちすぎている魔力も時期に治まる」
どうやら既に準備を進めていたようで、国づくりは目前まで見えていた。 俺がやらなくてもなんとかなったんじゃ、と思う。
「凄いな。 これなら俺は何もやる必要はなかったかもな」
そう言うと目の前の女性はニヤリと笑った。 どこからかいを含んだ笑いだった。
「そんなことないわよ。 国を作るんだから王様もいないといけないわ。 私はもう十分頑張ったからあなたがこれから頑張るといいわ」
「それぞれの種族が集まるだけじゃダメなのか?」
「はぁ。 そのことも教えないとダメね…。 あなたはしばらくここでお勉強の時間ね。 魔獣の討伐はそれぞれの種族が軍を作ればどうにかなるかしら? まぁ、追追考えて行きましょうか。 まずはそれぞれのトップで作戦会議かしら?」
その後、彼女と少し相談するとガウル達と合流し、話し合いをした。 それからは国づくりに取り掛かり、五年ほどの時間をかけて安定した国が完成した。
ありがとうございました。 読んでいて長く感じるのであれば短くしますので、そのときは感想にお願いします。